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Highlighting JAPAN

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ミュージアム

足立美術館(仮訳)

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美術館は、どこでも展示内容を折々に変えている。それでも、季節の変化に合わせて全体の雰囲気を刷新できるところは多くない。ジュリアン・ライオールが足立美術館を訪れた。

足立美術館は、偉大な日本人芸術家の手による印象的な作品の数々と、そうした作品が展示されている建物を取り巻く庭園が融合した場所で、それはまさに壮麗だ。

故足立全康が1980年に創設した日本庭園は、自然美が織りなす季節の表情へと訪問者を誘うよう入念に設計されており、建物内部に飾られている絵画を引き立てている。

この美術館に足を踏み入れると、私は、六つの独特ながらも連続した伝統的庭園の第一番目に迎えられる。その庭は、花々や鳥たちのさえずり、吹き渡るそよ風、整えられた砂利によって、気分が落ち着き魅了されるような設計となっている。私は、数分間その場に立ち止まって、心と体を調和させる。

苔庭(松の木と苔が繁茂するきめ細かく配置された石で覆われた庭)にたどり着く前に、少し寄り道をすると寿立庵の茶室へとやってきた。ここでは、丹精を込めた手入れの賜物である庭に感嘆していると、抹茶を一服勧められた。

この庭園のどこでもそうであるように、木の葉、石、松葉のただ一つでさえ不自然さはない。砂利は、見事なまでにきちんと掻きならされている。聞こえてくる音といえば、風と低い方にある池へ優雅に流れ落ちるように設計された滝が奏でる音だけだ。この美術館で見てきた庭園の中でも、ここが最も魅惑的な場所だと私は感じた。まさに、典型的な日本美である。

枯山水庭の美しさは、自然との調和と「借景」の技法からきている。ここでは中央に配された岩の構成が山を思わせ、その山から流れ落ちた滝の水がやがて海へと注ぐ様子を水を使わずに白砂で表している。それとは対照的に、池庭には鯉が泳いでいる池があり、石橋の下を通って縁取りの岩近くまで行ったり来たりしている。

興味深いことに、池にそばには全康が暮らしていた家があり、床も間を見ることが出来る。ところが、この床の間には通常ある掛け軸がかかっていないのだが、その代わりにその先の庭を見渡す窓が開けられている。私は、その窓が額の代わりとなった生の芸術作品に魅了された。

最後の屋外展示は、横山大観が描いた絵画を表現した白砂青松庭で、庭園から内部の展示へと移る、非の打ち所のない道筋となっている。ちなみに、この日本庭園は『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で三ツ星の評価を受けた。

ここでは、美術館の非常に価値が高い収蔵品の中でも横山大観の作品を多く展示している。創設者の足立は、横山のような画家は300年に一度しか輩出しないという他の批評家たちの論評に共感していた。そして、私自身も彼の作品を鑑賞しているうちに、同じ思いを抱かずにはいられなかった。

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