石綿による健康被害の救済制度が拡大されました
石綿は、極めて細い繊維状の天然鉱物の総称でアスベストとも呼ばれます。我が国では高度成長の時期に様々な工業製品として利用されましたが、石綿を吸い込むと中皮腫や肺がんなどの病気を引き起こすことがあることが分かり、現在はごく一部を除き、ほぼ全面的に製造などが禁止されています。国は、石綿によって中皮腫や肺がんにかかった方とそのご遺族に、医療費や特別遺族弔慰金を支払うなどの救済制度を設けていますが、このほど給付対象者や給付対象期間を拡大する制度の改正が行われました。
石綿は静かな時限爆弾
石綿は熱や摩擦、化学薬品に強く、値段が安く、加工もしやすいことから、建築資材などの様々な工業製品に使われてきました。しかし、空気中に漂う石綿繊維を吸い込むと、石綿繊維は肺に入って、体外に排出されることなく長く留まる場合があります。そして静かな時限爆弾と呼ばれるように、長い潜伏期間を経た後に、中皮腫や肺がんなどの悪性腫瘍を引き起こす恐れがあります。
石綿による病気が特に心配されるのは、工場や建築現場などで石綿を直接扱っていた方たちです。このような方々は大量の石綿を吸い込んでいた可能性があります。一方、直接、職業で石綿に接しなくても、工場で働く夫の作業服を洗濯する妻が石綿を吸い込んでいたり、石綿工場の近隣に住んでいた人が知らず知らずのうちに吸い込んでいたりするケースもあると言われています。
石綿の主な用途と特徴
| 用途 | 写真 | 特徴 |
|---|---|---|
| 吹き付けアスベスト | ![]() |
一定割合の石綿とセメントに水を加えて混合し、吹き付け施工したもの。1956年から1975年ころまで使用された。 |
| 吹き付けロックウール | ![]() |
1975年に吹き付けアスベストが原則禁止になった後、この吹き付けロックウールに切り替わり、しばらくの間は石綿を混ぜて使用されていた。石綿を混ぜて使われていた期間は、1968年ころから1988年ころまで。 ※写真は国土交通省資料 「目で見るアスベスト建材」 の 12ページより引用 |
| アスベスト保温材 | ![]() |
保温材のほか、耐火被覆板として用いられた。板状・筒状のものは、プラント(生産設備)の外壁や配管の定形部にボルトや針金で固定されて使用され、ひも状のものは各種プラントの曲管部や施工しにくい部分に巻きつけて使われた。 |
| アスベスト成形板 | ![]() |
代表的なものに石綿スレートがある。防火性、耐熱性に優れていることから、建物の外壁、屋根など建材として幅広く使用された。 |
| その他のアスベスト製品 | ![]() |
●石綿セメント製パイプ状製品(煙突や排気管、上下水道用の高圧管) ●タンクやパイプラインの接続部分の液漏れを防ぐシール材 ●摩擦材(車のブレーキやクラッチの部品) |
資料提供:環境再生保全機構
救済制度の概要と今回の改正点
石綿健康被害救済法は平成18年に成立しましたが、この背景には、石綿による病気の次のような特徴があります。
ひとつは、健康被害の潜伏期間が30年から40年と非常に長く、さらに石綿そのものが広範かつ大量に使用されていたことから、どこで石綿を吸い込んだかわからず、個々の原因者を特定することが難しいことが多い、という点です。もうひとつは、石綿による中皮腫・肺がんが非常に重篤な病気であり、いったん発症すると多くの方が1~2年程度で亡くなってしまうという点です。このため、労災の制度などでは補償されない方のために、新たな制度をつくって救済を図る必要があったのです。
石綿による病気に心当たりのある方は、被害救済の申請をしてください。中皮腫または石綿を原因とする肺がんであると認定を受けると、その認定疾病の治療に掛かった医療費の自己負担分と、さらに療養手当として月額103,870円が支給されます。また、平成18年3月26日までに中皮腫または石綿を原因とする肺がんで亡くなられた方のご遺族は、約300万円(特別葬祭料199,000円、特別遺族弔慰金280万円)を受け取ることができます。
ところで、石綿による健康被害では、認定申請が遅れたり、救済制度に申請する前に亡くなられてしまう方もいらっしゃいました。そこで平成20年6月、石綿健康被害救済法が改正され、救済の対象者や給付対象期間が大幅に拡大され、平成20年12月1日から施行されることになりました。主な改正点は次のとおりです。
1.医療費・療養手当の支給対象期間の拡大
従来、医療費と療養手当の支給は「申請日から」となっていましたが、これが「療養を開始した日から」とされました。ただし、さかのぼって受け取ることができるのは、申請日の3年前までです。
2.認定申請せずに亡くなられた方のご遺族にも弔慰金を支給
従来は、平成18年3月27日以降に、認定申請することなく亡くなった方のご遺族は、救済の対象外でしたが、新しい制度では、このような場合も申請できるようになり、認定された場合はご遺族に約300万円の特別遺族弔慰金等が支給されるようになりました。ただし請求可能な期間は、認定申請せずに亡くなられた方の死亡日から5年以内です。
3.特別遺族弔慰金や特別遺族給付金の請求期限を延長
平成18年3月26日までに亡くなった方のご遺族を対象とする特別遺族弔慰金、及び特別遺族給付金の請求期限は「平成21年3月27日」までとなっていましたが、これが「平成24年3月27日」まで延長されました。
4.労災保険との隙間対策として、特別遺族給付金の支給対象の範囲を拡大
平成18年3月26日までに亡くなり、労災保険上の遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅したご遺族も、特別遺族給付金の対象とされました。
5.事業所の調査等
救済に必要な情報を十分かつ速やかに提供するため、石綿を使用していた事業所の調査、その結果の発表、石綿による健康被害の救済に関する制度の周知及びそれらの実施に当たっての関係行政機関の連携に関する規定が新設されました。
定期的な検診で早期発見・早期治療
石綿による病気は、長い潜伏期間を経て発症します。いま自覚症状がなくても、過去に石綿を吸い込んだ可能性のある方は、医師に相談すると良いでしょう。肺がんの予防には禁煙も重要です。また、石綿を吸った可能性があり、次のような自覚症状のある方は、お近くの労災病院に設置された「アスベスト疾患センター」などの専門医療機関にご相談ください。
- 息切れがひどくなった場合
- 咳や痰が以前に比べて増えた場合や、痰の色が変わった場合
- 痰に血液が混ざった場合
- 胸や背中の痛みが持続する場合
- 顔色が悪いといわれた場合やつめの色が紫色になった場合
- 激しい動悸がする場合
- 風邪をひいて、なかなか治らない場合
- 微熱が続いたり、高熱が出たりした場合
- 横になると息が苦しい場合
- 食欲がなくなった場合や急にやせた場合
- 昼間でも眠気が強い場合
石綿健康被害救済給付の申請や制度に関するお問い合わせは、独立行政法人環境再生保全機構(フリーダイヤル0120-389-931、サーハヤクキュウサイ)までどうぞ。環境省の地方環境事務所や各地の保健所等でも受け付けています。 また、石綿にさらされる作業歴のある方、又は亡くなられた方のご遺族は、労災補償又は特別遺族給付金を受けられる可能性があります。詳しくは、最寄の労働基準監督署までお願いします。
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