Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2012年9月号 > 食とのマリアージュ(仮訳)

Highlighting JAPAN

前へ次へ

特集日本のお酒で乾杯!

食とのマリアージュ(仮訳)

English

日本酒や焼酎は日本食だけではく、様々な国の料理と一緒に楽しくことが出来る。食とのマリアージュを紹介する。

フレンチと日本酒の出会い

モナコ、パリ、ロンドンの三つ星レストランを含む、世界8カ国、27店のフレンチレストランを統括する世界的シェフ、アラン・デュカス氏は、180年以上の歴史を誇る石川県金沢市の中村酒造と協力し、2010年、日本酒「日榮アラン・デュカス セレクション」を世に送り出した。

「最初、中村酒造から、彼らが既に製造していた『日榮』という日本酒を、レストランで出せないかという依頼がありました。『日榮』は非常に美味しい日本酒でしたが、フランス料理と飲むには、やや甘みが強かった」とアラン・デュカス・エンタープライズ日本代表のファブリス・ルノー氏言う。「そこで、アラン・デュカス氏は、日本だけではなく、世界中の自分のレストランで味わうことが出来る、オリジナルの日本酒を作らないか、と中村酒造に逆提案したのです」

その後、約2年にわたって、アラン・デュカス氏の料理を知り尽くしたチーフソムリエのジェラール・マルジョン氏と中村酒造の開発担当者が議論を重ね、日榮アラン・デュカス セレクションは作り上げられた。主原材料となる米には、石川県の減農薬栽培されている非常に希少な品種「神子原米」を使用、それを中村酒造オリジナルの酵母によって発酵させることで、まろやかな甘みと切れの良い酸味をもった日本酒が完成した。

「お客様からは、今まで飲んだ日本酒にはない味という声が数多く寄せられています。日榮アラン・デュカス セレクションは、甘みのある素材やソースなどとも、見事なマリアージュを楽しめます」とルノー氏は言う。「これまで、アラン・デュカス氏がオリジナルのお酒をフランス以外で作ったのは日本だけです。それだけアラン・デュカス氏が日本文化、日本料理に対して、深い愛情と理解を持っているのです」


日本酒のWabi

パリのトゥール・ダルジャンなど、数々の有名レストランでシェフを務め、現在は、パリの「ドミニク・ブシェ」のオーナー・シェフであるドミニク・ブシェ氏は、2005年、来日していた時に偶然、石川県金沢市の福光屋(1625年創業)の日本酒を飲んだ。そして、その味に感銘を受けたブシェ氏は、福光屋にオリジナルの日本酒の開発依頼を行った。

素材本来の旨味を活かした、軽やかな味を持つブシェ氏のフレンチに合う日本酒候補として、福光屋の開発担当者は、酒蔵に100以上ある貯蔵タンクの中から、数年熟成された約10種類を厳選した。その中から、ブシェ氏が3種類を選び、2007年に、「ゆり」、「ふく」、「さち」の3種類の日本酒が誕生したのだ。これらの日本酒は、「ドミニク・ブシェ」で飲めるほか、「ドミニク・ブシェ」に隣接する「Wa-Biサロン」、日本の福光屋の直営店でも購入できる。

「『ゆり』は華やかな香りで、前菜や魚料理との相性が非常に良いです。『ふく』と『さち』は、非常にボディーがある日本酒で、肉料理にとても合います」と福光屋の開発本部長の利岡祥子氏は言う。「ブシェ氏のレストランで初めて日本酒を飲まれる方が多いのですが、皆さん、日本酒とフレンチの相性の良さに驚かれます」

そして、2008年7月、福光屋はブシェ氏とのコラボレーションで、「Wa-Bi」を発売した。「Wa-Bi」は、より多くの人が日本酒を楽しめるように一般向けに開発された日本酒だ。2011年12月から、フランス国内の大手スーパー、カルフールのほぼ全店で購入が出来るようになった。


世界を驚かす、日本酒とのマリアージュ

「マリアージュ」はフランス語で「結婚」を表す言葉であるが、しばしば、赤ワインと肉料理といった、ワインと料理との組み合わせを表す時に使われる。しかし、近年、日本酒が海外に広がるとともに、日本酒と日本食以外の多国籍料理との意外なマリアージュが次々と提案されている。

