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平成20年10月掲載

 


「すぐに振り込まない。一人で振り込まない。」〜振り込め詐欺の未然防止

振り込め詐欺の被害は、依然としてなくならないばかりか、新しい手口が現れ、最近、再び増加傾向にあります。平成20年6月、「振り込め詐欺救済法」が施行され、振り込め詐欺の被害者に被害金を返還する手続きが定められました。同法の内容と、振り込め詐欺に遭わないための対策について見ていきましょう。

 

今年になって急増している振り込め詐欺事件

「おれだよ、おれ」と家族のふりをして電話をかけ、「金が要る」とうそをついて多額の現金を指定した預貯金口座に振り込ませる、いわゆる「オレオレ詐欺(恐喝)」をはじめ、「架空請求詐欺(恐喝)」、「融資保証金詐欺」、「還付金等詐欺」の四つの犯罪類型を総称して「振り込め詐欺(恐喝)」といいます。

振り込め詐欺の被害が、今年に入ってから急増しています。平成20年1〜7月の振り込め詐欺の認知件数を見ると、件数の合計が13,761件、被害総額は193億3,900万円と、前年同期(9,222件、127億3,300万円)の被害実績を大幅に上回っています。

中でも、税務署や社会保険事務所をかたって「還付金がある」とうそをつき、ATM(現金自動預け払い機)を操作させて多額の現金を振り込ませる「還付金等詐欺」という新しい手口が急増しています。平成20年1〜7月の還付金等詐欺の認知件数は3,836件、被害総額は40億5,100万円と、すでに平成19年の年間被害実績(2,571件、29億8,700万円)を上回っています。

 

「振り込め詐欺(恐喝)」の認知件数および被害総額(平成20年1〜7月)

「振り込め詐欺(恐喝)」の認知件数および被害総額(平成20年1〜7月)

 

還付金等詐欺の認知件数および被害総額(平成20年1〜7月)

還付金等詐欺の認知件数および被害総額(平成20年1〜7月)

 

振り込め詐欺の犯罪類型

1.いわゆるオレオレ詐欺(恐喝)

「おれだよ、おれ」と電話がかかってきて、うっかり「○○(息子などの名前)?」などと問い直すと、「そう、○○。実は会社のお金を使い込んでしまった。今日中に返済しないとクビになる」と言われ、指定された銀行口座にお金を振り込まされてしまう……。このように、犯人が「オレオレ」と称することからその名が付いた手口です。以前は、犯人が警察官や弁護士を装って「お宅の息子さんが交通事故を起こした」などと電話してきて示談金の名目でお金を振り込ませるものが多かったのですが、最近は、会社における横領金の補てん金名目やサラ金の借金返済名目が多くなるなど、その手口も変化してきています。

2.架空請求詐欺(恐喝)

不特定多数の人に、架空のサービス利用料を請求する内容の郵便や電子メールなどを送り、お金を振り込ませる手口です。裁判所などの公的機関や架空の債権回収会社を装い、時には、「○月○日までに振り込まなかったら、法的手段に訴える」などと脅迫的な言葉を用います。銀行振り込みだけではなく、指定した住所に定形郵便小包(エクスパック)などを用いて送らせるという手口もあります。また、連絡先に問い合わせるように仕向けて、問い合わせてきた被害者から個人情報を聞き出すこともあります。

3.融資保証金詐欺

実際には融資しないにもかかわらず、多重債務者などに「低金利で融資します」、「債務を一本化します」などと書かれたハガキや電子メールなどを送りつけ、融資を申し込んできた人に対し、「融資が可能か審査しますので、信用を担保するため、保証金としてお金を振り込んでください」などと言って、保証金名目に現金を預貯金口座に振り込ませるなどの方法によりだまし取る手口です。この手口についても、銀行振り込みだけではなく、定形郵便小包(エクスパック)などを用いて指定した住所に現金を送らせるという手口が増加しています。

4.還付金等詐欺

社会保険事務所などの職員を装い、あたかも年金などを還付する手続きであるかのように装ってATM(現金自動預け払い機)まで誘導し、ATMを操作させて現金を振り込ませる手口です。「暗証番号」などと称する6けた程度の数値を告げられ、被害者は犯人の指示に従ってATMの金額欄にその数字を入力し、知らず知らずのうちに現金の振り込み手続きをさせられてしまいます。悪質な場合には、「手続きがうまくいかなかったのでもう一度」などと言われ、同じ作業を繰り返させられ、複数回にわたり振り込まされることもあります。

 

 

だまし取られたお金を訴訟によらずに返還〜「振り込め詐欺救済法」

振り込め詐欺でだまし取られたお金が振込先の銀行口座に残っていた場合、被害者がそれを取り戻す手続きを定めた「振り込め詐欺救済法」が、平成20年6月に施行されました。

