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Highlighting JAPAN

すべての人々の健康のために

1781年創業の医薬品会社は、創業の精神と親和性が高い持続可能な開発目標(SDGs)に、ごく自然に取り組んでいる。

武田薬品工業株式会社(以下タケダ)は、1781年の創業以来、「常に患者さんを中心に考える」ことを経営の原点とし、「健全な社会のサステナビリティなくして自社のサステナビリティはない」という考えに基づき優れた医薬品の創出に取り組んできた。そうした精神を一言で表すと「タケダイズム」(誠実:公正・正直・不屈)だ。同社は時代に一歩先んじて事業の国際化を進め、国際社会で、企業の社会的責任(CSR)や国連グローバル・コンパクト(UNGC)などの要請が高まった時も、タケダイズムをふまえ積極的に対応してきた。

タケダCSR部門長の圭室俊雄さんは「タケダイズムとSDGsは親和性が高いため、非常に理解しやすく事業に取り込みやすかったです。SDGsのもとでは、事業活動と企業市民活動を分けて考える必要もなくなりました。当社も当社のステークホルダーもSDGsの17の目標に方向性を合わせ、きちんと事業を行い、世界に貢献するという方向が共有されています」と語り、従業員は自然体でこれまでの取組を続けていけるという。

タケダが特に注力しているSDGsにおけるゴールは「目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」である。タケダは、これまでの様々な取組で、持続可能な社会の実現のためには「予防」が重要だと気がついたのである。企業市民活動である「グローバルCSRプログラム」では、国連機関や国際NGOなどをパートナーとして途上国や新興国の人々の健康を「予防」の観点から支援することを強化している。タケダはこのプログラムの支援パートナー候補の検討を重ねる際、国内外約30,000人の社員に投票を呼び掛けて最終的な支援先を決定している。

2016年は従業員投票によりアジアを中心に、国連財団の「“はしか”予防接種のグローバル展開プログラム」、ワールド・ビジョンの「地域ヘルスワーカーの能力強化を通じた母子保健プログラム」、そしてセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの「少数民族の母子を対象にした保健支援プログラム」を選定した。

2017年は従業員投票によって、ジョイセフの「アフリカの妊産婦と女性の命を守る~持続可能なコミュニティ主体の保健推進プログラム」、プラン・インターナショナル の「南スーダン・シリア難民を対象とした包括的保健プログラム」、そしてユニセフ(国連児童基金)の「“人生最初の1000日”への保健/栄養プログラム」を選定した。

世界には主に栄養不良のために、5歳までに命を失う子供たちが年間590万人いる。そのうちの45%が、生後1か月以内に亡くなっている。子供が胎内にいる時から2歳の誕生日までの「人生最初の1000日」の間に適切な栄養摂取とケアを受けられれば、病気にかかりにくく、命や成長が守られることが分かっている。こうした状況に対応するため、ユニセフはアフリカ3カ国のベナン、マダガスカル、ルワンダを対象に「人生最初の1000日」プログラムを展開している。

タケダは、ユニセフに対し、2017年から5年間、総額10億円を寄付し、延べ130万人の母子を支援する計画である。例えば、保健分野では保健員の育成や遠隔地での保健サービスを高めることで、5年間で約39.5万人の妊産婦と約32.3万人新生児をサポートする。栄養分野では、同じく約58.2万人の5歳未満児の栄養状態の改善や治療、栄養知識の普及を支える。

今年の投票には全従業員の約28%が参加した。タケダCSR企業市民活動・寄付担当部長の吹田博史さんは、選定結果について、「仕事を通じて、解決すべき対象が母子保健だという共有の認識が反映されたのだと思います」と語る。

グローバルCSRプログラムでタケダが次に重視しているのは、従業員の関心を「投票」から「現場」に向かわせ意識を高めることである。吹田さんは「特に若い従業員に対して、『スキル』と『知識』は勉強すればいい。『意識』を高めるために企業市民として現場に行こうと呼び掛けています」と言う。

タケダの代表取締役社長CEOクリストフ・ウェバーさんは、常に患者さんを中心に考え(Patient)、社会との信頼関係を築き(Trust)、レピュテーションを向上させ(Reputation)、事業を発展させる(Business)という考え方で行動することが大切と明言しているといい、圭室さんは「タケダとしては、行動あるのみ。CSRという言葉が社内に浸透し、最終的になくなることが目標です」と語る。

同社はSDGsの目標3.を確かなものにするため、17の目標全てに取組んでいる。