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Highlighting JAPAN

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科学と技術

音声アナウンスをリアルタイムで文字に(仮訳)

アナウンスをその場で多言語化してくれるこの技術により、日本語のわからない外国人、音声を聴き取りづらい高齢者や聴覚障がい者にも音声情報を伝えることが可能となる。

日本では、鉄道や空港などの公共機関はもちろん、路上や店内など街のあらゆるところでアナウンスやガイダンスが聞こえてくる。そういった「音の情報」の多さに驚いたという外国人も多い。ただし、日本語のわからない外国人や聴覚障害者、高齢者には聞き取ることが難しい。

英語や中国語でのアナウンスを行うところもあるが、訪日外国人すべての言語には対応できない。しかし、音声の情報だからといって、翻訳した他言語情報を必ずしも音声で届ける必要はない。そんな発想から、ヤマハ株式会社は日本語の音声アナウンスの情報を外国語に翻訳しスマホ画面に文字で表示する「おもてなしガイド」というサービスを開発した。

現在、成田空港や東急バス、渋谷センター街、イオンモール、サンリオピューロランドなどで「おもてなしガイド」の実証実験を行っている。11月には鉄道会社での実証実験も始まるなど、順次利用できる施設やエリアを拡大していく計画だ。

利用者は、自分のスマホに「おもてなしガイド」のアプリをダウンロードしておくだけ。このサービスを導入している場所では、アプリを開いた状態で音声アナウンスが流れると、ほぼ同時にスマホのOSの言語設定に従った文字となって表示される。もちろん日本語で表示させることもできる。

導入する施設側も特別な機器など不要で、それまで使っていたマイクやスピーカーのままでいい。スマホのマイクでアナウンスの“音データ”をキャッチするので、インターネットやWi-Fiなどの通信環境も必要ない。また、対応言語に制限はなく、地下街や電車内、機内など、どこでも使えることは大きな魅力だ。

さらに、この仕組は定期的に流すような自動アナウンスだけでなく、人間がリアルタイムに読み上げるような肉声でのアナウンスにも対応しているという。肉声アナウンスでは、スマホに文字を表示するだけでなく、日本語でアナウンスを流すだけで、自動的に外国語のアナウンスを続けて放送するといったことも可能だ。

「電車やバスなどでは、運転手さんや車掌さんが肉声でアナウンスを行います。日本語しか話せない方もいますし、方言などで正しく音声認識されない可能性もあります。「おもてなしガイド」では、そのような場合でも、伝えるべき情報を正しく表示できるようにしています。この機能は、高い音声認識技術や翻訳技術を持つNICT(情報通信研究機構)様との共同研究によって生まれたものです。」とヤマハ株式会社ニューバリュー推進室のチーフプロデューサー 瀬戸優樹氏は説明する。アナウンスする側の負担にならず、いつも通りの運用で利用できることも重視した結果、開発された機能だという。

聴覚障害者向けのサービスとして、アナウンスが聞こえたタイミングでスマホのバイブをオンにして、スマホ画面を見ることを促す機能も開発した。ほかにも、機能拡張の可能性はあるが、「できるだけシンプルな機能にとどめ、幅広く、高精度で使えることを目指したい」と瀬戸氏は話す。また、何言語でも対応できる強みを活かし、日本発の技術やサービスと組み合わせて世界に売り込むことも視野に入れている。

2020年の東京オリンピック開催に向けて、外国人観光客はますます増えるだろう。いろいろな国からやってくる、さまざまな言語を話す人たちに、日本ならではの「おもてなし」を提供するサービスとなりそうだ。




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