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Highlighting JAPAN

世界と日本をつなぐ

海外から日本に進出する企業への支援が活発化している。2015年に設立されたアンカースターもそうした企業の一つである。

経済産業省の調査によると、2015年3月時点で日本に進出している外資系企業の数は、3322社、前年比5.7%増と堅調な伸びを示している。

こうしたなか、日本への参入をめざす海外企業には、官民がさまざまな形でサポートを行っている。東京都港区にあるアンカースター株式会社も、そうした企業のひとつである。アンカースターは、おもに海外のベンチャー企業に対して、日本市場で成長するための、マーケットエントリー戦略や人材交流などに関する、幅広いコンサルティング業務を行っている。

創業者で代表取締役を務める児玉太郎氏は幼少時からロサンゼルスで育ち、現地の高校を卒業したあと日本に帰国した。1999年に、当時、従業員100名ほどのベンチャー企業だったヤフージャパンに就職し、ソーシャルネットワーク事業における企画部門の責任者として活躍した。その後、2010年にはフェイスブックジャパンの第一号社員として、成長戦略の総責任者に就任した。

「いまやヤフーもフェイスブックも知らぬ人などいない大企業ですが、私が入社した当時はまだ、どちらも規模が小さく、成長するかも分からないベンチャー企業でした」と児玉氏は言う。「特にフェイスブックは、実名で参加するソーシャルネットワークということもあり、実名をオープンにすることに消極的な日本社会には馴染まないだろうと考える人がほとんどでした」

フェイスブックのユーザーを増やすため、児玉氏は日本の大企業とのパートナーシップづくりに積極的に取り組んだ。実名によるSNSのメリットを生かすため、まず国内最大手の就職情報会社に就職活動のサポートツールとしてフェイスブックを採用してもらい、これにより多くの大学生をユーザーとして獲得することに成功した。さらには日本を代表する広告会社、衣料品メーカー、コンビニエンスストアなどとも連携し、さまざまなキャンペーンを展開していった。その結果、日本支社の設立からわずか4年半で国内ユーザーは2100万人にまで急増した。

「この時点でぼくの役割は一区切り付いたと思い、次に何をやろうかと考えました」と児玉氏は言う。「別の海外企業のカントリーマネージャーとして働くよりは、もっと多くのベンチャー企業が日本市場でチャンスを掴み、大きく成長することを支援したいと思ったのです」

児玉氏は2015年11月にアンカースターを設立し、外資系ベンチャー企業と日本企業のパートナーシップづくりを戦略の柱に据えている。

「どこの国でも大企業は、組織が硬直化しがちです。ところが、ベンチャー企業のもつ最先端の技術や発想、さまざまなイノベーションに触れることで大企業も今一度、生き生きとしていくのです」と児玉氏は言う。「これはぼくがヤフーやフェイスブックにいた頃から肌で感じていたことです。つまり、大企業とベンチャー企業が結ぶパートナーシップは、一方通行の支援ではなくウィンウィンの関係になっていくのです」

アンカースターが設けているラウンジスペースは、海外企業が日本で本格的に事業を立ち上げるまでの作業場として利用できるほか、さまざまな国の人々が気軽に情報交換を行える場所にもなっている。児玉氏は、自分の会社を映画「スターウォーズ」に登場する異星人たちの集まる酒場のような場所とイメージしている。見知らぬ国に錨(いかり・アンカー)を下ろした時は、まずは港の酒場に顔を出し、その土地柄を知り、情報を集め、そして、新たな友と出会う。アンカースターという社名には、そんな思いも込められている。

「今後、より多くの外国企業が日本市場に参入するのをサポートするだけでなく、日本の大企業がパートナーとして必要とするベンチャー企業を世界から探し出してくることにも力を入れていきたいです」と児玉氏は言う。