Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年5月号 > 2010年日本APEC(仮訳)
アジア太平洋経済協力閣僚会議(APEC)は貿易と投資の自由化、円滑化によって域内経済成長を追求している。日本は議長国として、11月の首脳会議を含めた関連会合を主催する。鳩山由紀夫首相は、「APEC参加エコノミーが一致団結して行動し、変革をもたらすことができれば、時代の新たな要請に応え、地域全体の中長期的な成長戦略を策定し地域経済統合の推進を図るとともに、人間の安全保障の強化に向けた取組を具体化していくことができると確信しています」と表明している。Japan Echoが、APEC事務局のヌール事務局長に話を聞いた。
──APECのこれまでの経緯と、アジア太平洋地域において様々な国際的枠組みがある中で、APECの枠組みがどのような点で重要かをお聞かせ下さい。
ヌール:APECは、多くの点でユニークなフォーラムです。太平洋の両岸の21の加盟エコノミーから構成され、先進エコノミーと途上エコノミーの両方が参加しています。加盟メンバー全体で世界人口の40%、世界貿易の43%、世界のGDPの55%を占めています。
1989年のAPECの発足当初には、グローバリゼーションや自由貿易という考えは、いくらかの疑問を持って見られていました。今日、アジア太平洋地域は、貿易と投資が経済成長の最も重要な動輪であることを実証しています。APECは、その経験を通じて、貿易と協力が、機会を拡大し、安全を高め、究極的に繁栄につながるということを示してきたのです。
20年以上の協力を経て、APECメンバーは、強い結びつきを築き、地域協力の成功の歴史を共有してきました。APECメンバーは地域の繁栄という共通の目標を追及しているがゆえに、そうでなければ障害になりかねない、文化、政治、開発レベルの違いを越えることができたのです。法的拘束力を持たないというAPECの性質は、率直な意見交換や、学習の強調、経験の伝え合いといったことにつながりました。
──今年1月に、ヌール氏は初代の常任APEC事務局長に就任されました。APEC事務局長としての抱負をお聞かせ下さい。
WTOマレーシア政府代表部の在ジュネーブ大使をしていた頃、貿易と経済成長は相関関係にあることを強く実感しました。日本は、2010年APECのテーマに、「チェンジ・アンド・アクション」を選びましたが、私自身も新しいアイデアや戦略を作っていきたいと思っています。同時に、アイデアを行動に移すことも重要であるというのが私の信念です。
事務局長に指名されて以来、私は、3年間の戦略計画を立て、APEC事務局が加盟メンバーの目標に歩調を合わせながら、内部的な能力向上を促進し、しっかりとした成果を出せるような体制に変えていこうとしています。
APECは毎年200以上の能力向上プロジェクトを実施していますが、今年、これらのプロジェクトの、質と成果、評価プロセスを改善するための改革を行います。また、APEC内には、40ほどの専門グループがあり、様々な案件の調査・研究を行っていますが、グループ間でもっと調整・協調できるように、改善していきます。
最後に、我々は、広報やアウトリーチを強化し、地域じゅうの人びとに、APECの役割をより理解してもらえるように努めます。これは、APECとそのイニシアティブへの支持を維持し、高めるための鍵となります。
──2010年に日本で開催されるAPECの主要な議題はどのようなものでしょうか。
今年、APECは2つの重要なアジェンダを議論します。すなわち、ボゴール目標の達成評価と、地域の更なる成長と繁栄を促進するための、APECの新しいビジョンの策定です。APECが作成することになる新しいビジョンは、地域経済統合、新成長戦略、人間の安全保障、経済・技術協力から構成されます。
──ボゴール目標達成の評価はどのような形で行われるのでしょうか。
APECと日本にとって、ボゴール目標達成の評価を、単なる表面的な分析ではなく、信頼性、客観性のあるものにすることは、極めて重要です。この理由から、目標達成の評価は幅広いパースペクティブから行われ、そのパースペクティブには、各エコノミー自身からのインプット、高級実務者間の議論のほか、APECの独立研究組織であるポリシーリサーチユニット、APEC ビジネス諮問委員会、アジア開発銀行、米州開発銀行、OECD、世界銀行、UNCTAD、WTOといった機関による研究も含まれます。これらの全てのインプットが考慮された上で議論が行われ、11月の首脳会議に、目標達成に関する最終報告が提出されます。
評価プロセスは複雑で、まだ完成していません。しかし、予備的な測定では、今後に向けて有望なものになっています。
我々は、目標達成に向けてよくやっており、目標に向けた進展が、現実の社会的利益につながっているということを知っています。1989年にAPECが設立されて以来、平均関税は17%から6%に減少しました。1人当たりGDPは3倍となり、失業率は着実に減少しています。APEC地域の貧困は、かなりの程度、削減されています。
