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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

岡山

倉敷美観地区と児島ジーンズストリート(仮訳)




西日本、瀬戸内海に面する岡山県倉敷市は高梁川に沿った歴史ある美しい街だ。現在50万人ほどの人口を擁する倉敷市は、もともと川の港町として栄え、備中地方のあらゆる物産の集積地だった。約370年前、時の政権である徳川家は倉敷に代官所(代官が政務を執り行なった役所)を設置し、細い運河沿いに商業の中心地を築いた。船頭たちは海からの満ち潮と引き潮を巧みに使い、舟で運河を上り下りして塩をはじめとするあらゆるものを運んだ。

倉敷駅から徒歩10分ほどにある「倉敷美観地区」は日本でも特に魅力ある江戸時代商人街の一つとされ、当時の歴史的な町並みが今も見事に保存されており、時代劇の撮影現場としても頻繁に使われる。観光客は各地から訪れ、白壁の蔵や細い石畳の路地など、当時を思い起こさせる景観に感銘を受ける。

倉敷美観地区の代表的な観光名所の一つは「大原美術館」だ。大原美術館は、1930年に実業家の大原孫三郎が前年に亡くなった西洋画家、児島虎次郎を記念して設立した。入り口に2つの堂々たるロダンの彫刻がある本館は、印象派の作品を展示してあり、エル・グレコやモネ、ピカソなどの名作が連なる。近くには同氏が妻のために建てた別邸、有隣荘がある。独特な屋根瓦は見る角度によって緑色に見えることから地元では「緑御殿」の愛称を持つ。「美観地区」には他にも「加計美術館」、「倉敷民藝館」、「日本郷土玩具館」や古い土塀の蔵づくりの「倉敷考古館」などがある。これらの建造物は、江戸から明治、大正に遡る歴史を持つ。

運河をもう少し下ると「倉敷アイビースクエア」がある。多目的な空間であるアイビースクエアは、有名な繊維メーカー「倉紡」が操業する木綿工場だった。生い茂る蔦とセコイアの木のある赤煉瓦の建物は英国式の建築を倣っており、2007年には「近代化産業遺産」にも指定されている。日暮れ時には運河沿いとアイビースクエアにはあかりが灯り、訪れた人たちに昔の日本の情景を見せてくれる。

隣接する児島地区は国産ジーンズの発祥地として日本で有名な街だ。古くから木綿が栽培されていたこの地区は、市場の変化に柔軟に対応しながら、伝統的な足袋の製造から始まり、昭和時代に入ると学生服の製造へと切り替わっていった。そして1960年代には、この瀬戸内の小さな街は日本製デニムのメッカとなる。

児島駅から程近い「ジーンズストリート」沿いには、様々なこだわりをもつデニム店が軒を列ね、その間にカフェやレストランがある。レンタサイクルもあるので、ジーンズストリートはもちろん、近くのジーンズミュージアム、1970年に日本で初めてレディース専用ジーンズのブランドを立ち上げたデニムメーカーのベティスミスを周るのにも便利だ。ベティスミスでは、アウトレットショップを見たり、カスタムメイドのジーンズがオーダーできたり、また予約をすれば米国製のアンティーク巻き縫いミシン、「ユニオン スペシャル」を体験することもできる。

倉敷の魅力溢れる雰囲気と名所だけでも訪れる価値があるが、加えて児島でカスタムメイドのジーンズをオーダーするという旅の思い出を手に入れられるとあれば、岡山のこのエリアへの旅は外せない。



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