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Highlighting JAPAN

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日本の秋

香り高き日本のワイン(仮訳)

日本の秋を代表する果物、ブドウ。日本のワインの発祥の地である山梨県勝沼町で生産される甲州ワインは、和食との相性の良さで海外からの注目も集まっている。

ブドウの収穫高日本一を誇り、果実王国と称される山梨県。中でも、富士山の麓に位置する勝沼町は日照や気温、降雨、土壌に恵まれたブドウ作りの好適地。町内には32のワイナリーが集まり、国内ワインの3分の1を産出する。

特筆すべきは、2005年及び2012年の国産ワインコンクール(2015年より日本ワインコンクールと改称)において金賞に輝いた「ルバイヤート甲州シュール・リー」だ。「和食に合うワイン」をテーマに丁寧に醸造されたその辛口白ワインは、シルクロードを経て日本へ伝来して以来、1000年以上生き永らえてきた伝統の品種で甲州種と呼ばれるブドウを100%使用し、上品な香りと優しい味わいを兼ね備えている。受賞と同時に人々の注目を集め、和食ブームの海外でも注目され始めた。ワインといえば海外のもの、という認識の強かった日本国内でも「国産ワイン」と和食との相性の良さが再評価されている。

日本のワイン生産の開始は1877年に遡る。勝沼町に日本初のワイン醸造会社「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、2人の青年がフランスへ派遣された。本格的なワイン醸造の専門知識を携えて帰国した2人は、白には甲州種、赤にはアジロン・ダック種を用いて、ワイン生産に着手した。「ルバイヤート」のブランド名を冠するワイン生産者の丸藤葡萄酒工業が創業したのは、それからほどなくして1890年のこと。現在4代目として代表取締役を務める大村春夫氏は、勝沼ワイン協会会長でもあり、「勝沼で世界と互角に戦えるワインを造りたい」とひたむきな情熱を傾けている。

かつて日本のワインといえば、ポートワインなど甘口の印象が強かった。「日本の多雨の気候を生き残るブドウは皮が厚く、皮由来の渋みや苦味をカバーするために甘口のワインが主流となり、日本のワインの命脈を保っていたのです」と大村氏はその理由を説明する。あるレストランシェフから「日本のワインは和食に合わない」との指摘を受け、彼は辛口へのシフトに奮起した。1989年、渋みをマスキングしつつ、厚みのある味わいと香りを出すために大村氏が取り入れたのは、シュール・リー製法。果汁発酵後に澱を濾過せずタンク保存し、澱の旨味成分をワインの中へ引き出す製法で、これが甲州種ワインを辛口でフレッシュ、コクのあるワインへと進化させた。

「私がフランスでのワイン修行から帰国したばかりの頃は、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランなどの欧州品種の方が甲州種よりも良いと思っていました」と大村氏は振り返る。「しかし、日本の気候で欧州品種を植えてみても、うまくいかない。甲州種が日本で1000年生き残ったということは、尊いことなのです。私は自分の造るワインに勝沼の地の良さや美しさを映し込められているか、それをいつも自問しています」。

2010年、甲州種は日本のブドウ品種として初めて欧州連合の認定を受けた。日本固有種ならではの繊細で溌剌とした味わいは、生の海産物の多い和食との絶妙のマリアージュを実現し、いまや甲州シュール・リーは国内外の実力派レストランや航空会社、在外大使館などで採用されている。

山梨ワインは11月3日に新酒解禁日を迎える。収穫を間近に控え、美しい藤色に色づいた甲州種の畑を眺める大村氏は、「ぜひ、たくさんの人に召し上がっていただきたい。日本のワインも美味しいねと言ってもらえたら、それは私にとって無上の喜びです」と、新しい季節へ期待を膨らませた。




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