発達障害って、なんだろう?

シェアする
様々な発達障害の子供の例。授業中、教室でほかの子供たちが先生のほうを向いている中、一人だけきょろきょろしている男の子。教科書とノートを机に広げ、鉛筆を置いたまま、モジモジしている男の子。

発達障害は、広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、脳機能の発達に関係する障害です。発達障害のある人は、他人との関係づくりやコミュニケーションなどがとても苦手ですが、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害です。発達障害の人たちが個々の能力を伸ばし、社会の中で自立していくためには、子供のうちからの「気づき」と「適切なサポート」、そして、発達障害に対する私たち一人一人の理解が必要です。

動画

発達障害ってなんだろう?その子の特性が個性だと理解される社会へ
(3分39秒)

発達障害は脳の働きの違いによるもので、決して「本人の努力が足りない」とか、「親のしつけに問題がある」というものではありません。一人ひとりの特性に応じた理解や支援により、その「違い」は「障害」ではなく「個性」へと変化していきます。 自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など主な特性ごとに分け、説明しています。
ナレーション:貫地谷しほり

1「発達障害」とはどんな障害?

発達障害は、脳機能の発達が関係する障害です。

発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。その原因が、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものだと周囲の人が理解すれば、接しかたも変わってくるのではないでしょうか。

ここでは、発達障害のある人を理解するために、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、主な発達障害の特徴を紹介します。なお、発達障害は、複数の障害が重なって現われることもありますし、障害の程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状は違ってきます。発達障害は多様であることをご理解ください。

「広汎性発達障害」「注意欠陥多動性障害(AD/HD)、」「学習障害(LD)」のそれぞれの特性を表す図。

2主な「発達障害」の特徴は?

広汎性発達障害

コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称です。自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含みます。

自閉症

自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障害です。最近では、自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。

縄跳びをしている子供たちと離れて、一人で砂遊びをしている女の子。

【Aちゃんの例】
自閉症のAちゃんは、急に予定が変わったり、初めての場所に行ったりすると不安になり、動けなくなることがよくあります。そんなとき、周りの人が促すと、余計に不安が高まって突然大きな声を出してしまうことがあります。周りの人から、「どうしてそんなに不安になるのか分からないので、何をしてあげたらよいか分からない」と言われてしまいます。でも、よく知っている場所では、一生懸命、活動に取り組むことができます。

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれる一つのタイプで、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、興味・関心のかたより」があります。自閉症のように、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることが分かりにくいのですが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。

電車のおもちゃをもって、電車について熱心に他の子供に話す男の子。話を聞いている子供は、少し困った顔をしている。

【Bくんの例
アスペルガー症候群のB君は、友だちと話しているときに、自分のことばかり話してしまって、相手の人にはっきりと「もう終わりにしてください」と言われないと、止まらないことがよくあります。周りの人から「相手の気持ちが分からない自分勝手でわがままな子」と言われてしまいます。でも、大好きな電車のことになると専門家顔負けの知識をもっていて、友だちに感心されます。

注意欠陥多動性障害(AD/HD)

注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴する発達障害です。

授業中、教室でみんなが先生と黒板のほうを向いている中で、一人だけきょろきょろしている男の子。

【Cさんの例】
AD/HDのCさんは大事な仕事の予定を忘れたり、大切な書類を置き忘れたりすることがよくあります。周囲の人にはあきれられ、「何回言っても忘れてしまう人」と言われてしまいます。でも、気配り名人で、困っている人がいればだれよりも早く気づいて手助けすることができます。

学習障害(LD)

学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著しい困難を示すさまざまな状態をいいます。

教科書とノートを机に広げ、鉛筆を置いたまま、モジモジしている男の子。

【Dさんの例】
学習障害のDさんは、会議で大事なことを忘れまいとメモをとりますが、本当はメモをとることが苦手なので、書くことに必死になりすぎて、会議の内容が分からなくなることがあります。後で、会議の内容を周りの人に聞くので、「もっと要領よくメモをとればいいのに」と言われてしまいます。でも、苦手なことを少しでも楽にできるように、ボイスレコーダーを使いこなしたりと、ほかの方法を取り入れる工夫をすることができます。

トゥレット症候群

トゥレット症候群(TS:Tourette's Syndrome)は、多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり続く重症なチック障害で、このような運動や発声を、本人はそうするつもりがないのに行ってしまうのが特徴です。

【Eさんの例】
Eさんは授業中、自分の意思に反して突然大きな声をあげたり、首を何度も振る動作をしたりしてしまいます。そのため学校の友達には「落ち着きがなく迷惑なクラスメート」と言われてしまいます。こういった症状が出てしまうことが、障害によるものであることを、みんなに理解してもらいたいと思っています。

吃音(症)

吃音(Stuttering)とは、音の繰り返し、ひき伸ばし、言葉を出せずに間があいてしまうなど、一般に「どもる」と言われる話し方の障害です。幼児・児童期に出始めるタイプ(発達性吃音)がほとんどで、大半は自然に症状が消失したり軽くなったりします。しかし、青年・成人期まで持続したり、青年期から目立つようになる人や、自分の名前が言えなかったり、電話で話せなくて悩む人もいます。

【Fくんの例】
Fくんは会話をしていると、「きききききのう・・・」と単語の一部を何度も繰り返したり、つっかえてすぐに返事ができなかったりするので、友人から笑われます。「ゆっくり話しなさい」と言われて、そうしようとするとますます話せなくなります。これが障害によるものであることを、みんなに理解してもらえるといいなとは思いますが、恥ずかしいので言えません。

3発達障害に早く気づくポイントは?

