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Highlighting JAPAN

宇宙で咲く「ひまわり」

日本の気象観測衛星「ひまわり」は、日本のみならず、東アジア、西太平洋地域の気象予報、防災に貢献している。

日本では初夏から秋にかけて、台風や大雨による災害がしばしば発生する。そうした被害を最小限に抑えるために、日本は様々な技術開発を進めてきた。その一つが衛星を使った気象観測である。1977年に日本初となる静止気象衛星「ひまわり」が打ち上げられ、翌1978年から運用が開始された。「ひまわり」の観測画像で、台風や雲の動きがはっきりと分かるようになり、気象予報の精度向上、防災に大きく貢献してきている。

その後も後継機による観測が続けられ、現在、8代目となる「ひまわり8号」が2015年7月から運用されている。さらに、そのバックアップとして2016年11月に打ち上げられた「ひまわり9号」も、今年3月から待機衛星としての運用が開始される予定である。

「ひまわり8号」と「ひまわり9号」の性能は、従来機を大幅に上回り、世界最高水準となっている。例えば、解像度が2倍向上し、画像がより鮮明となっている。さらに、カラー画像の作成が可能となった。これは、人が宇宙から地球を見た場合に近い画像で、火山の噴煙やアジア大陸から日本に運ばれる黄砂の監視にも活用できる。また、観測範囲となる東アジア、西太平洋一帯の撮影間隔も60分から10分へと大幅に短縮され、これにより、積乱雲の急速な発達も観測可能となった。

「ひまわり」の観測データの利用は日本だけにとどまらない。日本は初代の「ひまわり」から現在に至るまで、観測データをアジア、太平洋地域の30以上の国と地域にも提供している。

「衛星の打ち上げ、運用には膨大な費用を要するため、衛星を持つ国は限られています。日本が衛星を持たない国々にデータを提供するのは、国際的な責務です」と気象庁国際室の田中芳郎氏は言う。「東アジア、西太平洋一帯は台風やサイクロンが数多く発生する地域です。『ひまわり』はそうした国々の防災に貢献しています」

精度の高い気象情報を途上国にさらに広めるために、気象庁では「ひまわり8号」の運用開始とともに新たなシステム「ひまわりキャスト」を構築した。「ひまわり8号」と「ひまわり9号」のデータ配信は主としてクラウド経由で行われるが、データ量が非常に膨大となるため、インターネット環境の脆弱な国では活用が難しい。「ひまわりキャスト」は、そうした国々でもデータを利用しやすくするために、軽量化したデータを、通信衛星を介して送信し、パラボラアンテナで受信することを可能にしている。このシステムは、国際協力機構(JICA)と世界気象機関(WMO)の支援によって整備が進められている。計画中も含めると、現時点で「ひまわりキャスト」の導入支援を受ける国は20ヵ国に達する。

「画像解析ソフトの使い方を習得するにはトレーニングが必要です」と田中氏は言う。「今後、私たちは『ひまわりキャスト』を活用する全ての国を訪れ、関係者にそのノウハウを伝える予定です」

気象庁は国際協力の一環として、国際協力機構(JICA)の枠組みのもと、1973年から各国の気象予報官を毎年日本に招き、研修も実施している。約3ヵ月の研修期間を通して、観測・予測に対する幅広い知識や技術を伝えることが目的である。

「衛星画像の分析など、非常に高度な内容を教わっています」と、2016年9月からの研修に参加した研修員の一人である、サモアの天然資源環境省気象課のVaaua Wilson氏は語る。「サモアでは雨季の防災が課題です。日本で学んだことを活かして、もっと早く正確な警報を出せるようにしたいと強く思っています」

研修への参加者は2016年で計75ヵ国333名に達した。研修員の多くは帰国後、母国で気象業務の主導的な役割を担っている。

「データ処理の技術革新は日進月歩で進んでおり、予報の精度は今後もさらに向上していきます」と田中氏は言う「各国の防災に貢献できるよう、全力を上げて取り組んでいきます」