知っておきたい 薬のリスクと、正しい使い方

シェアする

店頭で、薬について説明している薬剤師とその説明を聞いている女性

病気やけがの治療などで大切な役割を果たす「薬」。しかし、程度に差はありますが、薬は効き目(効能・効果)だけでなく、副作用という「リスク」も併せ持っています。重い症状では死に至ることも。そこで、薬を安心して使うためには、薬に関するリスク、正しい使いかたや保管方法を知ることが大切です。そして、薬の服用歴が分かる「お薬手帳」や、薬について身近に相談できる「かかりつけ薬剤師・薬局」を持つことも有効です。今回は、知っておきたい薬の基本的な知識をご紹介します。

動画

薬のリスクと正しい付き合い方【字幕付】
(2分45秒)

ドラッグストアやインターネットなどで身近に入手できる医薬品。誤った使い方をすると健康被害が発生するおそれもあります。医薬品を効果的かつ安全に使用するためには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。【字幕付】
ナレーション:貫地谷しほり

1知っていますか? 薬のリスク

薬は、病気やけがを治療するなどの効果・効能がある一方、副作用というリスクを併せ持つものです。
薬を飲むと、本来の目的とは別に、眠気やのどの渇きなどといった副作用が起こる可能性があります。また、アナフィラキシーなどの重い副作用の症状を引き起こす可能性もありますので、薬を使用して異常を感じたら、すぐに医師や薬剤師などの専門家に相談しましょう。

ただし、薬を使用すると必ず副作用が現れるものではありません。もし現れたとしてもその症状は服用した人や薬によって異なりますが、次に当てはまる人は特に注意が必要です。医師や薬剤師などの専門家に相談してから使用するようにしましょう。

※アナフィラキシー(anaphylaxis):アレルギー反応の一種で、じんましん、腹痛、息苦しさなどが急激にあらわれます。血圧が低下して意識レベルの低下や脱力をきたすこともあります(アナフィラキシーショック)。

薬の副作用について特に注意が必要な人

  • アレルギーのある人
  • 過去にひどい副作用を経験したことがある人
  • 医師の治療を受けている人
  • 肝臓・腎臓など、薬の成分を代謝・排泄する臓器に疾患のある人
  • 他にも薬を飲んでいる人
  • 妊娠の可能性がある女性、妊娠している女性、授乳中の女性
  • 高齢者

また、高い所での作業や乗り物・機械類の運転操作をする人は、眠気などの副作用に注意が必要です。

薬の使用中に何か異常を感じたら、すぐに医師や薬剤師などの専門家に相談してください。その際には、「何という名前の薬を、どのくらいの量・期間使用し、どのような症状が出たか」を説明できるようにすることが大切です。

2薬にはどんな種類があるの?

処方薬の袋と錠剤

薬は「医療用医薬品」と「市販薬(OTC医薬品)」の大きく2つに分類されます。

「医療用医薬品」は医師がその人の病気、症状、体質、年齢などを考えて処方する、その人だけに合った薬です。「OTC医薬品」とは、「薬剤師などによる情報提供を踏まえて、症状にあわせて薬局などで購入できる市販の薬で、「要指導医薬品」と「一般用医薬品」の2種類があります。

「要指導医薬品」は、医療用医薬品からOTC医薬品に変更となってからの期間が比較的短いものや劇薬が該当します。そのため、購入する際には、薬剤師から対面での情報提供や指導を受ける必要があります。「一般用医薬品」は、リスクに応じて、第1類から第3類までの3種類に分けられます。

*医薬品の種類、販売制度について詳しくは下記をご覧ください。
政府広報オンライン「医薬品のネット販売を安心して利用するために」

コラム1

ジェネリック医薬品をご存じですか?

ジェネリック医薬品のポスター

医療用医薬品には、新薬(先発医薬品)と、新薬の特許が切れた後に、同じ有効成分を含み新薬と同等の治療効果を有するジェネリック医薬品があります。ジェネリック医薬品は、患者さんにとって、先発医薬品と同等の薬を使いながら薬代の負担を軽減することができるというメリットがあります。

ジェネリック医薬品について詳しくは下記をご覧ください。
政府広報オンライン「安心してご利用ください ジェネリック医薬品」

コラム2

セルフメディケーション税制をご存じですか?