社会で生きていくためには、社会性やコミュニケーションが必要となります。発達障害のある子供は、それが苦手なため、幼稚園や小学校などの集団に入ると、様々な問題や困難に直面することになります。障害が理解され、適切なサポートがされないと、学校に行くことがストレスとなり、不登校や引きこもりなどの二次障害につながる場合もあります。

発達障害のある子供が、社会に適応する力を身につけながら、自分らしく成長できるようにするためには、発達障害に早く気づき、適切な療育(※)につながることが重要です。ここでは、発達障害に気づくためのポイントを紹介します。

※療育=医療や訓練、教育、福祉などを通じて、障害があっても社会に適応し自立できるように育成すること。

人との関わり方 一人遊びが多い、一方的でやりとりがしにくい
おとなしすぎる、常に受動的
大人や年上の子、あるいは年下の子とは遊べるが、同級生とは遊べない
コミュニケーション 話は上手で難しいことを知っているが、一方的に話すことが多い
おしゃべりだが、保育士や指導員の指示が伝わりにくい
話を聞かなければならない場面で席を離れてしまうことが多い、聞いていない
イマジネーション・想像性 相手にとって失礼なことや相手が傷つくことをいってしまう
友だちがふざけてやっていることを取り違えて、いじめられたと思ってしまう
集団で何かしている時にボーッとしていたり、ふらふらと歩いていたりする
急な予定変更時に不安や混乱した様子がみられる
注意・集中 一つのことに没頭すると話しかけても聞いていない
落ち着きがない、集中力がない、いつもぼんやりとしている
忘れ物が多い、毎日のことなのに支度や片づけができない
感覚 ざわざわした音に敏感で耳をふさぐ、雷や大きな音が苦手
靴下をいつも脱いでしまう、同じ洋服でないとダメ、手をつなぎたがらない
極端な偏食
揺れている所を極端に怖がる、すき間など狭い空間を好む
運動 身体がクニャクニャとしていることが多い、床に寝転がることが多い
極端に不器用、絵やひらがなを書く時に筆圧が弱い、食べこぼしが多い
運動の調整が苦手で乱暴に思われてしまう、大きすぎる声を出すことが多い
学習 話が流暢で頭の回転が速いことに比べて、作業が極端に遅い
難しい漢字を読むことができる一方で、簡単なひらがなが書けない
図鑑や本を好んで読むが、作文を書くことは苦手
情緒・感情 極端な怖がり
ささいなことでも注意されるとかっとなりやすい、思い通りにならないとパニックになる
一度感情が高まると、なかなか興奮がおさまらない

4気になる行動・反応に気づいたら?

発達障害がある場合、早めに障害に気づき、適切な療育につなぐことで、社会に適応する能力を身につけ、様々な能力を伸ばしていくことができます。もし、「うちの子は発達障害なのだろうか」など、気になることがあるときは、お住まいの市町村の窓口や「発達障害者支援センター」にご相談ください。発達障害者支援センターでは、発達障害者の日常生活についての相談支援などを行っているほか、医療、保健、福祉、教育、労働等の各関係機関と連携を図りながら、障害の特性とライフステージに合わせた支援を提供しています。

そのほか、「発達障害情報・支援センター」「発達障害教育情報センター」でも、発達障害のある人やその家族、支援者のための、様々な情報を提供しています。

(左)ニワトリが描かれた絵を見せながら、子供たちに話をしている女性(保育士)。5人の子供たちが床に座って話を聞いている。(右)リンゴとトマトの絵を見せながら、子供と話をしている男性(保育士)。

発達障害者支援センター

発達障害がある子供(人)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。都道府県・指定都市(または、都道府県知事等が指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人など)が運営しています。発達障害のある子供(人)とその家族が豊かな地域生活を送れるように、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構築しながら、様々な相談に応じています。

発達障害情報・支援センター

発達障害情報・支援センターは、発達障害に関する調査・研究、国内外の研究成果等の情報収集・分析、本人や家族、全国の発達障害者の支援機関及び一般国民に対して、発達障害に関する正確で信頼できる情報を発信・啓発を行う機関です。また、国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育情報センターと情報共有・情報交換することで、各ライフステージに対応した情報を提供しています。

発達障害教育推進センター

発達障害教育推進センターは、発達障害にかかわる教員及びおよび保護者をはじめとする関係者への支援を図り、広く国民の理解を得るために情報提供や理解啓発、調査研究活動を行う機関です。発達障害のある子供の特性に応じた、教育的支援に関する研究や、文献、研究会など、発達障害に関する教育について様々な情報を提供しています。

5発達障害の人に接するときの配慮は?

