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Highlighting JAPAN

伝説の地:大山隠岐

鳥取、島根、岡山の三県にまたがる大山隠岐国立公園は、神話が息づく出雲を始め、魅力的な自然景観に富んでいる。

大山隠岐国立公園は、大山から蒜山高原に至る山岳地帯、島根半島の海岸部分、三瓶山一帯、隠岐諸島から成る変化に富んだ景観を持つ国立公園である。

山地部は、壮観な火山地形、豊かな森林、広大な草原などの多様な地形の要素で構成され、場所によって個性豊かな山岳景観と、それぞれの環境に適応した多様な動植物を見ることができる。例えば、隠岐諸島の日本最大級の海中林(海草藻場)や大山の風衝低木地帯のダイセンキャラボクなどである。

海岸・島しょは、複雑な要因が組み合わさって形成された多彩な海岸景観が大きな特徴である。隠岐島、島根半島はともに国引き神話をはじめとした日本神話の舞台となっている。特に島根半島は、古代出雲文化の中心部でもあり出雲大社など神話にまつわる史跡・名所が数多く点在している。

この国立公園で最も人気のあるスポットの一つは、日本海に面する島根県の出雲大社である。毎年、陰暦の10月には、日本列島のすべての神々が出雲に集まると言われる。旧暦10月は「神無月」と呼ばれ、文字通り神のいない月で、出雲以外の土地では神々が留守になる。神々とは、各地の人々が信仰する土地や山や川や森や樹や岩といった自然物に宿る自然神(精霊)で、出雲に集まり、日頃自分たちを信仰してくれる未婚の男女の結婚相手を相談して決めるのだという。こうした言い伝えから、出雲大社は“縁結び”の神社として名高く、全国各地から参拝者が絶えない。

出雲大社は伊勢神宮に次いで古い由緒を誇るが、その創建には諸説ある。出雲大社が現在の規模になったのは1248年の改修で、現在本殿は1744年に再建されたと言われている。

そして、出雲大社の今日的シンボルは、1981年に再建されて以来神楽殿を飾る大しめ縄だろう。このしめ縄は日本にある約81,000の神社の中でも最大級で、長さ約13メートル、重量は約4.5トンにもなる。数年に一度、大しめ縄は、島根県飯南町のおおしめなわ創作館の職人により制作・掛け替えが行われており、次は2018年7月に7度目の掛け替えが行われる予定である。

大山隠岐国立公園のもう一つの人気スポットは鳥取県にある標高1,729メートルの成層火山、大山である。大山は中国地方最高峰であり、見る方角によって異なった姿を見せる。田園が広がる西側からは優美で女性的な姿を見せるが、北側や南側から見る姿は、一転、荒々しい男性的な山容を見せる。特に、標高800メートルの鍵掛峠から眺める大山の南壁は絶景と言われている。猛々しく切り立つ白い壁に向かって、春には新緑、秋には紅葉が絨毯のように広がり、ひときわ美しい。

大山は古来より、神の山としてあがめられてきた霊峰で、史跡や神社・寺院が残されている。大山の魅力は、美しい姿だけではなく、春の新緑、夏の登山、秋の紅葉、そして冬のスキーといった行楽にもある。

また、出雲大社や大山に負けない人気スポットは、出雲信仰と関係の深い、島根半島の西端にある日御碕や、国立公園から続く汽水湖で、島根県の出雲市と松江市にまたがる宍道湖である。日御碕の周囲一帯は複雑な隆起海岸で、迫力のある海岸線に建つ日御碕灯台は訪れる者たちを魅了する。

この半島から高速フェリーに乗って一時間余りの隠岐島もまた、長い年月をかけて形成された起伏に富んだ海岸線で多様な景観を成している。特に島の北西に突き出した縦に細長い姿の奇岩は、夕陽がその頂に重なると火を点したローソクのように見えることから、「ローソク島」と名付けられ、人気を集めている。

羽田空港から米子鬼太郎空港や出雲縁結び空港へ飛び、大山隠岐国立公園の旅の拠点となる出雲や松江へと電車やバスを乗り継ぐ、田園を縫う旅路そのものもまた楽しみである。