より良い明日へ、再び底力のある国へ
野田佳彦内閣総理大臣|聞き手/小島慶子
小島:「増税でお金を取られるだけ取られて、制度が伴わなかったらどうしよう」という不安はなかなか根強いものがあると思います。こうやって総理自らのお話で具体的に情報が出てくると、少しずつ安心が得られるのかなと思いました。…で、そういう制度改革を進めていった先にある、総理がお考えの日本は、どういう良い国になるのですか。
私は昭和47年生まれですけど、私が見てきた日本と、私の子供が見る日本は違うんだろうなと、日々子育てをしていて思います。私は、結構恵まれていたなと思うんです。父のお給料も右肩上がりでしたし、戦後復興を成し遂げて、日本人が世界から尊敬され注目されている時に「自分は日本人だ」という意識を育みました。これから私の子ども達の世代は、「日本に生まれて幸せ」と、何をもって思うのかな、と。
野田:私なんかは、まさに「三丁目の夕日」世代です。そんなに豊かじゃないけど、家にテレビや新しい冷蔵庫が入ったら、家族皆で喜んだり。次々と少しずつ豊かさを享受していって、《今日より明日は良くなる》だろうなという思いで、生きてきました。
バブル崩壊後に生まれた人達は、今日より明日は不安だという思いがずっと続いていると思うんです。その流れを変えたいですよね。かつては、どんどん社会の中間層が厚くなっていって、頑張ればその層に入れるんだというのが、日本の底力だったと思います。そういう国を、もう一回作りたいなと。《分厚い中間層》のいる国。だからこそ、老後の問題だけでなく、中間層から脱落してもリターンマッチできるような支え=全世代対応型の社会保障が、これから大事なんです。
そのために《どういうお金の使い方をするか》を議論していくんだ、ということは、ご理解を頂きたいと思います。小島さんのお子さん達にも、「日本に生まれて幸せ」と思って頂ける社会にするために。
小島:例えば総理は、どんな時「幸せだな」とお感じになりますか?
野田:幸せ…ですか。やっぱり、家族と団らんしている時ですね。
小島:―――「家族団らんが幸せ」って、とてもありふれたようでありながら、今はなかなか難しくなっていますよね。経済的事情でなかなか結婚に踏み切れないとか、お父さんが失業中でお家の中が暗いとか、お母さんも外で働きたいけど子どもを預ける場所が無くて鬱屈して毎日過ごしてるとか…。笑顔で一家が集えない、屈託なく団らんが出来ないのが、実は制度的な問題が理由だということも、結構あると思うんです。
野田:親に働き場所がしっかりあって、家庭にはいつも笑顔がある。そういう社会は、幸せな社会ですね。子どもが成長して、小さくなったズボンやスカートを買い換えるのは、嬉しいことじゃないですか。そのために安心してお金を使える、そういう社会を作りたいですね。
…私のズボンが小さくなるのは、太ったせいですが。
小島:お痩せになって下さい。(笑)
野田:私も子供がいますし、今さえ良ければ良いというような政治は、無責任だと思います。将来世代を思いやった政治を、今こそやらなきゃいけない。単に増税是か非か、ではなくて、そういう社会を、そういう社会保障制度を作るために、しっかり議論していきましょう。
小島:家族の団らんって、それが結局は、税金を納める私たち一人一人の、幸せの実感だと思うんですね。その感覚を総理がお持ちだということを伺えたのは、良かったです。ありがとうございました。
聞き手/プロフィール
小島慶子
ラジオパーソナリティー
1972年生まれ。
2010年にTBSを退社後、ラジオのほか、テレビ出演やエッセイの執筆などでも活躍。