春山も天候の急変に要注意!山岳遭難を防ぐ3つのポイント

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雨具、水、缶詰やチョコレートなどの持ち物、登山ルート、登山届について話し合いながら、登山計画を立てている男女

近年のアウトドアブームで、登山を始めた方や機会が増えた方もいらっしゃると思います。一方で、令和3年中の山岳遭難発生件数は2,635件で前年より増えています。気候が温暖な春でも毎年、山岳遭難が絶えず、特に多いのは、道迷いや滑落、転倒です。春の山は、ふもとは暖かくても山頂付近はまだ寒く、天候も急変しやすいため、登山計画や装備が不十分だと命にかかわる場合もあります。安全に登山を楽しむためのポイントを紹介します。

1不十分な装備や無理な登山が山岳遭難の原因に

4月下旬から5月初めは、山の空気も緑もさわやかで、登山や山菜採りを楽しむ人も多くなる時期です。その一方で、毎年、多くの遭難事故が発生しています。
春とはいっても、山の気候はふもととは違い、気温もまだ低く、天候が急変して雪が降ることもあります。山岳遭難の多くは、春山に対する認識が甘く、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足から遭難に至ることが見受けられます。

令和3年中における山岳遭難の概況
遭難者数(人)

遭難者数の円グラフ。道迷い1,277人・41.5%、転倒510人・16.6%、滑落496人・16.1%、病気218人・7.1%、疲労204人・6.6%、その他370人・12.0%

資料提供:警察庁「令和3年における山岳遭難の概況」

山岳遭難を態様別にみると最も多いのは「道迷い」で41.5%、次いで「転倒」(16.6%)、「滑落」(16.1%)となっています(警察庁「令和3年における山岳遭難の概況」より)。また、「病気」「疲労」も少なくありません。遭難者の約半数は無事に救出されていますが、亡くなったり、行方不明になったり、負傷したりするケースも少なくありません。特に単独登山で遭難した場合、行方不明・死亡となる割合が高くなっています。
だれもが気軽に登山を楽しむようになった今日ですが、山という自然を甘く見てはいけません。今一度、安全に登山を楽しむための注意点をしっかり押さえておきましょう。

山岳遭難の事例

  • 紋別岳において単独で山菜・茸採り中の70代男性が滑落して死亡した。
  • ニセコアンヌプリのスキー場管理区域外を単独でスキー中の50代男性が道に迷い自ら救助要請した。
  • 燕岳を登山中の50代女性がアイゼンを引っかけて転倒し負傷した。

2安全登山のポイント(1) 無理のない「登山計画」と「登山計画書」の提出を

無理のない登山計画

自分の技量や体力に合った山や登山コースを選ぶ

安全な登山は、どんな山に登るかという計画から始まります。
登山は、山に登ってから下山してくるまで、自分の力で行わなければなりません。そのため、自分の技量・体力に見合った山や登山コースを選ぶことが重要です。

明るいうちに下山できるスケジュールを

登山コースを決めたら、自分の体力では何時間かけて登って、下山できるかを考えてみましょう。
日が沈むと山道は暗く、危険が増しますので、明るいうちに下山できるよう、登る時間と下山時間を考えることが大事です。

休憩をとる

疲れすぎないよう、途中途中で休憩をとることも必要です。自分の体力や技術などを考慮しながら、時間にゆとりをもった、無理のない登山計画を立てましょう。

登山計画書の提出

登山計画を立てたら、「登山計画書(登山届)」にまとめましょう。登山計画書にまとめる内容は、次のような項目です。登山計画書の様式や記載例は、公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会などのサイトに掲載されています。

登山計画書にまとめる主な内容

  • パーティの名称及び所在地
  • 緊急の連絡先及び氏名
  • 登山の目的
  • 目的の山域や山の名称
  • 登山の期間
  • 日程・行動予定(コースの概念図も添える)
  • 参加者名簿(氏名、生年月日、住所、緊急連絡先、血液型など)
  • リーダーや各担当の役割分担
  • 装備や食糧などのリスト
  • 持参する通信手段(携帯電話番号、無線のコールサインなど) など

登山計画を登山計画書(登山届)にまとめたら、一緒に登山する人と共有しましょう。また、家族や職場の同僚など周囲の人々にも、行動予定を伝えておくことが大事です。
また、登山計画書は、入山する前に、下記のいずれかに提出しましょう。

登山計画書の提出先

  • 知事等(登山計画書の提出が条例で義務化されている山域)
  • 家庭、クラブ(山岳会)、職場、学校など
  • 山域の登山指導センターや案内所、登山口の登山届ポストなど
  • 山域を管轄する警察本部、警察署、交番、駐在所

