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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

三重県

忍者と太陽の女神(仮訳)



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三重県にはどこか少し神秘的なものがある。三重は名古屋と京都の間に位置しており、まさに日本の東西を結びつける場所と考えられるような土地でもあり、神道における最高の神である天照大御神 (女神) が崇拝され、また名高い伊賀流忍術の道場が開かれた場所でもある。

伊勢神宮は天照大御神、神道神話における八百万の神の総氏神で、日本の皇族の祖先と言われている。毎年500万人を超える人々が参詣のためにこの神社を訪れる。参詣者が神社入り口にある宇治橋を渡ると、人間世界と神の世界の境界を越えたものとされる。

伊勢神宮観光案内人の長谷川容子氏が、日本語の「神」という単語を使って「神を見たことがありますか?」と尋ねてきた。そして「見たことはないでしょう。しかしこの場所に来ることによって、あなたは心の中で神を感じることができるのです」と続けた。

約2,000年前に創祀された伊勢神宮の中心の最も神聖な場所は、選ばれた少しの人だけが入ることが許されている。現在でも、境内や建造物は周囲の木々や石との調和のとれたいにしえの荘厳さを保ち、穏やかな五十鈴川がその横でゆったりと流れている。檜の建築物は日本の見事な木工技術の粋を集めたものであり、釘を一切使わずに木材による接合のみを用いて建造されている。宇治橋を渡り終えたところにある威厳のある檜造りの鳥居に触れると、その霊力を感じるような気がする。

長谷川氏は、神社境内の入り口で、儀礼的な手洗い作法を教えてくれた。まず左手、次に右手を洗い、さらに左手に注いだ水で口をゆすぎ、その手を再びゆすぎ、次の人のために残りの水をひしゃくの柄にかけ流してきれいにするのだ。長谷川氏は、「手を洗うことは体を清めることの象徴、口をゆすぐことは心を清らかにすることの象徴なのです。これによって精神を清めて神にお目にかかる準備を整えるのです」と教えてくれた。

心が癒されたところで、我々は神社境内に隣接して店が集まった地区である、おかげ横丁に移動した。荘厳で敬虔な神社の雰囲気とは極めて対照的に、この一角は騒々しく活動的で、多くの露店では屋外で焚く火から蒸気や食べ物を調理する煙が勢い良く立ち昇り、調理したばかりの地元の珍味を売り込んでいる。観光客は、手こね寿司 (寿司飯に鰹を乗せたもの)、あるいは餅 (柔らかな米の団子) を筋の入った甘い小豆の漉し餡でくるんだ有名な赤福などの三重の特産物を買い求めることができる。

お腹が満たされたところで、我々は北に向かい、伊賀市の伊賀流忍者博物館を訪れた。伊賀市は、忍者の技を意味する忍術の発祥の地として有名である。歴史的に忍者は農民を装っていたことが多いが、火薬や医薬の製造に加え、マジックのような幻覚や錯覚を作り出す技術を身につけていた。博物館では、暗殺、偵察その他の隠れた技術に長けた忍者が技を磨く様子を見ることができる。忍者装束を纏った案内人が、秘密の通路や忍者屋敷の壁の仕掛けを見せてくれる上に、有名な忍者技である手裏剣投げなど精緻でバランスの必要な妙技を演じてくれる。博物館では、装束や武器など忍者に関わる本物の歴史遺物を展示するとともに、この忍びやかですばしこい戦士に関する秘伝を伝えている。

三重の漢字表記「三重」は「三つに重なった層」を意味する。三重の幾重にも重なった宝物を見つけるためには少しそれを掘らなければならないが、その魅力はそうする価値があるのだ。