日本では毎年約12,000人が新たに発症!古くて新しい感染症、「結核」にご注意を!

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「結核」は過去の病気だと思っていませんか? 実はそうではありません。日本では毎年約12,000人が新たに結核を発症し、毎年約1,900人が結核で亡くなっています。結核の予防と早期発見・早期治療のために、結核のことを正しく知っておきましょう。

1結核って今も発生しているの?日本国内では、毎年約12,000人が新たに結核を発症しています

結核は、結核菌によって引き起こされる感染症です。結核菌は、体内に入り込んで増殖した場所によって、肺結核、腸結核、腎結核などを引き起こします。日本ではこのうち「肺結核」が、結核患者の約8割を占めています。

結核菌が肺の中で増殖し、発症すると、咳(せき)や痰(たん)、発熱など、風邪のような症状が現れ、そうした症状が長く続くのが特徴です。また、体重が減る、食欲がなくなる、寝汗をかくなどの症状が現れたり、病気が進行すると血の混じった痰が出始め、さらに重症になると血を吐いたり、呼吸困難に陥ったりします。

※参考:厚生労働省「結核(BCGワクチン)」

昭和20年代まで、結核は日本人の死亡原因の第1位であり、その高い死亡率や感染力のために「不治の病」「亡国の病」などとも呼ばれていました。第二次大戦後、我が国でも抗生物質ストレプトマイシンの普及により治療の途が開け、BCGワクチンの普及や生活水準の向上などによって、結核による死亡者・死亡率は激減しました。

しかし近年でも、毎年約12,000人が新たに結核を発症し、約1,900人が結核で亡くなっています。

我が国の結核による死亡者・死亡率の推移
※縮尺の関係から分割して作図しています。

資料:公益財団法人結核予防会結核研究所「結核の統計2013」及び厚生労働省「2021年 結核登録者情報調査年報集計結果」から政府広報室作成

日本では、結核患者の減少とともに結核への関心が薄れ、予防に対する意識も薄らいだことが懸念されています。そのため、結核を発症してもそれと気づかずに、受診が遅れたりするケースが少なくありません。

結核を早期に発見し、治療するために、結核について改めて考えてみましょう。

高齢者は特にご注意を!
~発症者の6割が70歳以上。加齢に伴う免疫力の低下が、結核を招く。

最近の日本の結核患者の傾向をみると、70歳以上の高齢者が約6割を占めています。これは、かつて結核がまん延したときに感染し、若いうちは発症が抑えられていたのが、高齢になって免疫力が落ちたことなどから発症する人が増えたと考えられます。

また、人口に対して結核にかかる率(罹患率)は、東京などの大都市圏で高くなっています。

(出典:厚生労働省「平成27年結核登録者情報調査年報集計結果」

2どのように感染・発症するの?咳やくしゃみなどで感染し、免疫力が弱くなったときに発症します

結核にはどのように感染し、発症するのでしょうか。
結核を発症した患者は、ある程度症状が進むと、体内で増殖した結核菌を体の外に排出するようになります。そうした結核患者の咳やくしゃみとともに結核菌の混ざったしぶきが空気中に飛び散り、それを周囲の人が直接吸い込むことによって人から人へ感染します。

ただし、吸い込まれた結核菌の大半が鼻やのど、気管支などにある繊毛の働きによって体の外へ排出されますし、排出されずに肺に侵入した結核菌も、体の免疫力によって退治されてしまうので、ほとんどの場合は感染にいたりません。結核菌が、そうした繊毛の働きや免疫力をくぐり抜けて、肺の奥にまで侵入した場合に、結核に感染します。

ただし、結核に感染したからといって必ず発症するわけではありません。通常は、体の免疫力によって結核菌は増殖を抑え込まれていわば休眠状態になるため、そのまま感染者が亡くなるまで発症しなかったり、いったんは感染しても免疫力によって結核菌が死滅したりすることが大半です。

しかし、体の免疫力が結核菌を抑えきれない場合、結核菌は感染後6か月から2年ほどの時間をかけてゆっくりと増殖し、発症にいたります。乳幼児の場合は、免疫力がまだ不十分なため、感染するともっと短い期間で発症する場合があります。

また、感染者が高齢になったり他の病気にかかったりして免疫力が落ちると、休眠していた結核菌が増殖を始めて、結核を発症することがあります。

結核を発症した場合の初期症状は、咳や痰、発熱など風邪に似た症状で、これらが2週間以上続きます。このような症状が長く続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

結核に感染しても、発症するとは限らない(肺結核の場合)