「塩、オリーブオイル、トマトなどを調味料として、素材の味が活かされたシンプルな味付けがされている、スペイン、イタリア、南仏の地中海料理は日本酒と相性が良い料理です」と、食に関するマーケティングやイベントコーディネートを行う「彩食絢美」の手島麻記子氏は言う。「トマトに関して言えば、日本料理の基本出汁のひとつである昆布出汁と共通するうま味成分のグルタミン酸が含まれていることが、日本酒との相性の良さの要因の一つと考えられます」

手島氏は国内外で、西洋料理と日本酒とのマリアージュに関する数多くのイベントを日本酒の蔵元や西洋料理のシェフと協力して開催している。

昨年10月に、手島氏がスペインのカタルーニャ州のバルセロナでプロデュースした、愛媛県酒造協同組合のイベントでは招待されたスペインの料理評論家、シェフ、ソムリエからは、スペイン産の食材や料理との日本酒の相性の良さに驚嘆の声が挙がったという。

招待客の一人、“世界一予約が取れないレストラン”と称された、カタルーニャの三つ星レストラン「エル・ブジ」のヘッドソムリエが、「チーズに日本酒がこれほど合うと思わなかった。日本酒でチーズを楽しむなら、チーズの生産者も非常に喜ぶでしょう」と述べたほどだ。さらに、日本酒(純米大吟醸)とイベリコ豚の生ハムとのマリアージュは、現地の人々に好評を博し、招待客からは「アンビリーバブル!」といったコメントも寄せられたそうだ。

スペイン料理以外でも、日本酒は楽しむことが出来る。例えば、世界中で食べられている生牡蠣だ。生牡蠣にはシャブリというのがマリアージュの定番とされているが、生牡蠣と日本酒との相性も抜群だ。特に、香りが控えめで、すっきりとした飲み口の純米大吟醸が合う。

「日本酒は牡蠣の生臭さを洗い流してくれます」と手島氏は言う。「また、日本酒は牡蠣の持っているミルキーなうま味を引き出してくれるのです」


ミシュランに選ばれた焼鳥屋

焼鳥は、鶏肉の様々な部位を一口大の大きさにして串に刺して焼いた料理で、醤油ベースの甘いタレ(ソース)または塩味で食す。日本では、ビールや日本酒といったお酒に合う料理として好まれる。東京の五反田駅周辺には、数多くの飲食店が集まっているが、そうした中に、2009年以来、ミシュランの一つ星を獲得している焼鳥屋「よし鳥」がある。ビルの2階ある「よし鳥」は22席の小さな店だ。

「2006年に開店して徐々に口コミでお客さまが増えきましたが、ミュシランに掲載されてからは、日本人だけではなく、外国人のお客さまも非常に増えました」と主人の吉本憲司氏は言う。「みなさん、『パーフェクトな味』と言って下さいます」

よし鳥は、東北の青森県産の「青森シャモロック」と呼ばれる品種の鶏を使っている。そして、素材のうまみを最大限に引き出すために、天然塩を振り、炭で焼き上げる。

また、店内は焼き鳥を焼く場所から、全員の客が見渡せるようになっている。吉本氏は客の様子を見ながら、それぞれの客に応じて微妙に料理の味を変える。例えば、お酒の杯を重ねている人は、次第に味の濃い料理を求めるようになるので、そうした人に出す料理には塩をやや多めに振るといったことだ。

よし鳥は、鶏だけではなく、吉本氏自らが料理に合わせて選んだ日本酒、焼酎、ワインといったお酒も自慢である。特に、常時、20種類ほど置いてある日本酒は、ここでしか飲めないという銘柄ばかりだ。いずれも、しっかりとした焼鳥の味を邪魔することなく、焼鳥の美味しさを引き出す役割をする。どのお酒を飲んで良いか分からないときは吉本氏に尋ねれば、その人に最適のお酒を選んでくれる。

「外国人のお客さまも迷わず日本酒を選ばれます。焼き鳥は日本の文化だから、日本酒が合わないはずないと思っているのでしょう」と吉本氏は言う。「時には、『自分の国にもお店を出してよ』と言われますね」

前へ次へ