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Highlighting JAPAN

新幹線の経済効果

全国に広がっている新幹線網は、地方経済に大きく貢献している。

1964年に東海道新幹線が東京〜大阪間で運行を開始して以来、日本の各都市を結ぶ新幹線の整備が全国規模で進められてきた。新幹線はきわめて重要な基盤インフラであり、日本経済の活性化に大きく貢献している。例えば、東海道新幹線の年間の利用者数は運行初年度では約1100万人だったが、10年後には1億人を突破。東京〜大阪間を日帰りで出張するビジネスマンが急増するなど、東海道新幹線は日本の高度経済成長を根底から支えた。

その後新幹線ネットワークは拡張を続け、1975年には山陽新幹線(新大阪〜博多)が全線開業し、1982年6月には東北新幹線が開業した。2011年3月には九州新幹線(鹿児島ルート)の博多駅〜鹿児島中央間が全線開業し、2015年3月には北陸新幹線の長野駅〜金沢駅間が開業。さらに2016年3月には北海道新幹線の新青森駅〜新函館北斗駅間が開業し、九州の鹿児島中央駅から北海道の新函館北斗駅までの2000km超が新幹線でつながった。

北陸新幹線が金沢まで延伸したことにより、東京〜金沢は最短で2時間30分で結ばれるようになった。長野駅から金沢方面への北陸新幹線の初年度の利用者数は926万人にのぼり、在来線特急時代の314万人から約3倍に増加。その経済波及効果は1年間で678億円に達したとも言われている。

「日本の9つのエリアのうち、北陸地方(富山県、石川県、福井県)は東海地方(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県)に次いで2番目に景気が良い地域とみています。1つ目の理由は北陸新幹線の開業効果、2つ目はスマホ用の電子部品・デバイスやジェネリック医薬品など、国内外の需要の高まりで生産を拡大している企業が北陸に集中しているからです」と日本銀行金沢支店の松尾宏展氏は語る。「新幹線が及ぼした影響はきわめて大きく、北陸新幹線が開業した2015年の観光客の増加率は、富山県15.6%、石川県15.8%、まだ新幹線がつながっていない福井県でも12.3%となり、各県とも過去最高水準を記録しました。2年目の伸び率は多少鈍化したものの、それでも以前よりは高い水準をキープしています。地元経済にとっては、今後もプラスの影響が持続すると我々は考えています」

北陸3県への外国人観光客も急増している。外国人観光客の延べ宿泊数は、2015年では前年比+41.9%の674,000人と大幅に増加し、2016年1月〜11月でも同+24.5%の785,000人に達した。2016年にJR西日本とJR東日本が訪日外国人向けに「北陸アーチパス」(首都圏・関西圏・北陸県の格安乗り放題乗車券)を発売したこともあり、外国人観光客は今後も増えていくと予想されている。

こうした流れを受け、北陸3県ではホテルの新設が急ピッチで進められている。特に金沢ではオンシーズンの収容能力がすでに限界に近づいているため、現在、複数のホテル建設が計画されており、金沢市内の客室数は現状比+2割増加すると言われている。温泉のある観光地では域外資本によって改築された旅館も誕生した。金沢の中心部で主に地元の生鮮食品を扱う近江町市場でも、新幹線開業以来、訪れる観光客が急増している。

「各種建設投資やM & A資金の流入を誘発するなど、今では新幹線開業の第二段階の経済効果が現れています」と松尾氏は語る。「北陸は、太平洋側よりも大規模災害の発生する確率が低い点がBCP(事業継続計画)のうえで注目されており、本社機能の一部や生産拠点を移転する動きがすでに起きています」。

北陸新幹線の金沢〜敦賀(福井県)間は2023年の開業が予定され、2046年をめどに最終的には大阪までつながることになる。

「東海道新幹線の代替として、北陸新幹線の重要性がさらに高まることは間違いありません」と松尾氏は言う。「北陸3県ともに主要駅周辺の再開発が進んでいますし、路線がやがて大阪まで延伸すれば、通勤圏が拡大して関西圏とのつながりがいっそう深くなります。具体的な波及効果まではまだわかりませんが、新幹線は北陸地域の成長のフロンティアであり、北陸のさらなる発展が期待されます」