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世界最速のスーパーコンピュータ「京」が支える
最先端の科学技術とものづくり

平成24年1月掲載  
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アウトライン

  • ものづくりや天気予報、創薬など、私たちの生活の様々な分野に、スーパーコンピュータによるシミュレーションが不可欠になっています
  • 日本の科学技術やものづくりの発展のため、次世代スーパーコンピュータを中核とした革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築が進められています
  • スーパーコンピュータ「京(けい)」が、世界のスーパーコンピュータの性能ランキングTOP500で2期連続第1位を獲得しました
  • 「京」の計算性能は10ペタフロップス(1秒間に1京回の計算を行う能力)で、より高速、より高精度なコンピュータ・シミュレーションが可能になります
  • HPCIの構築により、「京」と国内の大学や研究所などに設置されている主要なスーパーコンピュータをネットワークで結び、幅広い分野の人々が、国内のスーパーコンピュータと「京」を利用することが可能になります(共用開始は平成24年秋を予定)
  • 「京」を最大限活用するため、文部科学省では5つの戦略分野を決定し、研究開発・分野振興を推進します

平成23年の6月と11月、日本のスーパーコンピュータ「京(けい)」が、スーパーコンピュータの世界ランキングTOP500で2期連続第1位に輝きました。その計算性能は10ペタフロップス、1秒間に足し算や掛け算などを1京回(=10,000兆回)行うという、まさに京速の計算能力をもつスーパーコンピュータなのです。スーパーコンピュータを活用したシミュレーションは、日々の天気予報、航空機や自動車の設計、薬の開発など、私たちの生活に必要不可欠なものになっています。今後、京の活用によって、医療や新エネルギー、防災・減災、次世代ものづくりなど、様々な分野への貢献が期待されています。

 

私たちの生活に必用不可欠なスーパーコンピュータ

家庭やオフィスなどで利用するパソコンとは違い、一般の人にはあまりなじみのないスーパーコンピュータ。実は、身近な生活や産業を支える様々な分野に活用されているのをご存じでしょうか。

スーパーコンピュータとは、大規模で高度な計算を処理することができる、とてつもなく計算処理能力が高いコンピュータです。コンピュータの計算性能は、1秒間にどれだけ計算することができるかということを基準にした「フロップス」という単位で表されますが、現在の世界上位のスーパーコンピュータの計算性能は数十テラフロップス以上、つまり、1秒間に数十兆回以上の計算を行うことができる計算性能をもっています。一般のパソコンの計算性能も、数ギガフロップス(1秒間に数十億回の計算が行える)ありますが、それとは比べものにならない高い性能をもっているのがスーパーコンピュータなのです。

このスーパーコンピュータが得意とするのが、コンピュータ・シミュレーション。理論をもとにコンピュータ上に仮想的なモデルを組み立て、様々な条件のもとで、その動きを調べることです。スーパーコンピュータによるシミュレーションは、実験がしにくいことや実験できないことをコンピュータ上に再現し、検証することができる技術で、飛行機や自動車、家電製品などの様々な製品の設計、新薬の開発、天気予報のための気象シミュレーションなど、私たちの生活に直接関係する様々な分野で活用されています。

次世代スーパーコンピュータを核としたHPCIの構築を目指して

既に様々な分野で活用されているスーパーコンピュータですが、もっと早く、もっと高精度なシミュレーションを行うためには、さらに計算能力が高い次世代スーパーコンピュータが必要です。また、現在のスーパーコンピュータでは時間がかかりすぎてできないシミュレーションも、次世代スーパーコンピュータの開発によって可能になり、科学技術の新たな扉を開くことにもつながります。

また、次世代スーパーコンピュータを開発するためには、高性能LSIや低電力化などの半導体技術、ネットワーク技術、品質管理技術など、エレクトロニクスに関する総合的かつ高度な技術力が必要です。日本はこの分野で世界のトップレベルにありますが、こうした技術力の維持・向上のために継続的な研究開発が必要です。次世代スーパーコンピュータの開発は、日本の最先端技術のさらなる発展にもつながるものです。

