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Highlighting JAPAN

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日本のヘルスケア

健康的なサイクル

障がい者を勇気づける足こぎ車いす(仮訳)



宮城県仙台市のベンチャー企業TESSはニューロモジュレーション(神経調節)技術として知られているものを組み込んだ足こぎ車いす「Profhand(プロファンド)」を販売している。TESSの代表取締役社長の鈴木堅之氏が東北大学の客員教授、半田康延博士らからライセンスを受け、2008年に事業化した。

ニューロモジュレーションという用語は、通常、障がいを改善するために電気刺激や化学刺激によって中枢神経系の神経経路を刺激することを意味するが、Profhandはそのどちらの刺激も使わない。前にペダルが付いており、自転車をこぐ要領で前進する。アームレストに取り付けた舵で旋回できる。逆にこげば後進する仕組みだ。たとえ片足が少ししか動かない人でも、Profhandに乗ることができる。

どうやって半身麻痺の人が両足でこぐことができるのか? 鈴木氏は次のように話す。「人間が歩くときは、無意識に左右交互に手足が動きます。脊髄にある「中枢パターン発生器」として知られる神経回路がこういった動作を制御しています。半身麻痺の人はこの脊髄中枢がうまく機能していないのですが、Profhandでペダルをこぐと、脊髄中枢が刺激され、麻痺していないほうの足から麻痺した足へ反射の信号が伝わります。これらの指令は赤ちゃんのときに見られる原始反射が呼び起こされているのです。」

Profhandのフレームには日本が誇る新幹線にも使用される超軽量型の7000系アルミが使われている。丈夫な上に小回りが利くため、屋内での使用に適している。通常の車いすは押すための介護の手を必要とし、電動車いすを使うようになると筋力が弱り寝たきりに近づくのが早くなるが、一方Profhandに乗って足を使ってこぐことによって、足だけでなく他の部分にも筋力がつき、日常の動作がスムーズにできるようになるという。

TESSはその技術力や製品としての完成度の高さ、社会貢献性が評価され、2014年2月にはJAPAN Venture Awards 2014で経済産業大臣賞を受賞した。また、鈴木氏のもとには感謝の声が続々と届く。何年もリハビリしても動けなかった人が、Profhandに乗った結果、また歩けるようになったという報告もある。鈴木氏は東北大学と連携しながら、利用者からの要望を取り入れ、製品に改良を加え続けている。

ProfhandはCEマーク(ヨーロッパでの販売規格)及びFDA(アメリカ食品医薬品局)からの認証を取得しており、アジアを始め北米、ヨーロッパなど海外でも販売されている。アメリカでは老後に足の衰えを感じる退役軍人などが利用し、アクティブにアメリカ全土を旅行しているという。また、ベトナムではJICAの草の根技術協力事業によってProfhandを利用したリハビリモデル訓練プロジェクトを実施している。ベトナムには国の保険制度がなく、また理学療法士もほとんどいないため、リハビリが根付いていない。鈴木氏らは低所得者を含む障がい者へのリハビリモデル開発やリハビリ人材育成活動を行っている。

鈴木氏は現在、フィールドホッケー、サッカー、車いすダンスなどスポーツ分野におけるProfhand の活用も積極的に進めている。実際に日本では各地でProfhandを使ったスポーツの協会ができ始めているという。近い将来、このProfhandをパラリンピックの種目でも見かける日がくるかもしれない。そのことは、動くことの自由さとともに、障がい者の人たちや家族たちにとっても大きな夢になるだろう。

 

 



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