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Highlighting JAPAN

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明日をつくるベンチャー企業

レンズの限界へ

専門メーカーがどのようにベンチャー精神を持続しているか(仮訳)




軽量で薄型の偏光レンズを使ったメガネを愛用している人ならば、そのメガネのレンズにはホプニック研究所の技術が使われている可能性がきわめて高い。薄型偏光レンズの製造において世界一のシェアを誇るプラスチックレンズメーカー、株式会社ホプニック研究所社長の高木俊治氏が、ベンチャー気質にあふれるビジネス哲学を語ってくれた。

高木氏はもともと大手企業でレンズを作る仕事をしていたが、その頃薄型レンズの需要はまだ小少なく、その会社は薄型レンズの製造に関心がなかった。「当時から、これからは開発主体に企業がシフトしていくべきだと感じていましたが、サラリーマンの立場では意見を言うのが難しかったので、1988年に起業しました」と言う。

研究を重ね、厚いレンズしかなかった市場にホプニック研究所が薄いレンズの素材となる新しい樹脂(呉羽化学工業が開発し、特許を取得した重合体を構成する基本単位物質)をもたらしたのは、起業翌年の1989年だった。

同社は樹脂の分子の隙間に金属のイオンを埋め込んでゆくことで樹脂と金属を混ぜるという、独自に開発した調合技術を使ってネオジムレンズという薄いレンズを製造し、国内はもちろん、海外にも販路を拡大し成功を収めた。だが、高木氏は「同じものばかり作っていてはいずれ競合する会社がいくつも出てくるだろうと思い、より優れた新しいものを作るべきだ」と考えた。

こうして新たに、まぶしさやぎらつきを抑える高屈折偏光レンズと、紫外線に当たると色が変わる高屈折調光レンズが相次いで発売された。「私たちのような小さな会社が大手企業に負けないためには、小さい市場の新しいニーズにこたえるしかありません。意外にもアメリカやヨーロッパでも売れています」と高木氏。

世界シェアの90%近くをホプニック研究所の製品が占める高屈折偏光レンズはレンズ内に偏光フィルムが挿入されている。製造技術がほとんど公開されていなかった偏光フィルムを作るため、製造機械を含め一から手作りし、長い期間をかけてさらにそれをレンズにする技術を確立した。「現在世界に偏光フィルムを作る会社は6~7社ありますが、ホプニック製品は品質で選ばれています」と高木氏は自信を見せる。

大量生産ができない小さな会社ならではの、生活環境や加齢による見え方の変化など特殊なニーズに応えられる製品を開発するのだが、開発には時間がかかるため、およそ8年後の需要を見越しているという。また、ホプニック研究所は4件の特許を持っているが、すでに世界のどこかで他社が特許をとった技術ではないか、膨大な特許関連資料をチェックする作業も、製品開発段階で約2年おきに行っている。

2014年、ホプニック研究所は経済産業省より「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれた。今後も新しい素材を使ったフィルムや調光剤を表面に塗った調光レンズなど、未開拓の市場を見据えたビジネスを展開し、5年後には現在の3倍である30億円の売り上げを目指しているという。「レンズ業界では私たちはとても小さな会社ですが、中小企業ベンチャー振興基金や中小企業庁の創業補助金を活用してレンズなどの研究開発を行ってきました。現政府がベンチャー振興に力を入れていることも、とても心強く感じています」と高木氏。

そして将来の夢は「機能性レンズメーカーとして世界一になること」である。「高屈折偏光

レンズの世界でのシェア1位という数字に胡坐をかかず、まだ参入の余地がある市場でもトップになりたい。そうすれば市場規模も大きくなり、製品の価格も下げることができます。ホプニック研究所の製品をハイエンド層だけでなく、もっと世界の多くの人に使ってもらえるようになってほしいです。」と高木氏は語る。



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