Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年8月号 > 3D映像で胎児・がん治療(仮訳)
最近、映画やTVなどの3D映像が大きな話題になっているが、治療の現場でも3D映像を活用するための研究が進んでいる。土肥健純東京大学教授は国立生育医療センター、アロカ社等との共同研究により、超音波検査機で撮影した体内の様子をリアルタイムで3D映像化する技術の開発に成功した。土肥健純教授に河崎美穂が聞く。
鮮明な3D映像といえば、昨年話題になった映画「アバター」のように専用のメガネが必要と思われがちだが、土肥教授が開発した映像を見るためには必要ない。
「専用のメガネを使った3D映像は、眼の錯覚を利用して平面のものを立体的に見せているだけなので、現状をストレスなく正確に把握しなければならない手術には不向きです。そこで裸眼で見られる立体的な映像技術の実用化に取り組みました」と土肥教授は言う。
100年前の発想を現実のものに
土肥教授が応用したのは、フランスのリップマンという人が1908年に発見したインテグラルフォトグラフィの原理である。カメラのフィルムの前に複眼レンズ(複数の凸レンズで構成)を配置し被写体をフィルムに撮影すると、複数の被写体の像がフィルムに写し出される。そのフィルムに後ろから光を当て、再度複眼レンズを通して映し出すと、被写体が観察者の目の前で立体的に浮き上がってみえる。
「リップマンは、当時の写真技術をもとにこの原理を発見しましたが、実現には至らず埋もれていたのです。それが、100年後の現在、コンピューターのプログラミング技術の進歩により実現しました。また、超音波の発信位置が近い場合、それぞれの超音波が干渉しあって、正確なデータが得られなくなるため、以前は4方向受信が限界と考えられていました。しかし、今回、アロカ社がそれぞれの超音波の発信・受信の方向を限定し、超音波の周波数を4本ずつ変えることなどで、超音波同士の干渉を抑え、8方向の受信に初めて成功しました。4方向受信を使用した映像では、手術用の鉗子の画像がブレたり太く見えてしまっていたのが、くっきりとした映像になり正確な形を把握できるようになりました」
困難度の高い手術を変える
土肥教授は研究の背景を次のように説明する。「『脊髄髄膜瘤(りゅう)』という病気があります。先天的に背骨から脊髄が飛び出してしまう病気ですが、母親の胎内で治療ができれば、健康な赤ちゃんとして生まれることができるのです。しかし、開腹手術を行うと母親と子供への健康へのリスクが大きい。したがって、平面の映像を見ながら内視鏡手術が行われるようになってきているのですが、どの深さまで器具を入れるかは医師の経験に頼る部分が多く、陰になって見えない部分もでてきます。今回開発した機器があれば、母体と胎児への影響を最小限に抑えた上で、正確に執刀位置が把握できるようになります。大人の病気でも、脳腫瘍などは体の内部の深くに病巣があり、手術中に手術器具がどこまで到達しているかを視認することが難しい。こういった手術にも、非常に役に立つと考えられます。」
今後について土肥教授は次のように語った。
「後は実際の治療の際に、医師に使ってもらいたいと思います。数年のうちに、幅広く実用化されるでしょう。検査機器に比較すると治療機器の分野では、工学系の知識がまだ十分に活かされていません。工学系の知識、研究を活用して、困難な病気を治す新しい治療に必要な道具を揃えていくことが、我々の役目だと思っています」
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