※登山計画書の提出先には、下山の報告をしてください。

登山計画書は、万一、山岳遭難が発生した場合、捜索の手がかりとなります。これまでも登山計画書を提出したおかげで、命拾いをしたという例が数多くあります。低い山でも山岳遭難は発生していますので、山の高さにかかわらず、登山計画書を作成・提出することをお勧めします。登山計画書を作成するときに、登山計画を見直す機会にもなり、山岳遭難を防止することにもつながります。

3安全登山のポイント(2) 情報収集や装備を万全に

登山の装備は、登山をする時期の山の気候や、登山の行程(日帰りか宿泊か)などによって異なります。登山計画をきちんと立てることで、どのような装備が必要かを考え、万全の準備をして登山に臨むことができます。

情報収集

登る山や登山ルートの状況の最新情報をチェック

4月~5月の山は、ふもとは初夏の装いでも、山によっては登山コースに雪が残っていたり、登山中に天気が急変して雪が降ったりする場合もあります。登る山や登山ルートの状況など最新情報を調査し、予備知識をつけておきましょう。

天気予報をしっかりチェック

登山の当日まで天気予報はしっかりとチェックしましょう。山の天候は変わりやすいので、登山中も、携帯ラジオを持参してこまめに気象情報をチェックし、行動することが大切です。

万全の装備を

登山目的や山の気候などに合った、万全の装備をしましょう。

服装

気温や天候などに合わせて脱ぎ着のできる服装とトレッキングシューズなどの歩きやすい靴、雨具(レインウェア)は必須です。特に、また、山の天気は変わりやすく、場所によっては、厳冬期と同じ気候状態となることを十分理解したうえ、装備を整えましょう。雨風に当たれば体が冷え、体温を奪われて低体温症になることもあります。

地図、コンパス

道迷いなどによる山岳遭難を防ぐために、地図とコンパスを持参するほか、スマートフォン用登山地図アプリを併用することも重要です。

携帯電話や無線機

万一、遭難した場合に助けを呼べるよう、携帯電話や無線機(予備バッテリーを含む)などの連絡手段は必ず持っていきましょう。なお、GPS機能の付いた機器があれば、自分の現在地をより速やかに救助機関に伝えることができるので便利です。

このほかにも登山に必要な装備はさまざまあります。自分の登山にはどんな装備が必要かを考えて、万全の装備で登山しましょう。

雨具、水、缶詰やチョコレートなどの持ち物、登山ルート、登山届について話し合いながら、登山計画を立てている男女

4安全登山のポイント(3) 冷静な状況判断と、慎重な行動を

山岳遭難では、気象の急変による「気象遭難」も多発しています。登山予定日の数日前から現地の気象に注意し、悪天候の場合は無理に登山するのはやめましょう。登山中に、霧(ガス)や雨、あるいは雪などで視界不良になった場合や、疲労や病気などで体調不良になった場合は、滑落や道迷いなどの危険があります。
そうした場合は状況を冷静に判断して、早めに登山を中止するよう努めましょう。道迷いを防ぐため、地図、コンパス、登山用GPSなどを活用して、常に自分の位置を確認するよう心がけ、少しでも「道に迷った」と感じたら、「たぶんこの道で合っているだろう。」と闇雲に進むことなく、今歩いて来た道を辿り、正規の登山道まで引き返すことが重要です。
また、滑落や転落を防ぐために、あらかじめ滑りにくい登山靴やストックなどの装備を有効に使うとともに、気を緩めることなく常に慎重な行動を心がけましょう。

「自分の行動は自分で管理する」のが登山の基本です。ほかの人と一緒に登山するときも、自分の歩くルートは事前にチェックし、山に入る時期の天候や必要な装備、登山するときの注意点などについて知識を身につけておきましょう。また、疲労による山岳遭難も発生していますので、登山をする前には、日ごろからトレーニングを行い、体力をつけておくことが大事です。

5遭難したときは、110番または地元の警察署へ

万一、救助を必要とする場合の連絡先は、110番または地元の警察署です。一刻を争う場合、警察や消防、自衛隊または民間のヘリコプターで捜索・救助活動が行われます(提出された登山計画書や、避難場所のGPS位置情報があれば、より速やかに捜索場所を絞り込むことができます)。
ただし、救助要請があっても、遭難した場所の地形や気象条件によっては、ヘリコプターでの救助が行えない場合もあります。
救助要請をした場合でも、すぐに助けが来るとは限らないということを肝に銘じ、「道に迷ったときには、どうすればいいか」「けがをして動けなくなったときはどうすればいいか」「雷や大雨になったときにはどうすればいいか」など、遭難したときの対策も事前にしっかり立てておいてください。

(取材協力 警察庁  文責 政府広報オンライン)

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