「助け合える地域づくり」で自然災害から命を守る

多様化、多発化する自然災害に対して、個人が万全の備えをすることは難しく、互いに協力し合える社会づくりが求められています。

「みんなの力を、防災の力に。」助け合い、支え合いの心で、多発化・激甚化する自然災害に備えよう

日本列島では、さまざまな種類の自然災害が発生しています。繰り返し発生している地震津波災害、列島に点在する活火山の噴火被害、大型の台風や低気圧による豪雨・洪水・土砂災害強風・竜巻・高潮被害、地域によっては豪雪による雪害も深刻な問題になっています。そして自然災害はその自然環境・地理的条件によって被害の様相が大きく異なることが知られています。自然災害に対応するには、一人ひとりが自然災害を「自分ごと化」し、個々人が自分の身を守る「自助」で備えることが必要ですが、それだけでは十分とはいえません。近所の方々と問題を共有し、日頃からみんなでこの問題について考え、対処することが大事なのです。これが住民同士が協力し、被害を防ぎ、減少させる「共助」と呼ばれるものです。


平成25年以降に発生した主な災害
出典:平成26年版防災白書


津波警報・注意報の発表回数(平成24年4月~平成25年3月)(気象庁)
出典:平成26年版防災白書


気象等警報の発表回数(平成24年4月~平成25年3月)
出典:平成26年版防災白書

災害発生直後に公的支援が届くまでは地域住民の力が頼りに

災害発生時には地域自治体や消防、自衛隊などからの「公助」と呼ばれる公的支援が行われますが、「すぐに」「すべての地域へ」は届かないかもしれません。特に広域災害と呼ばれる大規模な災害が発生したときは、救助の体制を整えることから始まり、全体の被害状況の確認をした上で、まずはそれ以上の被害を食い止めるための活動が行われ、最も被害の大きい場所に人員が集中します。つまり、すべての被災地域に支援が届くまでには一定の時間が必要となります。人命救助においては、人が水や食料を補給せずに生命を維持できる限界の時間といわれ、災害医療分野で生死を分けるタイムリミットとされる「72時間の壁」が存在し、閉じ込めなどが発生した場合には、直後に救助ができないと生存確率がゼロに近づいてしまいます。災害の発生直後には、すぐに現場に向かうことのできる、地域の住民が最も頼りになる力なのです。


阪神・淡路大震災における救助の主体と救出者数
出典:「大規模地震災害による人的被害の予測」
自然科学第16巻第1号


阪神・淡路大震災における生き埋めや閉じ込められた際の救助主体等
出典:(社)日本火災学会(平成8年)「1995年兵庫県南部地震に
おける火災に関する調査報告書」

なぜ地域住民による「共助」が最大の被害軽減(減災)の要因となるのか

自然災害はその地域における自然環境や地理的条件によって全く違うものになります。そして、その地域に古くから住んでいる住民は、住民でしかわからない過去に起こった災害における地理的な被害情報や時間的な被害の変化など、過去の被害が発生したときの知識などを持っています。また、どの家にどんな人が住んでいて、どこで救助を待っているかなどは、地域住民しか知り得ない救助のための重要な情報です。災害発生時に、まずその人を思い浮かべることができ、安否を確認するためにすぐに現場に駆けつけられるのは近所に住む住民以外にはいません。さらに、その地元ならではの問題を住民同士が共有することで、被害の状況を正確につかむことが可能になります。地域住民が協力して災害被害に取り組むこと=「共助」によって自然災害に相対することが地域の減災には大変重要です。

災害時「要配慮者」を助けることが地域の被害軽減の第一歩

自然災害において、残念なことに被害を真っ先に受けてしまうのは高齢者、障がい者、乳幼児、妊婦など、自ら単独で避難をすることが困難な「要配慮者」「避難行動要支援者」になります。避難行動の遅れはもちろん、人によっては災害情報を入手することも困難なため、第三者による避難誘導、移動手段の確保などが必要な場合もあります。これらの人は地域ぐるみで守っていかなければなりません。また一昨年改正された災害対策基本法によって、すべての市町村において「避難行動要支援者名簿」の作成が義務づけられるようになりました。その名簿に基づいて、地域の民生委員や自主防災組織の人々、消防団などとともに地域住民が協力し、事前に避難方法などを決めておきましょう。まずは弱い立場の人たちを優先的に守ること。それは「共助」においてはとても大切なことなのです。

近年の災害における高齢犠牲者の割合
出典:災害時要援護者支援指針(平成25年版)
-兵庫県災害時要援護者支援対策検討委員会-

東日本大震災における高齢犠牲者の割合
出典:災害時要援護者支援指針(平成25年版)
-兵庫県災害時要援護者支援対策検討委員会-

地域コミュニティに参加することがあなたも家族も守ることに

広域の災害が発生すると、道路は通行止め、交通インフラは麻痺し、あなたもお子さんや家族の待つ自宅に帰れなくなるかもしれません。そんな時に自宅周辺に家族が頼りにできる人はいるでしょうか。また避難所に地域住民が集まったときに、あなたの姿が見えなければ、すぐに安否確認を行ってくれる人は何人いるでしょうか。自分や家族が困難な状況におちいったときに、頼りになるのは遠くの親類よりも近所の知人・友人です。日頃からコミュニケーションをとって、住民同士で協力して地域を、人命を守ることが、あなたと、あなたの家族の被災リスクを軽減させてくれます。そこで必要となるのが、地域のコミュニティへの積極的な参加です。地域で行われる避難訓練や防災のイベントあるいは楽しい地区のつどいに参加することは、いざというときのシミュレーションであるとともに地域住民同士のコミュニケーションとして大変重要です。まずはあなたが第三者を助けられる人になりましょう。また、あなたがどんなに強い大人でも、自宅の屋根が崩れてきたら、あなたが助けられる側になります。近所の方とのコミュニケーションがあなたを助けます


震災前の自治会・町内会等の地縁活動と支援者比率・受援者比率
出典:日本NPO学会(2014)「震災からの生活復興と民間支援に関する意識調査概要」


一般的な地域活動(地縁活動)と防災活動との関係
出典:内閣府(2014)「地域コミュニティにおける共助による防災活動
に関する意識調査」より作成

日本で生きるすべての人々に必要な「共助」の心構え

日本は自然災害の多発国です。特に南海トラフ沿いの地震などの大規模な広域災害が起こった場合、膨大な数の人々が被害を受けることが懸念されており、誰もが被災者となるリスクを抱えています。これまで紹介したように、地域コミュニティでの「共助」がもしもの時に大きな力を発揮することはもちろんですが、それだけではまだ十分とはいえません。
政府、自治体、企業、学校、地域、地区、広くは日本というコミュニティ(共同体)に含まれるすべての人々の「共に助け合う」という心構えが、災害にたちむかう上ではとても大切なことになるのです。

監修 河田 惠昭氏 中央防災会議防災対策実行会議委員 関西大学社会安全研究センター長・教授 工学博士(京都大学名誉教授) 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長
京都大学防災研究所教授、巨大災害研究センター長、防災研究所長を経て現職。日本自然災害学会会長および日本災害情報学会会長を歴任。
2007年国連SASAKAWA防災賞(本邦初受賞)、2009年防災功労者内閣総理大臣表彰など受賞。

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