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」(WHOの定義)を指します。セルフメディケーション税制とは、薬局やドラッグストア等で、税制対象の一般用医薬品を購入した場合、確定申告の際に購入費用について所得控除ができる制度です。(※医療費控除と選択制です)

税制の要件や対象品目一覧などは、ホームページで確認できます。
セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について

3薬の正しい使いかたとは?

薬の正しい使用方法

薬を使用する際には、次のような点への注意が必要です。

(1)使用前に説明書をよく読む
医療用医薬品・OTC医薬品には必ず説明書がついています。正しい使いかたや効能・効果のほか、副作用や保管上の注意に関することが記載されているので、使用前には必ず目を通す習慣を付けましょう。また、捨てずに保管し、必要なときにはすぐに読めるようにしておくことも大切です。

(2)用法・用量、タイミングを正しく守る
飲み薬は決められた量よりも多く飲めばさらによく効く、というものではなく、逆に副作用や中毒などが現われる危険もあります。薬を飲むタイミングについても同様です。特に高齢のかたや妊娠中・授乳中のかた、小児などの場合は、薬の種類や使用する用法・用量に注意する必要があります。医師や薬剤師などの専門家から十分に説明を受け、正しく使用しましょう。

Q 薬を飲むタイミングって?

A 用法の指示のうち、「食前」「食後」「食間」とは次のタイミングを言います。
「食前」:食事の約1時間から30分前(胃の中に食べ物が入っていないとき)
「食後」:食後約30分以内(胃の中に食べ物が入っているとき)
「食間」:食事の約2時間後(食事と食事の間)※食事中の服用ではない。

Q もし、薬を飲み忘れたら?

A 気づいた時にすぐに飲みましょう。
ただし、次の服用時間が近づいている場合は、その分は飲まずに次回からいつものように飲みます。決して2回分を一度に使用してはいけません。
なお、薬の種類によっては、飲み忘れたときの対応が異なる場合があります。薬を受け取るときに、医師や薬剤師などの専門家に確認してください。

Q 医師に処方してもらった薬(医療用医薬品)を他人に譲ってもいいですか?

A その人の症状や体質・年齢などを考慮して処方されているため、仮に症状が似ていたとしても、他人が使ってはいけません。また、OTC医薬品についても、薬剤師や登録販売者に相談して、必要な薬を選ぶことが大切です。安易に他の人にあげたり、もらった薬を服用することはやめましょう。

Q 薬を飲むときの水の量は?

A コップ1杯の水(または、ぬるま湯)が目安です。
少量だと薬がのどや食道などにはりついて炎症や潰瘍をおこすおそれがあります。なお、医師から水分摂取の制限を指示されている場合は、その指示内容に従ってください。

(3)薬の形状(錠剤・カプセルなど)に注意
治療効果の向上や副作用防止のため、錠剤や粉薬、カプセル、シロップといった様々な形状に工夫されています。形状によっては使いかたに注意しましょう。

使い方の注意例

錠剤、カプセル
これらの中には、薬に含まれる有効成分が少しずつ溶け出す、あるいは胃ではなく腸で溶けて効くように工夫された薬もあります。そのため、むやみに噛んだりつぶしたり、またはカプセルをはずしたりしてはいけません。どうしても飲みにくい場合は、医師や薬剤師などの専門家に相談しましょう。

目薬
容器の先に、目やまつ毛が触れないようにしましょう。また、2種類使用する場合は、少なくとも5分程度の間隔を空けましょう。

(4)薬の飲み合わせ
複数の薬を使用している場合、飲み合わせが悪いと十分な効果が得られなかったり、逆に効き過ぎて体に悪影響を及ぼしたりすることがあります。
また、食品やサプリメントの中にも、薬との飲み合わせが悪いものもあります。

一緒に飲むことを避けたほうがよい組み合わせ

「ワルファリン(血を固まりにくくする薬)」と「納豆」、「青汁」、「クロレラ食品」
「カルシウム拮抗薬(高血圧の薬の一種)」と「グレープフルーツジュース」
「風邪薬」と「アルコール」
「眠気防止薬」と「カフェインを含む飲料(コーヒーやいわゆるエナジードリンクなど)」

薬の正しい保管方法

使い方と同様に薬を正しく保管することも重要です。その際には、特に次のような点に注意しましょう。

(1)こどもの手の届かないところ
こどもの誤飲を防ぐために、こどものすぐ手の届く場所に薬を放置しないようにしましょう。薬を廃棄する際にも、こどもの目に触れないように処分しましょう。

