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Highlighting JAPAN

卓越したプラスチック

世界各国で知られる人気アニメのプラモデルの金型を作ってきた秋東精工は、もともとプラモデルの金型メーカーだったが、ゴミの出ないプラモデルやギョウザのプラモデルなど、ユニークな商品を作り、プラモデルの新たな魅力を引き出すことに成功した。

1980年代に日本で大流行したプラモデル。30代、40代の男性なら、子どもの頃に誰もが一度は作ったことがあるだろう。しかし、1990年代からテレビゲームの普及等の要因もあり、プラモデル人気はグッと落ち込み、プラモデルに触ったことのない子も増えた。

そんな苦境にあっても、長年培ってきた技術力を武器にプラモデル業界を盛り上げようと努力を続けているのが秋東精工だ。プラモデルをニッパーや接着材を使わず、手で取れて組み立てられるようにするには、パーツの継ぎ目の部分が手で切り取れるちょうど良い太さでなければいけない。さらに、パーツ同士の組み合わせには100分の1ミリメートルレベルの精度が求められる。しかも、金型の材料である鉄は膨張するため、その分も計算に入れて金型を削る必要がある。秋東精工にはその精度を手作業で調整できる職人がいる。彼らの匠の技があってこそ、長年多くの玩具メーカーから信頼されてきたのだ。

職人技に加えて、早い時期からITも導入した。3D-CADによる設計や3Dプリンタでの試作品作りを取り入れ、コスト削減や効率化を図ってきた。最近ではプラモデルの価値を見直してもらおうと、新たな事業も展開している。「創業以来プラモデルの金型を作ってきましたが、金型だけでは厳しくなってきていました。そこで、プラモデルの設計から当社で請け負うことにしたのです」と、代表取締役社長の柴田忠利氏は話す。

従来は玩具メーカーが設計した原型を元に金型を作ってきたが、3D-CADで金型設計をしてきたのだから、自分たちでもプラモデル設計ができるはずだと気づいた。その技術と経験を活かして、設計から金型作りまでできることを付加価値に再起を図ったところ、プラモデルの設計者がいない玩具メーカー以外の企業からプラモデル製造の依頼を受けるようになった。医療機器、建築模型、映画の小道具など、それまでではあり得ないようなものもプラモデルにした。ノベルティグッズとしてのプラモデルの受注も増えている。また、同社が作った「ギョウザのプラモデル」は、ネット上でも話題になった。

さらに、プラモデル自体にも付加価値をつけたいと、秋東精工のオリジナルで、組み立てて使えるプラモデルを開発。単純なパーツを組み合わせると、クワガタの形をしたハサミになるものだ。「イベント会場でこのプラモデルを配布したところ、子どもたちは本当に楽しそうでした。やはりプラモデルは子どもたちに楽しんでほしい」と、当時を思い出して柴田氏は笑顔になる。

もうひとつ、本来なら捨ててしまうランナーと呼ばれる枠組みの部分も組み立てればプラモデルの一部になる、廃棄物の出ないエコプラモデルで秋東精工の名前を知る人が増えた。

柴田氏は「今もアニメ作品や自動車などのプラモデルが主流ではありますが、ノベルティのような新たな可能性もあります」と、今後もチャレンジを続けていくことを明言する。

そのひとつとして、海外展開も視野に入れているという。以前から同社の技術力の高さを評価していた海外メーカーから受注を受けることはあったが、もっと積極的に海外へ出ることを計画中だ。「日本の子どもたちだけでなく、世界の子どもたちがプラモデルの楽しさを知るきっかけになれば」と期待を寄せる。