Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年12月号 > 世界中の水をきれいに(仮訳)
大阪市にある日本ポリグル株式会社では安価で安心な水質浄化材を開発し、発展途上国を中心に輸出している。同社の小田兼利会長に河崎美穂が話を聞いた。
「人が飲める水は、こんなに簡単にできます」。小田会長は茶色く濁った水の入った容器に、白い粉末を入れて混ぜる。日本ポリグルが納豆のネバネバ成分であるポリグルタミン酸から開発した水質浄化剤だ。ほんの数秒で水の中に溶けていた汚れの成分が固まって底の方に沈殿し、容器の上半分は透明できれいな水になった。小田会長は、透明な上澄み部分を脱脂綿で簡単にろ過して、小さなコップですくってそのまま飲み干してみせる。
1995年の阪神淡路大震災のとき、神戸市内で被災した小田会長は、水の大切さを思い知ったという。
「その時、十分に水がありませんでした。目の前に池があって、この水が使えたらどんなに便利だろうと思いました」
そうした思いから、長年、産業機械の自動化、省力化で多くの製品開発を手がけてきた経験を活かし、水質浄化の技術開発に取り組み始めた。ポリグルタミン酸には、水を浄化する能力があることが知られていたが、大量生産をすることが難しく、製品化にはいたっていなかった。しかし、小田会長はわずか数年で、微生物による大量生産技術を確立し、製品化を実現した。そして、2002年に日本ポリグル株式会社を立ち上げた。
「当初は国内向けの販売を考えていたのですが、飲料水に恵まれた日本ではこうした新しい技術が入り込む余地がありませんでした。どこで必要とされているのかを改めて考えた時、世界には安全な飲み水を得ることが困難な人がたくさんいることが分かりました」
海外への営業活動を開始したものの当初は全く売れなかったという。注目されるきっかけとなったのは、小田会長が「水の大切さ」を実感したのと同じ、地震災害だった。
「2004年末に、スマトラ沖大地震が起き、東南アジア諸国が津波の被害を受けた際、タイ政府から要請があり、当社の製品を無償で援助することになりました。当社の製品は、汚れた水に混ぜるだけです。到着から30分後には、飲料水を提供できました」
現在では約40カ国で日本ポリグルの浄化剤が使われている。多くの国々に広まった最大の理由は、手軽さと安さだ。100グラム=150円の製品から、1〜1.4トンのきれいな水ができる。
バングラデシュでは、販売のための現地法人を開設した。「ポリグルレディ」と呼ばれる女性販売員たちが、地方の村々の家庭に、浄化剤の粉末を売って歩く。その売り上げが彼女たちの収入となり、平均月収は約3500円。
10月末、経済産業省の実証事業に採択されバングラデシュの小学校に設置した新しい浄水装置の試運転に立ち会うため、小田会長は久しぶりに現地を訪れた。
「新しい設備も、池からポンプで水をくみ上げ、その水に浄化剤を入れ攪拌した後、ろ過と殺菌処理を行う簡単な仕組みです。現地のメーカーに製作を委託して価格は70万円。従来型の浄水装置と比較しては異例の安さです。最近、世界的な水ビジネスが話題になっていますが、大型の上下水道システムの導入が必要な地域もあれば、まずはその日の飲料水を確保することが重要な地域もある。私たちは後者の地域に向けたビジネスを進めていきたい」
当初は「浄化剤の発明で稼ぎたい」と考えていた小田会長が、「世界中の人に安心して飲める水を提供する」ことを重視するように変わったのは、途上国で出会った子どもたちとの交流によるものだという。
「汚れた水しか知らない子どもは、透明な水を初めて見ると『色がないのが不思議』『味がないのが変』と言いますが、何度かきれいな水に口をつけるうちに、決して汚れた水を取らなくなります。さらにコストを下げて、世界中に安価で安全な水を提供するお手伝いを続けたいと思います」
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