<参考>

単位 漢字の単位 (10のべき乗)
1M (メガ) 100万 10の6乗
1G (ギガ) 10億 10の9乗
1T (テラ) 1兆 10の12乗
1P (ペタ) 1,000兆 10の15乗
10ペタ 1京 10の16乗

こうした中、文部科学省が取組を進めてきたのが、スーパーコンピュータ「京」を中核とし、「京」と国内の計算資源を連携して利用するためのHPCIの構築と、その利用の推進です。このHPCIの中核となるスーパーコンピュータ「京」が、平成23年11月、目標としていたLINPACK性能10ペタフロップスを達成しました。「京」のCPUなど中核となる主要な部品は日本製で、日本のものづくり技術の結集ともいえるものなのです。

 

世界のスーパーコンピュータTOP500で2期連続第1位を獲得したスーパーコンピュータ「京」

800台を超えるシステムラックで構成される「京」

提供:(独)理化学研究所

「京」がもつ計算性能10ペタフロップスとは、足し算や掛け算などの計算を1秒間に1京回(=10,000兆回)行える能力です。この計算性能は世界トップクラスで、その実力は世界のスーパーコンピュータの性能ランキングTOP500(*)で、平成23年の6月と11月の2期にわたって1位を獲得したことでも証明されています。ちなみに、平成23年11月に2位だった中国のスーパーコンピュータの計算性能は2.6ペタフロップスですから、「京」の計算性能は他のスーパーコンピュータと比較しても並外れて高いことが分かります。

 

平成23年11月TOP500の上位10位

順位 システム名 国名 設置場所 ベンダー LINPACK
ペタFLOPS
1 日本 理研計算科学研究機構 富士通 10.510
2 天河1A 中国 国立スーパーコンピューティングセンター(天津) NUDT 2.566
3 Jaguar アメリカ オークリッジ国立研究所 Cray 1.759
4 Nebulae(星雲) 中国 国立スーパーコンピューティングセンター(深セン(土へんに川) Dawning 1.271
5 TSUBAME 2.0 日本 東京工業大学 NEC・HP 1.192
6 Cielo アメリカ ロスアラモス国立研究所 Cray 1.110
7 Pleiades アメリカ NASA・エイムズ研究センター SGI 1.088
8 Hopper アメリカ ローレンス・バークレー研究所 Cray 1.054
9 Tera-100 フランス 原子力庁 Bull 1.050
10 Roadrunner アメリカ ロスアラモス国立研究所 IBM 1.042

*世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までをランク付けするプロジェクトで、毎年6月と11月の2回、リストの更新を発表している。ランク付けはLINPACK(リンパック)と呼ばれるベンチマークによって行われる。

 

平成24年秋に「京」の共用がスタート

このスーパーコンピュータ「京」の共用が平成24年秋に開始される予定です。これによって、「京」と大学や研究機関など国内の主要なスーパーコンピュータをネットワークで結び、国内の様々なスーパーコンピュータから「京」を利用したり、ネットワーク上の複数のスーパーコンピュータを協調的に利用したりすることを可能とするHPCIの運用が始まります。

利用者視点によるHPCIの運用を実現するため、全国の主要なスーパーコンピュータ所有機関(独立行政法人、大学等)やユーザなど、我が国の計算科学技術に関するコミュニティーを代表する者の自主的な集まりとして構成されるコンソーシアムがHPCIの構築を主導することになっています。そのための準備段階コンソーシアムが平成22年7月に発足し、利用者視点に立ってHPCIの構築や運営に関する意見をとりまとめる活動が進められるとともに、平成24年4月の本格段階への移行に向けて、広く門戸を開き、より多くのユーザが参画できる仕組みを検討しています。

HPCIの構築によって、独立行政法人や大学、産業界など国内の様々なスーパーコンピュータがもつデータの分析が可能になるとともに、スーパーコンピュータ「京」を活用し、従来のスーパーコンピュータでは実現できなかった、より高性能なコンピュータ・シミュレーションができるようになります。

