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Highlighting JAPAN

市民の力をSDGsへ

日本の市民社会において、「持続可能な開発目標」(SDGs) 達成に向けた活動が始まっている。

日本では数多くのNPO・NGOが国内外で、国際協力、福祉、環境、教育など様々な分野の課題解決に取り組んでいる。こうしたNPO・NGOの間で、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030アジェンダ)に応じて、SDGs実現に向けた動きが広がっている。

例えば、NPO法人「ACE」 (Action against Child Exploitation)は、SDGsで掲げられている「2025年までに全ての形態の児童労働をなくす」というターゲットの達成を目指し、ガーナのカカオ生産地やインドのコットン生産地で、危険で有害な児童労働から子どもを保護し、就学を支援するプロジェクトを実施している。

また、障害者本人(当事者)の集まりであるNPO法人「DPI日本会議」(DPI:Disabled Peoples’ International)は、障害者の教育や雇用への平等なアクセスの実現を目指して国内外で取り組みを展開しており、国際的には、アフリカでの障害者の自立生活運動の推進、障害者リーダーの育成などの活動を行なっている。

こうした日本のNGO・NPOの活動を後押ししているのが、2016年4月に発足した「一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク」(SDGsジャパン) である。SDGsジャパンは、現在、開発、保健医療、防災、環境などの分野の課題に取り組む、約100のNPO・NGOがメンバーとなっている。

「SDGsジャパンは、それぞれの分野で長年活動してきたNPO・NGOが、SDGsの実現という目的で集まった市民社会のネットワークで、NPO・NGO同士の連携や、政府・企業などとの協力関係を強化する『触媒』としての役割を担っています」とSDGsジャパン代表理事の稲場雅紀さんは言う。

SDGsジャパンの活動の一つは、政策提言であり、政府が設置した「SDGs推進円卓会議」を活動の場の一つとしている。円卓会議は、安倍晋三首相を本部長とし、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部の下に設置されている。円卓会議は、各省庁、NPO・NGO、国際機関、大学などの関係者で構成され、SDGsに関する意見交換を行う場となっている。円卓会議での議論を踏まえ、2016年12月にSDGs推進本部は「SDGs実施指針」を決定した。指針は、「持続可能で強靭、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことをビジョンとして、日本のSDGs達成に向けた原則、優先課題、実施体制を定めている。

「指針の策定プロセスに参加することで、私たちの意見を指針に反映させることができました。SDGs達成のためには、NPO・NGOがより活動しやすい環境を作ることが必要です。そのために、政策提言は重要なのです」と稲場さんは言う。

SDGsジャパンは国際的な活動にも力を入れている。今年7月には2030アジェンダのフォローアップとして、各国の政府、NPO・NGO、民間企業などのステークホルダーが集まりニューヨークで開催された「持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム」(HLPF)に参加している。HLPF でSDGsジャパンはサイドイベントとして、アフリカのNGOと共同で「SDGsと『アジェンダ2063』の達成のためのアフリカと東アジアの協力の在り方:TICADの教訓から」と題したシンポジウムを開催している。シンポジウムでは、日本政府が主導するアフリカ開発会議(TICAD)や日本・アフリカの市民社会がどのようにSDGsやAgenda 2063*に貢献できるかなどをテーマにスピーチや議論が行われた。

日本国内においても、SDGsジャパンは様々なイベントの開催、講師の派遣などの活動を通じて、SDGsの広報に取り組んでいる。今年1月には、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンら日本のNGO8団体と共同して、インターネットで自由にダウンロードができる子ども・若者向けのハンドブック『私たちが目指す世界 子どものための「持続可能な開発目標」』日本語版を作成した。

「持続可能な社会は市民の力があって初めて実現できます。今後は特に、日本の地域のNPOと協力して、一般の人々のSDGsへの理解をさらに深めていきたいです」と稲場さんは言う。

2019年には第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)やG20など大規模な国際会議が日本で開催される。この2019年をターゲットに、SDGsジャパンはさらに様々な活動に取り組むこととしている。 


*アフリカ連合(AU)の前身であるOAU(アフリカ統一機構:1963年設立)設立50年に際し策定が決定された,今後50年を見据えたアフリカの統合と開発に関する大綱。2015年1月のAU総会で採択された。貧困削減,教育改革,イノベーションの推進,経済改革,農業の近代化等幅広い分野における取組が規定されている。