Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2010年12月号 > 世界の水問題と日本の貢献(仮訳)
世界は今、深刻な水問題を抱えている。世界の水供給改善の現状と今後、そして、その緊急の課題における日本の役割について、ジャパンジャーナルの澤地治が竹村公太郎日本水フォーラム代表理事に聞く。
──世界は今、どのような水問題に直面しているのでしょうか。
竹村公太郎氏:世界では水不足や水汚染など水問題が深刻化しています。これは、人口の急激な増加、新興国の経済成長、先進国における大量生産・大量消費といった要因によって引き起こされています。
例えば、世界の人口は1900年には約20億人でしたが、2000年には、その約3倍の約60億人になりました。しかし、水の消費量は同じ期間で6倍になっているのです。
中央アジアのアラル海は、かつて世界で4番目の広さをもつ湖でしたが、今は消滅の危機に瀕しています。原因は、周辺で綿花を生産するための大規模な灌漑農地が作られ、大量の水が使われたことです。その他にも、農業用地下水を大量に汲み上げたことが原因で、インドやアメリカ大陸で地下水が減少しています。
現在、世界で約20億人が水不足に悩まされています。現在のペースで水を消費し続ければ、2050年には、約70億人が水不足の影響を受けると予想されています。
──地球の気候変動は、どのような水問題を引き起こすと考えられるでしょうか。
気温の上昇で、北極圏の氷、アラスカ、アンデス、ヒマラヤの氷河が溶けています。また、世界的に降雪量も減っています。氷河や、山に積もる雪は生き物が眠っている冬に水を蓄え、春から夏にかけて溶け、水を供給するという「天然のダム」の役割を果たしています。しかし、気温が上昇し、冬に氷河や雪が溶けてしまうということは、冬の間に、水が川から海へとどんどん流れてしまうということです。つまり、生き物が活動を始める春から夏に、水が不足するという事態が起こってしまうのです。
ヒマラヤの氷河は長江、黄河、ガンジス川、メコン川、インダス川などの水源です。つまり、アジア大陸のほとんどの国の水源と言えます。夏にこれらの川の下流域で雨が少ない時でも、水源である氷河から溶けた水が、コンスタントに流れますので、極端な水不足で下流域の住民が苦しめられることはありません。しかし、氷河が少なくなくなれば、下流域で雨が少ない場合、その影響が非常に深刻なものになってしまいます。
──日本と世界の水問題はどのように関連しているのでしょうか。
日本は食料、衣料、木材など多くの物を世界中から輸入しています。それらの生産には大量の水が消費されています。このように物を生産する際に必要と推定される水を、バーチャル・ウォーターと呼んでいます。
日本は、バーチャル・ウォーターの輸入量が年間約650億立方メートルに達しています。これは、1億2千万人の日本人が家庭で消費する5年分の水に匹敵します。つまり、日本の経済的豊かさは、世界の水を消費することで成り立っているのです。それゆえ、日本は世界の水問題に真摯に向き合う必要があると言えます。
──日本は世界の水問題にどのような貢献ができるでしょうか。
日本の特徴の一つは、国際河川を持っていないということです。国際河川の流域では、その上流にある国と下流にある国との間でしばしば紛争が発生します。そうした問題解決のために日本は中立的な立場から貢献できると思います。
かつては日本でも、地域間で水を巡る争いがしばしば起こっていました。しかし、その争いの歴史の中で、話し合いや技術を使って、水を分かち合うという知恵を育んできました。例えば、山梨県には16世紀の武将、武田信玄が整備したと伝えられる「三分の一湧水」があります。この名前の由来は、一つの湧水の利用を巡る3つの村の争いを治めるため、それぞれの村につながる水路に、湧き水が均等に流れるよう、湧水口に三角形の石柱を置いて、三方向に水が分かれる仕組みを作ったことからきています。
私の属するNPO法人「日本水フォーラム」は、こうした日本の「水にまつわる知恵」を、世界の水問題を話し合う国際会議として3年に1回開催される「世界水フォーラム」の場で各国に提供しています。また、2006年、第4回世界水フォーラムにおいて、日本の提案によりアジア・太平洋水フォーラムも設立されました。こうした日本の関与は、日本の水問題に対する真摯な姿勢の現れとして、世界各国から高い評価を受けているのです。
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