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Highlighting JAPAN

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地球温暖化対策

高く、乾きつつある国

ボリビアの最も標高の

高い都市の水資源を管理する(仮訳)



雪を被ったアンデスの嶺峰に囲まれたボリビアの首都ラパスと隣接するエルアルトは、標高3100メートルから4000メートルの間に位置する世界でもっとも高地にある都市のひとつだ。近くの氷河が地域200万人の住民の水資源となっている。ところが、地球温暖化により、特に1990年以降氷河の後退が加速した。2008年、人口が増加する首都圏の水資源の減少を危惧したボリビア政府は今後の氷河減少を予測し、流域の水資源管理を行うため国外の科学的援助を求めた。

国際協力機構 (JICA) はそれに応え、「氷河減少に対する水資源管理適応モデル」を開発するため、日本とボリビアの研究者たちを集め、氷河の融解量や河川の流量、土砂の侵食と堆積、水質、そして水資源の管理を研究する5年間のグランデ(Glacier Retreat impact Assessment and National policy Development)プロジェクトを2010年に立ち上げた。東北大学、東京工業大学、福島大学、日本大学の14名の日本人研究者と8名のボリビアからの留学生が、ラパスのサン・アンドレス大学や政府、民間の水資源に関わる機関の24名の研究者と共同チームをつくった。

研究チームは手始めに3つの氷河(コンドリリ、トゥニ、ワイナポトシ)のモニタリングシステムを開発することに焦点を絞り、氷河から解ける水が水資源にどう影響を与えているかをより正確に理解することに努めた。研究者たちは高山病と闘いながら観測装置を設置し、観測網をつくった。彼らの必死の苦労は報われた。氷河の厚みの計測や、土砂流出、水質調査、そして3Dレーザースキャナーによる地形図までも使って集めた詳細なデータは洗練された水資源管理モデルをつくることを可能にした。

高地特有の影響以外にも研究者たちは数々の苦難を克服しなくてはならなかった。例えば、2011年3月11日に日本の東北地方で起きた地震は、東北大学に多大な被害を与え、プロジェクトの存続さえも危ぶまれた。

それでも、「日本人研究者たちはこのプロジェクトを何としてでも完遂しようと心に決めていました」とJICA地球環境部の水資源・防災グループの宮崎明博課長は語る。日本の研究者たちはスペイン語を話すボリビアの相手側とのコミュニケーションに四苦八苦することもあったが、ボリビアの交換留学生たちが英語や日本語を交えて助けてくれた。

この地域の自然の水資源が増えることは見込めないので、研究チームは水資源管理を改善することがボリビアにとって最良の策だと結論を出した。エルアルト地域の水道統計と配水網のデータから水資源の減少や水道管の漏水に伴い水道水が供給されなくなる地域を明らかにした。ラパス・エルアルト市上下水道公社によればその30%は配水管の水漏れが原因だ。

プロジェクトは5年の期限付きなので、水資源管理の基盤整備と技術のボリビア側への移転がJICAにとっての最大の優先事項である。しかし、プロジェクトの期限が切れる2015年以降も、つくり上げられたモニタリングシステムやモデルだけではなく、ボリビアの留学生たちの経験によっても、ボリビアの研究者たちは研究を継続できると宮崎氏は確信している。今後は集めたデータとノウハウを用いて、ボリビア政府は配水管を修理することで、違法な水の使用を防ぎ、水の需要の調査や地下水の開発などをより的確に行うことができるだろう、と宮崎氏は付け加える。

残念ながらエルアルトとラパスを取り囲む氷河の将来の見通しは暗いままだ。研究チームは2040年までには今のサイズの3−4割ほどに縮小していると予想する。しかし信頼できるデータを元に、ボリビアは地球温暖化の挑戦に立ち向かう準備ができた。宮崎氏は、これはボリビア全体にとって良い結果になると確信する。「プロジェクトがサン・アンドレス大学との共同作業で行われ、ボリビアの発展に寄与できたことがとても意義のあることだと思っています」と彼は締めくくった。



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