(2)湿気、日光、高温を避ける
薬は、湿気・光・熱によって影響を受けやすいため、湿度の高くない、直射日光の当たらない、高温にならない場所で保管しましょう。
また、冷蔵庫で保存するよう指示された薬は、凍らせないように気を付けましょう。

(3)薬以外のものと区別
誤使用を避けるため、食品・農薬・殺虫剤・防虫剤などと一緒に保管するのは絶対やめましょう。

(4)他の容器に入れ替えない
薬の種類や使いかたが分からなくなり、誤使用によって事故を招くおそれがあるため、薬を他の容器に入れ替えての保管は避けましょう。

(5)古い薬は廃棄
使用期限を過ぎた薬は、分解や成分の変質によって本来の効果が得られなくなっている可能性があります。そのため、使用期限を過ぎている、または見た目に異常がある薬の使用はやめましょう。使用期限を過ぎた古いOTC医薬品は、未開封でも捨てましょう。医療用医薬品で飲み残しがある場合は、薬局に相談しましょう。

コラム3

市販薬でも誤った使いかたをしていると薬物依存症になるおそれがあります

処方箋がなくても購入できる市販薬は、効き目の弱い薬と思われがちですが、用法・用量を守らずに使用すると、効果が強く出すぎたり、副作用が現れたりする危険性があります。また、成分によっては依存性が強いものもあり、市販薬の使用をやめられなくなる危険性もあります。例えば、風邪を引いたときに使う咳止め薬の中には、依存症の原因となることが知られている成分が含まれているものがあります。そのため、長期にわたって漫然と使用したり、一度に多量に使用したりすることを避けるため、これらの成分が配合されているOTC医薬品の販売は、原則1人1個に制限されています。市販薬でも誤った使用方法によって薬物乱用になり健康被害が発生するおそれがありますので、購入の際には薬剤師や登録販売者から説明を受け、説明書をよく読んで、用法・用量を守って適切に使用しましょう。

4薬をより安全に使うには?

お薬手帳

自分が使っている薬の記録をつけておくための「お薬手帳」をオススメします。
これによって普段使用している薬や、薬に関する情報を正しく知ることで副作用や誤飲の防止などにつながる、薬によるアレルギー経験なども医師や薬剤師へ正確に伝えられるというメリットがあります。

「お薬手帳」に記載する主な項目

  • 氏名、性別、生年月日、血液型、住所、電話番号、緊急連絡先
  • アレルギー・副作用歴の有無、過去の病歴、かかりつけ医・薬剤師 など
  • 服用薬に関する情報、処方された薬の名前、用法・用量・期間 など

「お薬手帳」の利用方法

  • 医療機関や薬局に行った際には、毎回必ず医師・薬剤師に提出
  • 薬剤師が薬の情報(名前・飲み方・注意点など)を記入、または渡された説明文書などを自分で貼付
  • (必要に応じて)処方された薬に関して不明な点や気づいたこと、服用後に気分が悪くなったことなどを自分で空欄などに記入

なお、お薬手帳は診察・薬の購入時だけでなく、災害などの緊急時に備えて常に携帯しておくと、いざというときに安心です。
また、医療機関や薬局ごとに手帳を分けてしまうと、医師や薬剤師が正確な判断をしにくくなるため1冊にまとめましょう。スマートフォンなどで利用できる電子版お薬手帳もありますので、使いやすいものを選んで活用しましょう。

5薬について安心して気軽に相談したい!

医師が発行した処方せんはどこの薬局でも取り扱ってくれます。しかし、受診する医療機関によって薬局を変えるのではなく、“かかりつけ”の薬剤師・薬局を持つことをお勧めします。

異なる医療機関にかかった場合でも、かかりつけ薬局で処方してもらいましょう

より安全で効果的な医療を提供することを目的として、医師(処方せん発行)と薬剤師(調剤)がそれぞれ独立した専門的な立場で患者さんと接する仕組みを「医薬分業(いやくぶんぎょう)」といいます。医薬分業には次のようなメリットがあります。

