「自分は大丈夫」は危険…農作業中の熱中症死亡事故が急増!今日からできる対策は?

POINT
農作業中の熱中症による死亡事故が急増しています。その背景には、近年の気候変動による気温の上昇があります。農作業の経験が長い人でも、「これまでやってこられたのだから大丈夫」、「さすがに命にかかわることはないだろう」と過信せず、しっかりと対策をすることが大切です。
1農作業中の熱中症事故の現状
熱中症による死亡事故者が3年で2.5倍に
国内の気温が年々上昇しているのに伴い、近年、農作業中の熱中症による死亡事故者数が増加しています。農林水産省の調査によると、令和6年(2024年)の熱中症による死亡事故者数は、59人へと大幅に増加し、令和3年(2021年)と比べて約2.5倍となっています。
資料:農林水産省「農作業死亡事故調査」から政府広報室作成
事故・ヒヤリハットの事例
熱中症は、高温多湿な環境下において、体温調節機能などがうまく働かなくなり、手足のしびれ、頭痛、吐き気などの症状が現れるほか、重篤な場合には、意識障害や死亡に至ることもあります。農作業は1人で行うことが多いため、熱中症の症状に気付きにくく、重篤化しやすくなります。夏の農作業中に起こった事故・ヒヤリハット事例をご紹介します。
- ●ビニールハウス内での作業中に死亡(60代男性)
- 5月、ビニールハウス内でマルチ張り作業を行っていたところ、心肺停止の状態で発見され、病院に搬送後、死亡した。農業経験50年のベテランであった。

- ●草刈り作業中に死亡(70代男性)
- 朝から草刈り作業を行っていたところ、意識不明の状態で発見され、病院に搬送後、死亡した。当日の最高気温は34.4度であった。

- ●体温が急上昇し危険な状態に(70代男性)
- コンバインを使って稲刈り作業を行っていたところ、体温が上昇して、危険な状態になっている自覚がないまま作業を継続した結果、体温がさらに上昇し、夜まで下がらなかった。
直射日光下での作業だけでなく、高温多湿になりやすいビニールハウス内など、農作業中の様々な場面に熱中症による事故のリスクが潜んでいます。
2熱中症をアイテムで防ごう!~様々なアイテムの活用~
農作業は、夏場でも長袖・長ズボンを着用することが多いため、熱中症のリスクが高い業種です。熱中症を防ぐ様々なアイテムを活用し、リスクを下げましょう。
体温上昇を防ぐアイテム
- ●ファン付きウェア
- 衣服の中に外気を取り込み、汗を気化させることで涼しくします。
- ●冷却ベスト
- 保冷材などを用いて体を直接冷やします。ファン付きウェアとの併用も効果的です。
- ●ネッククーラー
- 血管が多く集まる首元を冷やすことで、効率よく体温上昇を抑えることができます。
- ●ヘルメット・帽子
- 遮熱素材を使用したものや、通気性を高めたものなどがあります。
自身の体調を把握するアイテム
ウェアラブル端末は、手首などに装着することで、体調を管理することができます。深部体温や水分バランスなどを測定し、休憩や水分補給のタイミングを通知してくれるものもあります。

3熱中症を行動で防ごう!~作業の進め方などの工夫~
第2章で紹介したアイテムの活用と併せて、農作業の進め方を工夫し、熱中症を予防しましょう。
時間や手順を工夫する
- ●時間帯を工夫する
- 屋外での作業は、朝夕の涼しい時間帯にずらすなど、できるだけ暑い時間帯を避けましょう。
- ●休憩をこまめに取る
- 作業の区切りを「キリの良いところまで」と考えると長引きがちです。作業は、範囲や量ではなく「時間」で区切り、こまめに休憩を取りましょう。
- ●休憩場所を確保する
- 農作業を行う際には、あらかじめ涼しい日陰や休憩所の位置を確認し、事前にそこに経口補水液や冷却グッズ、きれいな水などを備えましょう。

