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Highlighting JAPAN

乾杯!

2015年12月15日、日本のオリックス株式会社とフランスの空港運営会社ヴァンシ・エアポートを中核とするコンソーシアムは、関西国際空港と大阪国際空港の運営に関して新関西国際空港株式会社との間で44年間のコンセッション契約を締結した。今回の投資に関し、2016年4月より両空港の運営会社として事業を開始した関西エアポート株式会社の代表取締役副社長Co-CEOであるエマヌエル・ムノント氏に話を聞いた。

関西エアポートの運営において、金融サービスを中心とするオリックス株式会社とヴァンシ・エアポートの相性が良い理由は何ですか?

コンセッションビジネス※1は、非常に長期間の関与と責任を必要とします。今回の場合は44年です。両社は、関西エアポートの戦略の面で非常に相性がよく、あらゆる形のリスクを共有できます。例えば、オリックスは元々関西の企業であり、この地域に強い地盤を築いていることは重要です。オリックスは、他の現地企業をコンソーシアムへ参加させるアイデアを提起しました。現在の出資割合は、オリックス40%、ヴァンシ・エアポート40%、残り20%は、パナソニック株式会社、サントリーホールディングス株式会社、株式会社アシックス、関西電力株式会社などの有名企業を含む関西地域の30社が分担しています。これは非常に重要です。地域の関与なしに空港の発展はあり得ず、空港の強力なイニシアチブなしには地域経済の大きな発展はあり得ないからです。また、ヴァンシ・エアポート はフランスで13空港、ポルトガルで10空港、カンボジアで3空港、チリで1空港、日本で2空港、ドミニカ共和国で6空港の合計35空港の開発及び運営を行う、国際的な空港運営会社です。弊社は、観光業界の発展を推進する知識と経験を有しています。

ヴァンシ・エアポートにとって、関西エアポートのコンセッション契約の魅力は何ですか?

ヴァンシ・エアポートは、新規プロジェクトや既存のインフラへの投資、建築、運営する能力に長けているため、コンセッション分野において類のないポジションを占めています。日本は、政治的・経済的に非常に安定しており、観光産業を発展させる長期的な目標を掲げています。これが日本における新たなコンセッションの機会を、弊社にとって非常に興味深いものにしています。というのも、将来、インフラの需要拡大が見込まれるためです。

関西エアポートにおける最初のステップとは何ですか?

1つの重要な要素として、利用客を増やすためのネットワークの拡大があります。例えば、今年末、カンタス航空は、10年ぶりに関西国際空港・シドニー間の直行便を復活させます。カンタス航空の説得にあたっては、関西経済連合会の代表や地方自治体の首長を含めた地域全体が関与しました。例えば、ビジネス事例を構築し直行便を復活するために、京都市長が弊社と一緒にオーストラリアを訪問しました。関西地域と関西エアポートは、韓国、中国、台湾及び香港から既に多くの観光客を迎えています。これらの就航ルートは非常に重要であり、中国には30カ所以上に直行便を就航させています。しかし、新しい路線を誘致するためには、空港の運営、航空会社、乗客及び空港周辺の社会全体を巻き込んだ相乗効果を新たに生み出す必要があります。

どのようなベストプラクティスを導入しましたか?

第2ターミナルでは、日本の空港で初めてとなる“ウォークスルー型”免税店を導入しました。また、特に保安検査における待ち時間を短縮するために「スマート・レーン」を導入し乗客の流れを良くしました。日本では、保安検査は航空会社の責任となっていましたが、弊社は、新システムの導入と保安検査員の研修の両方において責任の一部を引き継いでいます。大阪国際空港においても乗客にとってシームレスな空の旅を提供するために取り組んでいます。大阪国際空港は、乗客の獲得をめぐり新幹線と競合しています。乗客が保安検査で30分以上待たされれば、移動時間の短縮という空の旅の大きな利点が失われてしまいます。

これほど多くの従業員のやる気を起こさせ、仕事に積極的に関わってもらうために、どのようなことを行っていますか?

関西エアポートは、約3,800名の従業員を雇用しています。一般的に仕事が下請に出されている他の国々と異なり、弊社は、小売、免税、保安、IT、清掃、貨物等々に直接従事するグループ会社を擁しています。重要な課題の1つは、これらの人々全員に働きかけ、新たなビジョンを提供することです。そのために、新たなロゴの作成及びブランド大使の任命を含め、関西エアポートの新たなブランドを生み出しました。弊社は「新しい旅の体験」を創造し続けるというスローガンの下、1つの空港、1つの会社、1つのグループのコンセプトを推進しています。従業員とマネージャーには、価格付け、空港の組織、場所の感覚などに関して考え、新しいアイデアを出すように促しています。これに関して、50~60人が関与し、斬新なアイデアを経営陣と共有し、一部は既に導入されています。最も重要なことは、このイニシアチブにより、通常の組織構造外にコミュニケーションの繋がりが生まれたことです。

空港及び地域のインフラの拡大に関する短期的または中期的な見通しをお聞かせください。

日本政府は、観光客の数を2020年までに4000万人、2030年までに6000万人に増やすという具体的な目標を設定しています。弊社は、この目標達成を支える準備を進めており、このような多くの観光客を迎えるためにどのように自社資産を変更していくべきかを検討しています。例えば、乗客ターミナルの改善や空港に繋がる「なにわ筋線」などの新たなインフラへの対応する準備が含まれます。来年4月、弊社は神戸空港の運営を開始予定であり、もう1つの仕事は、これら3つの主要な地域空港を1つの空港システムとして統合することです。地域の繋がりは非常に重要です。例えば、大阪には2025年の万博誘致の成功を想定した統合リゾート開発計画があります。

フランスの会社として日本のビジネス環境になじむのは難しかったですか?

今回は日本の空港にとって、運営を公的機関から民間企業へ移転し、日本と外国の経営文化を調和させる初めてのケースです。確かに、言語の違いなどの課題はあります。私は、できる限り英語を話すように促しています。日本は、旅行先として、フィリピン、中国、韓国、オーストラリアなどの国々と競合しています。観光業の発展に携わるすべての利害関係者が国際的な視点を持つことが大切です。この点において、空港を海外の投資家へ開放したことは日本政府の素晴らしいイニシアチブだと思います。

(注)
1 公共施設などを運営する権利「公共施設等運営権」を民間企業が行政から買い取り、その施設運営に伴う利用料金等により収入を得るビジネス