Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan August 2017 > 日本のデザイン

Highlighting JAPAN

2020年に向け、分かりやすくなったピクトグラム

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人観光客の増加が見込まれる中、2017年7月20日、日本人だけでなく外国人観光客にとっても分かりやすくなるように案内用図記号に関するJISが改正された。

ピクトグラムは、言葉に依存せず見るだけで場所や施設などの案内を可能にする案内用図記号である。

その起源は諸説あるが、今日のように世界的に利用拡大が進むきっかけとなったのは1964年の東京オリンピックだったと言われている。日本人は外国語が得意ではないため、デザイナーの勝見勝氏らが中心となって、外国からのお客様の案内をピクトグラムの活用で解決しようと取り組んだものである。1987年には、NPO法人サインセンター現理事長の太田幸夫氏らによる非常口サインが国際規格(ISO)に採用された。この日本発のピクトグラムは世界中で広く認識されているピクトグラムの一つと言える。

国内外において、理解度や視認性の向上を図るために様々なピクトグラムが新たに考案され、また時代に合わせた改訂が行われている。しかし、日本では、JIS規格(Japanese Industrial Standards:工業標準化法に基づき制定される国家規格)とISO規格のピクトグラムが異なっている場合があり、外国人観光客が戸惑う可能性もある。例えば、飛行機の乗り継ぎ、手荷物受取所、ベビーケアルーム、駐車場や救護所などのピクトグラムだ。そうしたピクトグラムがISO規格に沿っていれば、言葉や国・地域の違いを問わず、誰でも分かりやすくなると考えられる。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、予想を上回るスピードで外国人観光客が増えている日本にとって、ピクトグラムのISO規格との整合は必要不可欠である。

こうした課題に対処するため、案内用図記号のJISを所管する経済産業省は、日本人・外国人を対象としたアンケート調査の結果などをふまえ、2017年7月20日にJISを改正し、7つの図記号を変更(図1)した。また、外国人観光客の利便性に資する15の図記号、ヘルプマーク(図2)を追加した。

ISOに切り替わるピクトグラムは、駐車場、手荷物受取所、救護所、乗り継ぎ(飛行機)、乳幼児用設備(ベビーケアルーム)の5つ。ISOへの切り替えには2年間の移行期間(2017年7月20日~2019年7月19日)が設けられている。温泉マークは従来のJISとISOの選択制となり、また後述の情報コーナーを表す「i」の定義が改められた。

経済産業省国際標準課の永田邦博さんは、「日本人にとってなじみのある温泉マークはISOとの選択制となり、設置者の判断で適切な方を使えることになりました。外国の方にはISOの方がわかりやすいようですが、日本の温泉文化を楽しんでもらうとともに、従来の温泉マーク(♨)も是非、覚えていただきたいと思います。今回、場所や施設などを示す図記号に加え、『概念』を示す『ヘルプマーク』を追加しています。これは人工関節を使用している方や妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からはわからない方が身につけることで、周囲の方に配慮を必要としているのを知らせることができるマークです」と改正のポイントを説明する。

また新たに追加された15の図記号(図2参照)では、コンビニエンスストアや、海外で発行されたカードに対応するATMなど、場所や施設の案内からさらに実際的な行動をサポートするピクトグラムが採用された。「これらの図記号についても、是非、知っていただき快適な日本の旅を楽しんでいただきたいと思います」と永田さんは語る。

特に外国人観光客にとって大きなサポートとなるのは情報コーナーや案内所を示すピクトグラムだ。改正前には、日本では情報コーナーを意味する「i」マークと係員が常駐する案内所を意味する「?」マークの二種類が存在し、前者は無人、後者は有人案内として使われていることが多かった。しかし、国際的には「i」が主流となっていることから、今回、無人でも有人でも「i」が使われるように改正された。日本で広く使われている「?」に変更はなく、係員が常駐し様々な問い合わせに対応する。

「この違いをご理解いただき、外国人観光客には『i』と一緒に、是非、『?』マークも知っていただきたいのです。とにかく、日本に来られたら真っ先に『?』か『i』のマークを探していただきたいと思います」と永田さんは強調する。