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Highlighting JAPAN

阿蘇くじゅう:自然の力

現在、34ヶ所が指定されている日本の国立公園を紹介する新シリーズの第一回目として、九州の火山帯にある阿蘇くじゅう国立公園を訪ねた。

ドライブは、九州の中央に位置する広大な阿蘇くじゅう国立公園を単に楽しむのに最善の方法というわけではない。ここではドライビング自体が一つの楽しみになる。国立公園一帯の道はスムーズで曲りくねり渋滞することもなく、日本指折りの風光明媚な風景へと誘ってくれる。

阿蘇くじゅう国立公園は、活火山である阿蘇山と九重連山にちなんで名付けられているが、ここを訪れる者がまず感じるのは牧歌的な趣だ。熊本空港から車で5分で「ミルクロード」に入る。その道沿いのうねるような草原ではジャージー種や褐毛和種の牛がのどかに牧草を食んでいる。

ミルクロードは、阿蘇山の巨大なカルデラ外輪部の一部に沿って走る。阿蘇山のカルデラは世界最大級で、度重なる噴火によりマグマ溜まりが枯渇し地表が陥没しておよそ9万年前に形成された。活火山である阿蘇山の5つの峰はカルデラ盆地の中央に位置し、外輪山に沿って設けられた数々の展望地点から眺めることができる。

最も目を見張る光景の一つは、大昔には噴火口だった草千里ヶ浜越しに眺める噴煙を上げる中岳だ。2016年10月の爆発的噴火以降、火山活動のリスクが続いているため、中岳の火口湖で占められた火口は現在閉鎖中である。

それでも、この国立公園では様々な方法で火山活動を間近に体感することができる。例えば、小松地獄では、むき出しになった岩盤から熱水と泥がぶくぶくと吹き出す池があり、ずんぐりとした松の木々の間から硫黄の蒸気が立ち上っている。

小松地獄の「地獄模様」とは対照的に、タデ原湿原にはこの上なく神聖な自然と出会うことができる。1000年以上にもわたって毎年定期的に採草と野焼きが続けられてきたため、この地域特有の豊かで珍しい植生が維持されている。この湿原は、2005年にラムサール条約の国際的に重要な湿地に指定されている。長者原ビジターセンターを抜けて遊歩道を進めば、広大な湿地を越えて森林の小道を抜け、道はその先の山々へ続く。

この周辺一帯には、ウォーキングや山登りの素晴らしいコースが数多くある。6月なら、扇ヶ鼻に登る3時間のトレッキングが最もお勧めのコースである。この時期は、山の斜面や丘陵地帯が野生のミヤマキリシマの鮮やかなピンクの花々で覆われる。

白川水源は、毎分60トンの水が静かに湧きあがり自然のままの清冽な集水池となり、その水源はそのまま白川の最上流部となっている。この火山帯の景観にどっぷりと浸かりその楽しみを堪能するなら、温泉に勝るものはない。阿蘇くじゅう地域には、趣がある高級な黒川温泉から、ほのぼのとした雰囲気の古風な杖立温泉まで、温泉リゾートが数多くある。国立公園で一日たっぷりと過ごした最後に温泉に浸かれば、旅行者は疲れ果てていても、自然の素晴らしい多様性とその魅力を思い起こし感動に浸ることだろう。