2010年は先進エコノミーの目標達成年であるにもかかわらず、7つの途上エコノミーが、彼らの目標達成年よりも10年も前の今年、目標達成の検証を自発的に受けることは、励みになる事実です。これは、7つのエコノミーが、目標達成に向けた進捗に自信を持っていることを示しており、APEC全体にも自信を与えています。
──新成長戦略についての議論の見通しをお聞かせください。
2009年、APEC首脳は、エコノミー内、エコノミー間においてより均衡が取れ、社会にあまねく広がり、持続可能な成長をもたらし、知識を基盤とした経済を通じて成長が可能になるような、包括的かつ長期的な成長戦略を整えることを約束しました。
均衡が取れた成長とは、世界的な(経常収支の)不均衡を是正し、APEC加盟エコノミーの潜在力を高めるためのものです。そして、あまねく広がる成長とは、グローバル化の利益がより平等に享受されるためのものであり、持続可能な成長とは、エネルギー効率化や環境への責任を意味します。また、知識基盤型の成長とは、革新的な環境の創造や、技術の開発・活用を意味します。
これらのアジェンダは、2010年以降もAPECのアジェンダの一部であり続けるでしょうし、国内的、地域的な努力を必要とします。さらに、上記の(成長の要素の)コンセプトのうちのいくつかは比較的新しいため、各エコノミーが経験を通じて学習し、アイデアを交換し、優良事例に適応することによって、こうした概念が発展していくことが予想されます。
──議長国の日本には、上記のような議論において、どのような役割を果たすことを期待されるでしょうか。
ボゴール目標達成の評価をリードし、新しい成長戦略を構築して、APECの新しいビジョンを定義するという、非常に重要な数々の仕事が日本の務めとなっています。
日本は、我々の議論において、真のイニシアティブを示しており、昨年に首脳たちによって与えられた方向性に肉付けし、形を作り、メンバー間の真剣な議論へと導くためのアジェンダをデザインしています。
さらに、日本は、その特徴である洗練さとAPECメンバーをホストする際の誠実さによって、APEC代表団が快適かつ整った環境の中で、人びとの暮らしをよくするための事柄の議論に集中するのを保障しています。何にもまして、日本の人びとの親切さとホスピタリティは、インスピレーションの源になっています。
高級実務者会合(SOM)共同議長である中村滋・外務省特命全権大使と西山英彦・経済産業省通商政策局審議官のメッセージが寄せられた。
世界の政治・経済の構造が大きく変化する今日、APECがこれまでの実績を土台としつつ、21世紀にふさわしい形で今後も重要な役割を果たし続けるため、必要な「チェンジ」を起こし、しっかりした「アクション」に移そうということが「2010年日本APEC」の基本的な考え方です。具体的には、ボゴール目標に照らして貿易投資の自由化・円滑化の進捗を適切に評価し、アジア太平洋地域の発展を更なる高みに導く活動方針を「地域経済統合」、「新たな成長戦略」、「人間の安全保障」の3本柱及びそれを支える経済・技術協力活動で描いていきます。
APEC開催により、アジア太平洋地域の更なる発展に向けた道筋及びその活動方針策定に貢献し、中長期的に安定した繁栄を果たしていくことは、議長としての日本の重要な役割です。
APEC活に対する貢献
日本は、豪州とともにAPECの創設に大きく関わったほか、1995年には議長としてボゴール目標達成の道筋を示した「大阪アクション・アジェンダ」策定に主導的役割を果たしました。95年以降も、毎年TILF(貿易・投資自由化基金)に対する資金の拠出を通じてAPECの経済・技術協力活動に大きく貢献するなど、一貫してAPECの活動に力を注ぎ、同地域における貿易の自由化・円滑化の更なる推進など、地域協力の中心的な役割を果たしてきました。
そうした中で積み上げてきた知見と経験に加え、G8、G20の主要メンバーとして世界経済の運営の重要な役割を果たしてきた知見や経験をAPECのさらなる発展につなげることも可能です。日本はアジア太平洋地域と相互に依存しつつ「課題解決型経済」のモデルとして、地域の活力ある発展促進を目指し、APECプロセスに貢献します。
参加エコノミーへのメッセージ
2010年は、先進エコノミーによるボゴール宣言に示された先進諸国の目標達成年であるとともに、ボゴール目標達成後のAPEC地域経済統合の進むべき道を考える大きな節目の年です。世界で大きな構造転換が進みアジア太平洋地域の更なる一体化と経済危機後の安定成長に向けたビジョンが求められており、2010年はこれらの課題に取り組む上で、まさに時宜を得ています。
さて、横浜での首脳・閣僚会議を始め、北は北海道から南は沖縄まで、日本各地で各種大臣会合・関連会合が開かれます。これにあわせて、日本がアジアとの文化的交流で培ってきた伝統文化や料理、最先端の技術や世界に広がるクールな現代ポップカルチャーまでを御紹介する場を積極的に設ける計画です。各エコノミーの代表団には、各種会合での真剣な議論を期待するのは勿論ですが、日本での滞在を大いに堪能して頂きたいと考えています。
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