資料:公益財団法人結核予防会パンフレット「結核の常識2015」をもとに作成

3もしも結核と診断されたら?結核は治せる病気。医師の指示に従って、きちんと薬を飲み続けることが大切です

結核は早期発見・早期治療によって治せる病気になっています。咳や痰などの症状が2週間以上続く、急に体重が減ったなど、結核を疑う症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。

結核菌に感染しているかどうかは、ツベルクリン反応検査(※1)やインターフェロンガンマ遊離試験(※2)などによって調べます。また、発症しているかどうかは、胸のレントゲン検査や喀痰(かくたん)検査(※3)で調べます。

※1 ツベルクリン反応検査:ツベルクリンという液を皮内注射して、48時間後に判定する検査。結核菌に感染した人やBCG接種を受けた人は、皮膚が赤く反応する。

※2 インターフェロンガンマ遊離試験:血液検査によって結核の感染を調べる方法。

※3 喀痰検査:痰を採取してその中に結核菌があるかどうかを調べる検査。

検査の結果、咳や痰などに結核菌が含まれている場合は、結核をほかの人にうつす可能性があるため、感染症法に基づき、専門の医療機関に入院して治療を受けることになります。結核を発症していても人にうつす可能性がない場合は、通院で治療します。

入院期間の平均は約2か月で、排菌が止まってほかの人にうつさないことが確認されてから退院し、通院治療に移ります。

結核の治療は服薬を中心とし、病状や経過によりますが、おおむね6か月程度の期間、薬を飲んで治します。

そこで重要なのは、医師が指示した薬を、毎日、きちんと飲み続けることです。症状が消えたからといって自分の判断で途中で薬をやめてしまうと、結核菌が薬に耐性を持つことがあり、再び薬を飲み始めても効きにくくなり、その後の治療が非常に難しくなります。

なお、結核と診断されて治療を受ける場合は、安心して治療に専念できるよう、医療費の公費負担を行う制度が設けられています(※4)。詳細は最寄りの保健所(※5)にお問い合わせください。

※4 結核医療費公費負担制度:感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の第37条と第37条の2に基づく。

※5 厚生労働省「保健所管轄区域案内」
(市区町村ごとの、管轄する保健所の住所や電話番号等が分かります)

4感染や発症を防ぐには?規則正しい生活と栄養バランスのよい食事で普段から免疫力を高めておきましょう

結核の対策としては、まず、結核菌の「感染を防ぐこと」、そして、もしも結核菌に感染した場合には、「発症を防ぐこと」が重要です。

感染予防・発症予防のどちらにも共通する重要なことは、体の免疫力を高めておくことです。もしも結核菌を吸い込んでも、免疫力が高ければ、結核菌が体内深く侵入する前に結核菌を退治できます。また、結核菌に感染してしまった場合でも、免疫力が高ければ結核菌の増殖が抑えられるため、発症せずに済みます。

免疫力を高めるには、規則正しい生活と栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動などが重要です。ふだんから、夜更かしなどの不規則な生活や喫煙をせずに、健康的な生活を心がけましょう。

また、発症を予防するために、次のような対策も行いましょう。

(1)乳幼児はBCG接種を

乳幼児は免疫力が弱いため、結核菌に感染すると重症になりやすく、生命にかかわることがあります。乳幼児の結核予防にはBCG接種が有効なので、結核の重症化を防ぐワクチンとして、生後1歳までに接種することになっています。

(2)健康診断を受け、症状があれば早めに受診しましょう

BCGの予防効果は10数年で切れるといわれており、成人の結核予防に効果は高くないとされています。乳幼児の時にBCG接種を受けた人も、成人になったら定期的に健康診断を受け、症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

風邪のような症状が続くときは、早めに医療機関を受診しましょう。結核を早く発見することで、重症化を防ぐだけでなく、家族や職場など周囲の人たちへの感染を防ぐことができます。

(3)咳(せき)エチケット

咳やくしゃみをするときは、ティッシュペーパーで口元を押さえたり、マスクをしたりするなど、「咳エチケット」を心がけ、周囲の人への感染を防ぎましょう。咳エチケットは、結核の感染予防だけでなく、インフルエンザなど他の感染症を予防する上でも重要です。

9月24日から30日は結核予防週間です

厚生労働省では、毎年9月24日から30日を「結核予防週間」と定めて、地方自治体や結核予防会などの関係団体と協力し、結核に関する正しい知識の普及啓発を図るための様々な活動を行っています。期間中は、全国各地で様々なイベントが行われます。この機会に、結核に対する知識と理解を深めましょう。
厚生労働省「結核(BCGワクチン)」

(平成29年「結核予防週間」ポスター)

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

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