Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年5月号 > 環境にも身体にも優しいアクアマテリアル(仮訳)
相田卓三東京大学教授率いる研究チームは消防から軟骨まで様々な分野での応用が期待される新しいハイドロゲルを開発した。ジャパンジャーナルの澤地治が報告する。
その透明なモノは、非常に不思議な感触だった。表面はつるつるとして、ひんやりと冷たい。粘土のように、押すと簡単に変形するが、直ぐに元の形に戻る。ゴムのように、引っ張ると伸びるが、力を抜くとまた元の大きさに戻る。
「それ、98%が水で出来ているだなんて、信じられないでしょう」と相田卓三東京大学教授が笑顔で言う。「水分が多いのでアクアマテリアルと名付けました」
今年1月、相田教授らの研究チームが開発の成功を発表したアクアマテリアルは、ハイドロゲルという素材の一種である。ハイドロゲルは水を主成分としており、コンタクトレンズなどの素材として使われてきた。しかし、アクアマテリアルは、これまでのハイドロゲルにはない高い機能とユニークな性質を備えている。
まず、その強さだ。人の力で引っ張ったぐらいでは簡単にはちぎれない。さらに、切断しても1分以内に切断面を互いに接触させ、押しつければ、また元通りになるのだ。
もう一つの特長は、非常に簡単に作れることだ。必要なものは、天然由来の粘土、紙おむつの吸湿剤の原料でもあるポリアクリル酸ソーダ(ASAP)、そして、分子同士をくっつける役割をするバインダー(両末端デンドロン化高分子)と呼ばれる物質だ。水にこれらを一定の割合で混ぜ、数秒攪拌し、成型したい形にあわせた容器の中で固める。これで完成だ。加熱する必要も全くない。
「粘土は天然由来ですし、有機物はASAPとバインダーを合わせて0.2%ほどしか含まれていません」と相田教授は言う。「成分はほとんど水ですから、人体や環境には無害です。廃棄する際には有害物質が出ません」
いろいろな人のひらめきが形に
様々な分野での活用が期待されるハイドロゲルの研究は、今までも各国で行われてきた。しかし、混ぜるだけでできるものは、いずれも強度がなかったり、人体や環境に負荷をかける有機物が多かったりなどの問題があった。
当初、相田教授の研究チームが作ったハイドロゲルも強度が弱かった。改善のアイデアを出してくれたのは、中心となって実験を行った中国人の博士研究員だった。彼が、ASAPが有効ではと提案したのだ。実際、ASAPを使用すると、強度は一気に上がり、商品化に際して有利となる透明性という付加価値まで手に入れることができた。
「他にも多くの研究仲間が知恵を出したり、手を貸してくれたりしました。研究というのは、一人ではできません」と相田教授は言う。「いろいろな人のひらめきが、非常に良い形で融合してアクアマテリアルは出来上がったのです」
実用化に向けて
アクアマテリアルは、今後様々な分野での応用が期待されている。例えば、不燃性を利用した消火剤としての活用。料理中に誤って鍋の油に引火した時、アクアマテリアルのシートを上から被せれば、安全に火を消すことが出来るだろう。さらに医療分野では、骨や軟骨の代わりや、臓器の傷を塞ぐ素材に使うことも考えられている。
直ぐに固まるので取り扱いに注意が必要だが、材料さえあれば、特別な道具や技術を必要とせずに、誰でもどこでもすぐに作れるという利点は大きい。
現在相田教授のもとには、国内外の数多くの研究機関や、化学メーカー、玩具メーカー、化粧品メーカーなど様々な企業から実用化に関する問い合わせが殺到している。
「アクアマテリアルは、環境を重視する現代の新たな素材。今後私たちの生活に関わる様々な分野で活用されていくでしょう」
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