Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan March 2017 > なぜここに外国人

Highlighting JAPAN

銭湯大使

フランス出身のステファニー・コロインさんは東京から、銭湯文化の美しさを世界に発信している。

銭湯の起源は、6世紀、寺院に設えられた浴堂とされている。浴堂は僧侶が身を清めるための設備だが、沐浴が病を退けるという教えから寺院は病人や貧しい人びとにも湯を施した。それがやがて、料金を払って入る銭湯の原型となった。江戸時代(1603-1867)になると全国にたくさんの銭湯が建てられた。銭湯は今でも安価に利用でき、例えば、東京都浴場組合は12歳以上の入浴料を460円と定めている。

フランス出身で東京在住のステファニーさんは熱心な銭湯ジャーナリストとして知られる。銭湯文化に魅了された彼女は、これまでに全国のおよそ600軒もの銭湯に通っている。

「2008年に日本に留学に来ていたときにクラスメートに誘われて銭湯に行きました。当時はまだ日本語がよく話せなかったけれど、温かいお湯に浸かりながら常連さんと会話するのは楽しかったです。銭湯の優しい世界に感動しました」

フランスでさらに勉強した後、ステファニーさんは、2012年に再来日し美容関連の仕事に就いた。ステファニーさんは銭湯の楽しさを思い出し、毎週銭湯に通って仕事の疲れを癒すようになった。

ステファニーさんは、銭湯の魅力を世界中に広げるために、ウェブサイト「Dokodemo Sento」や、他のソーシャルメディアを直ぐに立ち上げた。銭湯の美しい写真を定期的にアップするインスタグラム(@_stephaniemelanie_)はフォロワーも多い。彼女によると、観光で来日し、銭湯に行く予定をたてている世界中の人から、メールが毎日のように届くという。

日本の銭湯文化の普及宣伝に努める日本銭湯文化協会は、ステファニーさんの発信力を買って、2015年にステファニーさんを初代の「銭湯大使」に任命した。ステファニーさんはそれ以来、銭湯専門家として本格的に、調査、撮影、執筆、講演活動、メディア出演を通じ、銭湯文化の普及に取り組んでいる。

ステファニーさんは、銭湯には大きく三つの魅力があると言う。

一つは健康と美容に効果があること。「銭湯は地下水を使用していて湯の質が良いため体の芯から温まります」と彼女は言う。「スキンケアの効果も上がります。心の健康にも良く、辛いことやストレスがあっても、銭湯を訪れた後は、気持ちがリフレッシュできます」

二つめの銭湯の魅力は、銭湯内の壁に大きく描かれた、美しくユニークなアートだ。その多くは富士山の絵である。他には、抽象的なデザインのモザイクのタイルなどがある。

「マジョリカタイルの内装で有名な京都の銭湯を訪れたときは思わず歓声を上げました」と彼女は言う。「素晴らしい壁画に加え、東京には神社やお寺に似せた宮造り建築の銭湯が残っています。今後も、これらを保存してほしいです」

そして三つめは銭湯が担うコミュニティの側面であると彼女は言う。「銭湯は町の中心にあり住民の社交の場でもあるのでその地域の情報が集まっています。私は地方へ旅行に行くと、銭湯に入って常連さんからその町のおいしい食事のお店を教えてもらったりします」

銭湯の楽しさやメリットを知ってもらうために、銭湯が展覧会やコンサートの会場として使われるときもある。また、タオルを使ったスタンプラリーも行われることもある。

ステファニーさんは、他のビジネスやアーティストとのコラボレーションは、今日の銭湯が進むべき重要な方向と考えている。

「地元の農家がオーガニック農法で栽培したレモンを湯船に浮かべるという素晴らしい事例を最近見ました」とステファニーさんは話す。「私は銭湯大使という立場を生かして、人と人を繋ぎながら、どんどん銭湯を盛り上げていきたいです」