予防の意識を高める
- ●1人で作業しない・声をかけ合う
- 熱中症による死亡事故の多くは、1人で作業しているときに発生しています。できるだけ1人で作業しないようにし、やむを得ず1人で作業する場合は、30分に1回家族に連絡するなど、ルールを決めておきましょう。また、近隣同士で声をかけ合う、様子を見るなども心がけましょう。
- ●熱中症の危険度を判断するための指標である「暑さ指数」を参考にする
-
暑さ指数(WBGT)は値が大きいほど危険性が高いことを示しています。値を参考に、その危険度に応じた作業を行うように工夫しましょう。暑さ指数が高い日に負荷の大きい作業を予定している場合は、より軽い作業への変更を検討したり、変更が難しい場合は、時間帯を朝夕にずらしたり、休憩や水分補給の回数を増やしたりしましょう。
また、お住まいの地域の暑さ指数は、環境省「熱中症予防情報サイト 暑さ指数」からご確認できます。
暑さ指数に応じた作業の例

資料:JIS Z8504「熱環境の人間工学ーWBGT(湿球黒球温度)を用いた熱ストレス評価」図表E.1「 ISO8996からの代謝率レベルの分類」から政府広報室作成
休憩時は、水分・塩分補給を忘れずに
水分補給には、カフェインを含まない水や麦茶が適しています。また、大量に汗をかいた後には、塩分・糖分を含むスポーツドリンクが効果的です。その他、熱中症の初期症状が現れた際(脱水時)に、高い効果が期待できる飲み物として経口補水液があります。しかし、経口補水液には、500ミリリットル当たり1.1から1.8グラムの食塩相当量が含まれていることから、スポーツドリンクのように飲むと塩分の取り過ぎにつながりますので、日常的に飲むことは止めましょう。
4もしものときの対処法
様々な対策をしても、熱中症になる可能性はあります。少しでも異変を感じたら、無理をせず休むことが重要です。症状が重いときや緊急性が高いときは、ためらわず119番に通報して救急車を呼びましょう。判断に迷ったときは、総務省消防庁が運用する「#7119」(救急安心センター事業)にご相談ください。相談内容を基に、応急手当の方法の助言や、適切な医療機関の案内が受けられます。
- ●症状:めまい、立ちくらみ、手足がつる、こむら返り
- 涼しい場所に移動して安静にし、水分や塩分を補給しましょう。
- ●症状:頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下
- ためらわず救急車を呼びましょう。救急車が到着するまでの間に、作業着を脱ぎ(脱がせ)、全身を速やかに冷やしましょう。
コラム:7月から9月は「夏の熱中症等対策声かけ期間」
農林水産省では、7月から9月までを「夏の熱中症等対策声かけ期間」とし、家族・職場・近隣・地域全体で声をかけ合い、熱中症を予防する取組を実施しています。キャッチフレーズは「いのちをうばう、夏のひとり作業」です。「飲み物は持った?」、「顔色悪いよ、休憩しよう」、「今日は熱中症警戒アラートが出ているよ」など、お互いに気を配り、声をかけ合うことで、農作業中の熱中症による死亡事故を防ぐことを目指しています。
また、この期間は「熱中症対策声かけ隊」として、農業従事者やJA、資材販売店など地域の様々なかたが、見回りや販売時の声かけなどを通じて注意喚起に取り組んでいます。声かけ隊は8月末まで参加を募集していますので、できることから一緒に取り組み、皆さんのひと声で農作業中の熱中症を防ぎましょう。
農林水産省「熱中症等対策声かけ隊 募集ページ」
まとめ
熱中症警戒アラートが発表される日は年々増加しており、「これぐらいは大丈夫」といったこれまでの経験は通用しなくなっています。熱中症の危険性への認識を新たにし、できる対策をしっかりと行っていきましょう。
(取材協力:農林水産省 文責:内閣府政府広報室)

