餅による窒息に要注意!喉に詰まったときの応急手当は?
正月は家族でお雑煮を食べるなど餅を食べる機会が多いと思います。でも気をつけたいのは餅を喉に詰まらせる窒息事故。特に、高齢者の餅による年間の死亡事故の半数は、1月に集中しており、特に正月三が日に最も多くなります。もし家族が餅を喉に詰まらせたらどのように対応したらよいのか、また、餅を食べるときにはどのようなことに注意したらよいのかについて紹介します。
1餅の窒息事故は正月三が日に集中!?
餅による高齢者の死亡事故について、消費者庁が平成30年(2018年)から令和元年(2019年)の詳細を分析したところ、餅による高齢者の死亡事故の43%が1月に、14%が12月に発生し、特に正月三が日に多いことが分かりました。また、男性の死亡者数は女性の2.6倍も多いことが分かりました。
高齢になると、かむ力や飲み込む力が弱くなります。特に餅を食べる機会が多い年末年始は、餅による窒息事故にご注意ください。
※参考:消費者庁公表資料「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください!-加齢に伴い、噛む力や飲み込む力が衰えてきます。小さく切って、少量ずつ食べましょう-」(2020年12月23日)[PDF:1.22MB]
2餅が喉に詰まったときの正しい応急手当の方法は?
餅を喉に詰まらせた場合、気道が塞がれて、窒息してしまう恐れがあります。そのようなときは、周りの人が直ちに詰まらせた餅を取り除くこと(気道異物除去)が必要です。
餅を喉に詰まらせたときのサイン
次のような症状があるときは、異物が喉に詰まった(気道閉塞)が疑われます。
- 咳込んだり、苦しそうにしている 。
- 声を出せず、喉をつかむ動作をする(窒息のサイン(チョークサイン) )【図参照】。
- 顔色が悪い。
図:窒息のサイン(チョークサイン)
餅を喉に詰まらせたときに、まず行うこと
呼びかけてみて、まず、声が出せるかどうか確認し、声が出せない場合は、喉に詰まった餅の除去が必要です。
咳をすることが可能であれば、できるかぎり咳をさせます。強い咳をすることもできないときには窒息と判断し、大声で助けを呼んで周りの人に119番通報やAEDの搬送を依頼します。そして、直ちに気道異物除去を行います。救助者が1人の場合、餅を詰まらせたかたに反応がある間は、119番通報よりも異物除去を優先してください。
呼びかけに反応がない場合、また、応急手当の間に反応がなくなった場合は、直ちに心肺蘇生の手順を開始してください。
気道異物除去の方法
背中を強く叩いて詰まったものを吐き出させる「背部叩打法(はいぶこうだほう)」
背中を力強く叩いて詰まったものを吐き出させます。手順は次のとおりです。
1.背中を強く叩く
手のひらの付け根部分で左右の肩甲骨の中間あたりを、数回以上力強く叩きます。
相手の上腹部を手前上方に強く突き上げて、喉に詰まった餅を取り除く「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」
背部叩打法で餅が出てこないときは、次に「腹部突き上げ法」を行います。ただし、この方法は、乳児や妊婦、高度肥満のかたには行ってはいけません。
相手の上腹部を手前上方に強く突き上げて、喉に詰まった餅を取り除く方法です。
- 相手の後ろにまわり、両方の手を脇から通し、ウエスト付近に手を回します。
- 一方の手で握りこぶしをつくり、その親指側をへそより少し上に当てます。
- その握りこぶしをもう一方の手で握って、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。
もし窒息への対応が途中で分からなくなったら、119番通報をすると通信指令員が行うべきことを指導してくれますので、落ち着いて指示に従ってください。
なお、腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、速やかに医師の診察を受けさせてください。
参考:
心肺蘇生の手順は下記の記事をご覧ください。
3餅を喉に詰まらせないためには
餅を喉に詰まらせないようにする4つのポイント
(1)餅は小さく切って、食べやすい大きさにしましょう
高齢者はかむ力や飲み込む力が弱いため、餅はあらかじめ食べやすい大きさに小さく切っておきましょう。
(2)先にお茶や汁物を飲んで、喉を潤しておきましょう
餅を食べる前に、先にお茶や汁物などを飲んで、喉を潤しておきましょう。ただし、餅がうまく飲み込めないからといって、お茶などで無理やり流し込もうとするのは危険です。お茶や汁物はあくまでも唾液の補助と考えましょう。
(3)急いで飲み込まず、ゆっくりとかんでから飲み込みましょう
餅を食べるときは、少量ずつ口に入れ、よくかんで食べましょう。よくかむことによって、唾液の分泌も促され、スムーズに飲み込めるようになります。口の中の餅を全て飲み込んでから、次の餅を口に入れるようにしましょう。
(4)かむ力や飲み込む力が弱い高齢者などと一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払いましょう
少なめの量を口に入れているか、しっかりかんで食べているかなど食事の様子に注意を払い、見守りましょう。
(取材協力:消費者庁、総務省消防庁 文責:政府広報オンライン)