Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年6月号 > 日本が目指すライフ・イノベーション(仮訳)
政府は昨年12月に閣議決定した「新成長戦略」において、「ライフ・イノベーション」の推進を打ち出した。日本が目指す「ライフ・イノベーション」について、ジャパンジャーナルの澤地治が報告する。
昨年決定した新成長戦略の柱となっているのが「ライフ・イノベーション」である。政府は、ライフ・イノベーションを医療・介護分野における革新とし、2020年までの目標として新規市場45兆円、新規雇用約280万人を掲げた。
「持続的な成長を目指すためには、日本全体で知的産業を後押ししていかなければなりません。アジアや世界を視野に入れ、医薬品や介護ロボットなどのライフ・サイエンス分野の研究開発を促進することが重要だと思います」と日本の科学・技術政策の「司令塔」である総合科学技術会議の本庶議員は言う。
科学・技術重要施策アクション・プラン
新成長戦略の決定を受け、総合科学技術会議は6月、政府全体の科学・技術政策の行動計画「科学・技術重要施策アクション・プラン」を発表した。
「ライフイノベーション」に関して、このアクション・プランのなかで、来年度から先行的に進める重点課題は3点ある。
第1に、「予防医学の推進による罹患率の低下」。アルツハイマー病、脳卒中、心筋梗塞など患者に障がいが残ったり、介護の必要性が生じる病気について、その原因や発症機構を解明して、その予防に役立てることを目指す。予防医学が進めば、高齢化にともない、増加が予想されている医療費の抑制にもつながる。これに関して、具体的に計画されているのが、「ゲノムコホート研究」である。
「ゲノムコホート研究は国民の健康状態を長期に追跡調査して、病気が生活習慣、生活環境、遺伝とどのような因果関係にあるかを明らかにすることです。これが明らかになれば、個々の人に対して、予防のための医学的指導を行うことができます」と本庶佑議員は言う。「10万人に登録して頂き、20年にわたって、調査を行う計画です。この研究では、20年でおよそ1000億円(年間50億円)の費用がかかると見込まれていますが、将来的には年間5000億円以上の医療費の削減が可能と考えられます」
また、このゲノムコホート研究と併せて、各病院の持つ医療情報を電子化し、ITネットワークで結ぶことで、医療情報の効率的な集約を行うことも計画として挙げられている。これは、100万人規模の治療データを集めることで、治療の効果、薬の副作用といった医療情報を、治療法や創薬の研究に役立てることが目的だ。
2つめの課題は「革新的診断・治療法の開発による治癒率の向上」である。具体的には、膵臓がん、肝臓がん、肺がんなど現状では治癒が困難ながんの治癒率向上を目指す。その方策として、早期診断を可能にするバイオマーカーの開発、がんの増殖阻害や転移を防ぐ新薬開発、低侵襲な治療法の開発を推進する。
3つめの課題は「高齢者・障がい者の科学技術による自立支援」だ。高齢者・障がい者が楽に、安全に使える介護機器、介護者をサポートする介護機器の開発を目指す。
「日常生活をサポートするロボットの実用化が進めば、介護される側の自立が促進され、介護者の負担軽減につながります。介護者の負担が重すぎて、自身が体調を崩してしまうという問題も、解決できます」と本庶氏は言う。「既に実用化されているロボットもありますが、価格の高さ、使いにくさといった課題があります。政府が大学・研究所と企業との共同研究を財政的に後押しし、5年後には誰もが使うことができるロボットの実用化につなげることが目標です」
若手科学者の育成
また、既に始まっているものとして「最先端・次世代研究開発支援プログラム」がある。これは、「グリーン・イノベーション」と「ライフ・イノベーション」に関する研究を行う女性と若手研究者を支援するプログラムである。約300人の研究者に4年間で合計500億円が配分される予定だ。現在、研究課題が審査されている。「このプログラムでは、短期間での実用化に必ずしもこだわりません」と本庶議員は言う。「若手研究者によるこのプログラムの研究成果は、10〜20年後につながるでしょう」
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