発達障害があるといっても、障害の種類や程度によっても違いますし、年齢や性格などによっても、一人一人、現れかたは違います。生活の中で困難なこと、苦手なことも一人一人違います。そのため、一人一人の特徴に応じて配慮したり、支援したりしていくことが重要です。ここでは、家族や学校、職場など身近な場所で、発達障害のある人と接するかたはもちろん、それ以外のかたにも、発達障害がある人に対して配慮していただきたい基本的なポイントをいくつかご紹介します。

パジャマのボタンを自分で留めている男の子。男の子に向かって手をたたいて褒めている女性。

できたことをほめる/できないことを叱らない

発達障害のある人は、ほかの人が簡単にできることでも、うまくできないことがあります。本人ができないことや失敗したことを責めたり、叱ったりすると、本人が「自分はだめだ」と落ち込んでしまったり、他の人や社会のせいにして批判的・攻撃的・反社会的行動傾向が強まったりしてしまいます。注意をする場合は、努力している点やうまく行っている点をほめたうえで、できなかったところは、どのようにすればもっとよくなるかを肯定的、具体的に伝えましょう。

壁に貼った予定表を指し示しながら、今日の行動予定を女の子に説明している女性。

視覚的な情報を提示して説明する

発達障害の人のなかでも、自閉症などの広汎性発達障害(こうはんせい)の特性をもっている人の多くは、言葉で言われるよりも、目で見て分かる情報のほうが理解しやすいといわれています。その人が理解している言葉を使い、写真や絵などを添えて説明してあげると、理解しやすくなります。

説明や指示は短い文で、順を追って、具体的に

発達障害の子供(人)はあいまいな表現を理解するのが苦手です。言葉で説明するときは、短い文で、一つずつ順を追って、具体的にすることなどを配慮しましょう。話を理解しやすくなり、見通しがもてるようになります。

安心できる環境を整える

自閉症の人たちの中には、人混みや大きな音、光などの刺激を苦手とする人が多くいます。そのような刺激による不快感を大きくしないよう、安心できる環境をつくってあげましょう。

善悪やルールをはっきりと教える

発達障害のある人は、暗黙の了解や社会のルールが分からないことがあります。いけないことや迷惑なことははっきり教えましょう。注意したり、叱ったりするだけでは、どうしたらよいのか分からないので、具体的にどのようにしたらよいかを教えましょう。

発達障害の子供(人)を温かく見守る

子供が騒いだり、パニックを起こしたりしているとき、「なぜ親は叱らないんだ」といら立つ場合があるかもしれません。しかし、発達障害の子の中には、少しの時間待つことで無理に叱るよりも早く混乱から抜け出せることもあります。周囲の人にこうした知識があるだけで、本人も家族も楽になれます。

災害時の発達障害児・者支援について「被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ」

災害が発生したときは、多くの方が避難所での生活を強いられ、不安な日々を過ごします。こうした中で、自閉症をはじめとする発達障害のある方も含まれますが、発達障害のある人は生活環境の変化への対応が難しく、より困難で厳しい環境におかれます。

発達障害情報・支援センターホームページに、被災地で自閉症、発達障害児・者に対応することが必要な方々(避難所での支援に携わるかた、家庭で一緒に過ごす家族)に理解しておいていただきたいこと、ご協力いただきたいことをまとめて紹介しています。

コラム1

4月2日は「世界自閉症啓発デー」です。

2007年12月の国連総会において、全世界の人々に自閉症を理解してもらう取組を進めるため、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」(World Autism Awareness Day)とすることが決議されました。

日本でも、毎年、世界自閉症啓発デーの4月2日から8日までの1週間を「発達障害啓発週間」として、自閉症をはじめとする発達障害について広く啓発する活動を行っています。

この週間中は、シンポジウムの開催や全国のランドマークのブルーライトアップなどの活動を行っています。

皆さんも、世界自閉症啓発デー・発達障害啓発週間をきっかけに、自閉症をはじめとする発達障害についての知識・理解を深めてみませんか。

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

リンク・著作権等について
このコンテンツは役に立ちましたか?
このコンテンツは分かりやすかったですか?
このコンテンツで取り上げたテーマについて関心が深まりましたか?

ご意見・ご感想

関連サイト

  • 世論調査別ウインドウで開きます
  • 首相官邸別ウインドウで開きます

外部のウェブサイトに移動しますが、よろしいですか。
よろしければ以下をクリックしてください。

ご注意
  • リンク先のウェブサイトは、内閣府政府広報室のサイトではありません。
  • この告知で掲載しているウェブサイトのURLについては、2023年11月21日時点のものです。
  • ウェブサイトのURLについては廃止や変更されることがあります。最新のURLについては、ご自身でご確認ください。
Top