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Highlighting JAPAN

日本発のアジア向け製剤処方

フランス有数の製薬と皮膚科学化粧品メーカー、ピエール ファーブル社は、2014年に日本でアジア イノベーション センター PFDCを開設し、昨年の5月に製剤活動を開始した。日本における投資について、同センターのディレクターであるジャンバティスト グリュー氏に話を聞いた。

ピエール ファーブル社は、1986年に株式会社資生堂との合弁会社として株式会社ピエール ファーブル ジャポン(以下、PFJ)を設立して以来、日本に進出して30年以上になる。PFJの当初の目的は、フランスのアベンヌ温泉水を使用したスキンケア製品シリーズ「Eau Thermale Avène」を日本市場に導入することだった。この製品はアベンヌというブランド名で販売され、このシリーズによってピエール ファーブル グループの名は今日の日本でよく知られている。

2002年、ピエール ファーブル社は日本で2番目となる企業、ピエール ファーブル デルモ・コスメティック ジャポン(以下、PFDCJ)を設立した。この100%子会社は、ヘアケアを専門とするルネ フルトレールの日本国内での活動を管理し、乳児血管腫の治療に用いられる医薬品ヘマンジオル®の販売も支援している。ヘマンジオル®はピエール ファーブル デルマトロジーが製造しており、皮膚科学に特化した製薬会社であるマルホ株式会社と業務提携のもとで日本国内に販売されている。

2014年4月、PFDCJは、ピエール ファーブル社のフランス国外初の研究開発拠点となるアジア イノベーション センターPFDCを開設した。

同センターのディレクタージャンバティスト グリュー氏は、次のように述べている。

「アジア イノベーション センターPFDCは、PFDCの国際化を加速させたいという我々の熱望の結晶です。アジア太平洋地域は活力に満ち、変化に富み、革新的で、そして先進的です。アジア太平洋地域の化粧品市場およびデルモコスメティック(皮膚科学に基づく研究により開発された機能性化粧品)市場は相当大きく、それぞれ世界市場の32%と19%を占めています。顧客基盤は洗練されており、要求も厳しく知識が豊富です。肌の手入れ時間は短縮傾向にあるものの、7~9つの製品を朝晩に使用するという包括的な手入れを日々行い、一人当たりの化粧品への支出額はアジア太平洋地域が世界で最も高いのです」

アジア イノベーション センターPFDC の研究室では、グリュー氏を含めた開発者達が、ピエール ファーブル社傘下のアベンヌ、ルネ フルトレール、クロラーヌ、他のシリーズの新製品を開発している。同センターは東京の立地を生かし、月に最低1~2回、子会社がある台湾、韓国、中国へ出張し、アジア市場を注意深く見守っている。

「アジア諸国は全て、それぞれの特徴があります。日本市場で重要なのは、品質の高さです。韓国はより流行を追いかける傾向にあり、消費者の要求に敏感です。中国は、かつてはヨーロッパの影響を強く受けていましたが、今や韓国と日本のトレンドに断然多くの影響を受けています」とグリュー 氏は話す。

近年の韓国化粧品市場における革新は、現地企業が開発したBBクリームが代表的な例である。これは、オールインワンの保湿ファンデーションで、世界的に成功を収めた。ピエール ファーブル社はスキンケアとヘアケアに焦点を当てており、メイクアップ市場への関与はごくわずかだが、それでも活気のある韓国市場は同社にとって明らかに興味を引く市場である。2016年にアジア イノベーション センターPFDCが開発したオールインワン保湿ジェルのアベンヌ(ミルキージェル)は、日本以外の市場で生まれたトレンドに対する一つの答えかもしれない。

「肌の質感(の研究)とマーケティングの観点では、日本より韓国の方が進んでいる分野もありますが、日本もかつてはこれらの分野において非常に革新的で、それゆえ弊社は日本にアジアの研究開発拠点を設立することにしました。技術水準は依然として非常に高く、化粧品科学処方に関する知見は深いです」とグリュー氏は語る。

研究開発拠点を日本に設立した2つ目の理由は、地域市場の特性である。美容市場に占めるスキンケアの割合は世界平均が3分の1なのに対し、アジア太平洋地域では一般的に約2分の1となっている。当然ながら、日々どんな手入れがされているのかは国によって違う。例えば、南アジアではヘアケア部門が中心となっているが、ピエール ファーブル社はこれら両方の部門でも高い業績を挙げている。

「弊社の子会社と販売業者が共同して生み出す相乗効果が重要です。これはアベンヌの製品カタログを見ればはっきり分かることですが、売上高の約20%はアジアが占めています。この処方は元々日本のために開発したものですが、今や幅広いアジアの顧客の期待に応えています。この相乗効果は製品に限ったことではなく、経営面においても同様で、全地域を通し全ての協力者間でベストプラクティスを共有しています」とグリュー氏は言う。

デルモコスメティックというコンセプトは、実際ピエール ファーブル社が考案したものであり、同社は従来からそれに重点を置いてきた。同社の創業者であり薬剤師のピエール ファーブルは、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に使用できる安全なスキンケア製品と治療薬を考案したいと考え、1968年に同社初の研究施設を開設した。1975年、ファーブルは明確なビジョンを持って南仏にあるアベンヌの泉源を購入し、同社の製剤にその水を用い始めた。この温泉水は、クリームやローションなしで皮膚に直接塗布した場合でも、肌を鎮静化し、柔らかくする性質を持っている。同社は1986年に日本で温泉水ミストスプレーを販売し始めてから、今でもこのスプレーは日本人女性の間で大変人気となっている。

ピエール ファーブル社は1990年にアベンヌという商品名でこの温泉水をベースにした製品の販売を開始し、今や、創傷治癒、保湿、アンチエイジング、ホワイトニング、日焼け止めなど、多岐にわたって応用した製品を販売している。ピエール ファーブル社の製品ラインのアベンヌや他のブランドは、継続的な製剤と改良を通じ、アジア イノベーション センターPFDCを起点として、この先何年もアジアの人々の髪や肌をケアしていくだろう。