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Highlighting JAPAN

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日本の秋

紅葉の中を走る(仮訳)

約20キロにわたる大自然の中を走り、四季折々に息を呑むほどの絶景を眺めることができる黒部峡谷鉄道。特に大スケールの紅葉が楽しめる秋は1年を通じてもっとも人気の高い季節である。

「トロッコ電車」の名で知られる黒部峡谷鉄道は、富山県黒部市の宇奈月駅から欅平駅までの20.1キロメートルを、黒部川沿いに走る人気の観光鉄道だ。12月1日から4月中旬の冬季休業期間を除き、多い日には1日19本が運行し、四季折々の自然の美しさを楽しむことができる。中でも紅葉の季節の眺めは素晴らしく、今年の北陸新幹線開通という追い風も味方に、国内外から訪れる人々の数は右肩上がりだ。黒部峡谷鉄道の魅力を黒部峡谷鉄道株式会社の河井良太氏にうかがった。

黒部峡谷鉄道は黒部川電源開発と切り離せない。発電所を建設する資材や作業員の輸送のための「黒部専用鉄道」建設が日本電力株式会社によって1923年に開始され、1937年に欅平まで開通した後、秘境とされた黒部峡谷の探勝を希望する観光客の声に応えるために、一般客も乗せるようになった。

「当時は『便乗の安全については一切保証いたしません』と書かれた便乗証を発行して観光客をトロッコに乗せていたそうです。1953年に関西電力株式会社が地方鉄道法の許可を得て観光客のための旅客営業運転を開始し、その後1971年に関西電力から分社化され、黒部峡谷鉄道としての営業が始まりました」。

ナローゲージと呼ばれる細い軌間に、新幹線の約半分のレール重量というコンパクトな鉄道だが、ピーク時は1本400人以上の旅客を乗せて41箇所のトンネル、21箇所の橋梁を含む片道約1時間20分の行程を走る。

「ルートには絶景スポットが数多くあり、順位をつけることはできませんが、特に紅葉が見頃の10月下旬から11月中旬は、鐘釣駅の近くのサンナビキ山で5段染めが見られるかもしれません。川の青を一番下にして、その上に紅葉の黄と赤、落葉の紫、そして頂上近くに積雪の白と5色が層になった景観は、ほんの限られた時期しか見ることのできない自然の奇跡です。この地域は寒暖の差が大きく、峡谷なので日照時間が少ない。この自然環境がひときわ鮮やかな紅葉の彩りの一因なのではないかと思われます」と河井氏は説明する。

黒部峡谷鉄道では、数年前にイラスト入りでよりわかりやすくなった沿線マップをリニューアルし、日本語のほか英語、中国語、台湾語、韓国語と多言語対応している。また地元出身の女優である室井滋氏がナレーションする見所ガイドを放送し、乗客がシャッターチャンスを逃さない工夫もしている。また「おもてなし」の心を形にと、駅員、車掌、運転手全員がトロッコ電車の出発時と到着時に乗客に手を振って挨拶するのだが、この習慣が乗客の間にも広がり温かい雰囲気に包んでくれる。

「トロッコ電車に乗った方から一番多くいただく声は、自然美が圧巻であったということですが、このホスピタリティを褒めてくださる方もいて、うれしく思っています。北陸新幹線開通で関東圏からのアクセスが向上し、多くの人が訪れてくださる状況をさらに進めるために、国内外へのPRに力を入れ行きたいと考えています」。

実際にトロッコ電車に乗っていると、深い谷底の澄んだ川、美しい色のダム湖、石を積んで露天風呂になる温泉の湧きだす河原など、紅葉以外にも見所は数多くある。よく探せば対岸にカモシカやクマの姿を見かけることがあり、サルの群れも頻繁に出現するという。紅葉の美しさを主役に、自然の豊かさが与える癒しを存分に実感できるのが、黒部峡谷鉄道ならではの紅葉の季節の魅力なのだろう。



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