以前は、このような場合、基本的には、被害者は、お金を取り戻すために、口座の名義人に対して民事訴訟を起こさなくてはなりませんでした。しかし、振り込め詐欺救済法が施行され、お金を取り戻すための手続きが法定されたことにより、被害者は民事訴訟によらなくてもお金を取り戻すことが可能となりました。

 

振り込め詐欺救済法

振り込め詐欺救済法は、正式には「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」といい、平成19年12月21日に公布され、平成20年6月21日に施行されました。 この法律は、振り込め詐欺などの犯罪に利用され凍結された預貯金口座の残金を被害者に分配する手続きを定めるものです。救済の対象となる犯罪行為は振り込め詐欺のほか、ヤミ金など他人の財産を害する罪の犯罪行為であって、金融機関の口座に被害資金を振り込んだ場合も含まれます。

振り込め詐欺救済法では、犯罪に利用され凍結された預貯金口座について、銀行などの金融機関が預金保険機構を通じて名義人の預金債権消滅のための手続(「失権手続」といいます)を行います。失権手続により名義人の預金債権が消滅すると、金融機関は預金保険機構を通じて分配金支払いのための公告を行い、被害者からの支払申請を受け付けます。その後、金融機関において被害者・被害額・支払額の認定が行われ、その認定に基づき、被害者にお金を分配する支払手続きが行われます。

 

振り込め詐欺救済法における手続きの流れ

振り込め詐欺救済法における手続きの流れ

 

この振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺の被害に遭ったすべての被害者を救済できるわけではありません。同法の手続きによりお金を取り戻すことができるのは、あくまで犯人が用いた口座にお金が残っていることが前提です。犯人が口座からお金を引き出してしまったら、同法の手続きによっては、お金を取り戻すことはできなくなります。(お金を取り戻すためには、犯人に対して損害賠償請求を行うなどの必要があります。)

 

何よりも大切なのは“だまされない”準備と心構え

振り込め詐欺による被害を減らすためには、多くの人が、振り込め詐欺の手口を知り、犯罪被害の予防に努めることがとても大切です。しかし、振り込め詐欺の手口は、近年巧妙になってきています。また、家族や親族などに一大事がおきたり、「払うべきお金を払っていない」などと責められたりすると、多くの人は動揺して、つい犯人の言うことを聞いてしまいます。どのような事態であれ、お金を請求されたら、いったん立ち止まって、「すぐに振り込まない。一人で振り込まない」という姿勢が重要です。

 

「すぐに振り込まない。一人で振り込まない」

振り込め詐欺の犯人は、たいてい振り込むことを急がせてきます。家族に一大事があったといわれ、気が動転している状態で急がされると、つい言うことを聞いてしまいます。このような場合、まずはこらえて、一呼吸おくことが大切です。

また、気が動転している状態では、冷静な判断など期待できません。必ず誰かに相談して、冷静な目で事態を判断してもらいましょう。相談した相手から「それって、振り込め詐欺じゃないの?」と言われて、はじめて気が付く人も多くいます。

 

そのほかにも、例えば以下のような対策があります。

家族との「合言葉」を決めておく

犯人に、「オレオレ」と容易に家族のふりをされないためにも、家族の間でしか知り得ない「合言葉」を決めておき、名乗らずに電話をかけてきた相手に確認してみましょう。また、本人しか知り得ない情報について質問してみましょう。

 

ATMの一日あたりの利用限度額を下げる

現在、各金融機関では、振り込め詐欺の被害を未然に防ぐために、ATMによる一日あたりの振替利用限度額を引き下げることを顧客に対して奨励しています。振替利用限度額を引き下げておくと、万が一、振り込め詐欺の被害に遭ったとしても、被害を最小限にすることができます。振替利用限度額の設定の手続きについては、口座をお持ちの金融機関に相談してください。

 

ATMコーナーで携帯電話を使用しない

携帯電話を使用しながらATMを操作している人は、振り込め詐欺の被害に遭っている可能性があります。現在、全国の銀行では、ATMコーナーで携帯電話を使用しないように呼びかけるとともに、使用している人に対しては声をかけるよう努めています。実際、銀行のATMで、多額の現金を犯人の口座に送金する直前に、銀行員が振り込め詐欺に気づき、被害を未然に防止した事例もあります。

 

被害に遭ったと思ったら・・・・・・

自分が被害に遭ったと思ったら、すぐに振込先の金融機関と警察に連絡し、口座の凍結を求めてください。前述のとおり、犯人にお金を引き出されてしまったら、お金を取り戻すことが非常に難しくなります。

また、金融機関は、被害の申し出があった人には、「振り込め詐欺救済法」に基づく手続きにおいて個別に連絡を行うこととなっています。振り込め詐欺の被害に遭った方は、過去に被害に遭った方も含め、振込先の金融機関にお問い合わせください。

 

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