例えば、観測データとシミュレーションによる地震・津波予測では、「京」の活用によって、シミュレーションが高速化され、なおかつ、これまで50メートル単位での広域モデルによる予測から、10メートル単位での日本列島モデルによる予測へと、より詳細な予測が可能となります。このように、最先端の計算環境を利用することにより、様々な緊急課題にも貢献することが期待されています。

 

「京」が切り拓く5つの戦略分野

文部科学省では、「京」を中核とするHPCIを最大限活用することにより、社会的・学術的に大きな進歩が期待できる分野として、5つの「戦略分野」を決定し、研究開発や分野振興などを進めていくこととしています。

 

5つの戦略分野

(1)予測する生命科学・医療および創薬基盤

ゲノムやタンパク質から細胞・臓器・全身にわたる生命現象を統合的に理解することにより、疾病メカニズムの解明と予測を行います。医療や創薬プロセスの高度化への寄与も期待されます。

戦略機関
理化学研究所

(2)新物質・エネルギー創成

物質を原子・電子レベルから総合的に理解することにより、新機能性分子や電子デバイス(機器)、さらには各種電池やバイオマスなどの新規エネルギーの開発を目指します。

戦略機関
東京大学物性研究所(代表機関)

(3)防災・減災に資する地球変動予測

高精度の気象・気候シミュレーションにより地球温暖化に伴う影響予測や集中豪雨の予測を行います。また、地震や津波について、これらが建造物に当てる被害をも考慮した予測を行います。

戦略機関
海洋研究開発機構

(4)次世代ものづくり

先端的要素技術の創成、組み合わせ最適化、丸ごとあるがまま性能評価・寿命予測というものづくりの過程全体を、シミュレーション主導で継ぎ目なく行う、新しいものづくりプロセスの開発を行います。

戦略機関
東京大学生産技術研究所(代表機関)

(5)物質と宇宙の起源と構造

物質の究極的微細構造から星・銀河の誕生と進化の全プロセスの解明まで、極微の素粒子から宇宙全体にいたる基礎科学を融合し、物質と宇宙の起源と構造を統合的に理解します。

戦略機関
筑波大学計算科学研究センター(代表機関)

 

一般の研究者などにも開かれている「京」の利用

スーパーコンピュータ「京」は、兵庫県神戸市の理化学研究所 計算科学研究機構の施設に設置されます。この「京」は、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」で定められた共用施設で、一般の研究者なども広く利用することができます。

「京」の一般利用にあたっては、国が認定した登録施設利用促進機関である財団法人高度情報科学技術研究機構に、課題申請を行うことが必要です。同機構において選定された課題について、「京」の利用が可能となります。

なお、申請方法や利用料金などについては高度情報科学技術研究機構及び計算科学研究機構で検討が行われているところであり、詳細については決定次第、高度情報科学技術研究機構のホームページ等で案内されます。課題の募集は平成24年度早期に行われる予定です。

 

「京」の利用成果がゴードン・ベル賞を受賞

ゴードン・ベル賞は米国計算機学会(ACM)が毎年ハードウェアとアプリケーションの開発において最高の成果を上げた論文に与えられる賞で、コンピュータ・シミュレーション分野で最も権威のある賞です。

平成23年11月、理化学研究所、筑波大学、東京大学、富士通株式会社による『「京」によるシリコン・ナノワイヤの第一原理計算』が、ゴードン・ベル賞の最高性能賞を受賞しました。

この研究は、次世代半導体の材料として期待されているシリコン・ナノワイヤの実現のため、ナノワイヤ内の電子状態の解析を「京」を用いて行ったもの。シリコン・ナノワイヤとは、直径がナノメートル(1ナノメートルは1ミクロンの1000分の1)レベルのシリコンの細い配線で、「京」により世界で初めて、ナノレベルの高精度シミュレーションが可能になり、ナノワイヤの断面形状による電子輸送特性の変化を初めて明らかにしました。

 

<取材協力:文部科学省  文責:政府広報オンライン>

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ラジオ番組 中山秀征のジャパリズム (平成24年2月18日)
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