医薬分業の主なメリット

  • 複数の医療機関から処方せんをもらっても、(1箇所の薬局で調剤を受けることで)飲み合わせの悪い薬や同じような薬が重複して出されていないかなどをチェックしてもらうことができる
  • 処方せんが発行されることで、患者自身が処方の内容を把握可能になる
  • 薬剤師による情報提供や服薬指導を受けることができ、飲み忘れや飲み残しを防ぐことができる
  • 在宅での療養が必要になっても、薬の管理、説明を受けられる
  • ジェネリック医薬品について説明してもらえて、ジェネリック医薬品を選択するか希望を聞いてもらえる

また、薬に関する相談や質問については、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本薬剤師会や都道府県薬剤師会などにある相談窓口でも受け付けています。医薬品の効能・効果、飲み合わせ、飲みかたや使いかたのほか、薬に関する心配ごとや疑問などがあれば気軽にご相談ください。

電話での相談窓口

PMDA「くすり相談窓口」
電話番号:03-3506-9425
受付時間:月曜日から金曜日(祝日・年末年始を除く) 午前9時から午後5時

(独)医薬品医療機器総合機構「全国のくすり相談窓口」

インターネットで自ら薬を調べる

使用している薬に関する副作用の可能性については、下記のウェブサイトでも調べることができます。
(独)医薬品医療機器総合機構「患者向医薬品ガイド・ワクチン接種を受ける人へのガイド・くすりのしおり(検索ページ)」

ご協力のお願い(患者の皆様からの医薬品副作用報告)

医薬品の安全対策に役立てるため、副作用を疑う症状が出たときは、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)にも報告をお願いします。(ご報告いただいた症状について、診断・評価結果等に関するお問い合わせには回答できませんのであらかじめご了承ください)。
*報告する内容や方法については、下記のウェブサイトをご覧ください。
(独)医薬品医療機器総合機構「患者の皆様からの医薬品副作用報告」

コラム4

健康サポート薬局や認定薬局を活用しましょう

健康サポート薬局は、地域の皆さんの健康の維持・増進を積極的に支援する薬局です。薬に関することに加えて、健康に関わる様々な相談に乗ってもらえます(健康サポート薬局は、平成28年(2016年)10月から始まった制度です)。
また、令和3年(2021年)8月からは、病気になった患者が安心して薬による治療が受けられるよう、地域の医療・介護の関係施設と連携しながら患者を支えていく役割を持つ薬局(「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」)を認定する制度が始まりました。
健康サポート薬局や認定薬局は、看板などで確認できるほか、インターネットで探すこともできます。かかりつけ薬剤師・薬局を選ぶ際に参考にしてください。

厚生労働省「薬局機能情報提供制度について」

コラム5

薬の副作用の救済制度をご存じですか?

医薬品は、適正に使用していても、完全に副作用を防ぐことは難しいとされています。医薬品を適正に使用していたにもかかわらず、副作用によって、入院治療を必要としたり、日常生活が著しく制限されるような障害が生じたりした場合には、健康被害の救済を図る「医薬品副作用被害救済制度」があります。万一のときのために、このような制度があることを、ぜひ覚えておいてください。

詳しく知りたいかたは、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトをご覧ください。
(独)医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用被害救済制度」

コラム6

薬と健康の週間 10月17日から23日

医薬品を正しく使用することの大切さ、そのために薬剤師が果たす役割の大切さを一人でも多くのかたに知ってもらうために、厚生労働省や都道府県、日本薬剤師会及び都道府県薬剤師会などが主体となって、全国各地で啓発イベントなど様々な活動が行われます。

「薬と健康の週間」について詳しくはこちら
厚生労働省「令和5年度「薬と健康の週間」の実施について」

R5「薬と健康の週間」ポスター令和5年薬と健康の週間ポスター(厚生労働省)

 

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

リンク・著作権等について
このコンテンツは役に立ちましたか?
このコンテンツは分かりやすかったですか?
このコンテンツで取り上げたテーマについて関心が深まりましたか?

ご意見・ご感想

関連サイト

  • 世論調査別ウインドウで開きます
  • 首相官邸別ウインドウで開きます

外部のウェブサイトに移動しますが、よろしいですか。
よろしければ以下をクリックしてください。

ご注意
  • リンク先のウェブサイトは、内閣府政府広報室のサイトではありません。
  • この告知で掲載しているウェブサイトのURLについては、2023年11月21日時点のものです。
  • ウェブサイトのURLについては廃止や変更されることがあります。最新のURLについては、ご自身でご確認ください。
Top