地域の記憶を未来へつなぐ NIPPON防災資産

今回のテーマは「地域の記憶を未来へつなぐ NIPPON防災資産」
9月1日は「防災の日」です。災害はいつ、どこで起こるか分かりません。だからこそ大切なのが、災害リスクを「自分事」として捉え、災害に対する備えや主体的な避難行動などに結びつけていくことです。そこで注目したいのが「NIPPON防災資産」。2024年5月に始まったこの新しい認定制度は、地域に受け継がれてきた災害の「記憶」を人から人へ伝え、未来の防災につなげていくものです。お祭りや語り部、災害遺構など、その伝承の形は様々で、あなたの住む地域にも、過去の災害を伝える施設や活動があるかもしれません。
番組では、「えちごせきかわ大したもん蛇(じゃ)まつり」など、全国に広がる様々な「NIPPON防災資産」を紹介します。災害伝承を通じた災害リスクの「自分事化」について学んでいきましょう。 
- ゲスト
- 国土交通省
水管理・国土保全局
河川計画課 黛 由季
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和8年(2026年)8月30日
- 再生時間
- 18分41秒
- 配信終了予定日
- 令和9年(2027年)8月29日
文字で読む
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杉浦
- 明後日9月1日は「防災の日」です。今から103年前の1923年9月1日に発生した関東大震災を教訓に、一人ひとりが防災について考え、備えることの大切さを広く知ってもらうために設けられた日です。先月、熊本県を震源とする地震が発生しました。
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松井
- 発生からおよそ1か月になりますが、今も不自由な暮らしや不安な日々を送っているかたがたくさんいらっしゃるかと思います。一日も早く安心して過ごせる日々が戻ることを願っています。
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杉浦
- 本当にそうですよね。僕も阪神・淡路大震災を経験していますけども、あの時は本当に不安でしたし、同時に災害への備えの大切さを実感しました。日本は地震や津波、土砂災害、洪水など、自然災害が起こりやすい国で、最近は気候変動の影響で大雨による被害も増えていますし、一度起きると被害が大きくなるケースも多い。だから、これまでの災害を教訓に「災害はいつ、どこで起きてもおかしくない」という意識を持って、災害のリスクを自分事化して、主体的な避難行動や防災行動をとることが大切だと、今回改めて考えさせられました。
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松井
- そうですね。自分事化って「誰かの話」じゃなくて、「自分だったらどうするか」を考えるということですよね。
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杉浦
- そうなんだよね。こうした観点から創設されたのが、今日のテーマ「NIPPON防災資産」なんだって。ここからは、今日の講師に教えてもらいましょう。国土交通省河川計画課の黛 由季さんです。
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松井
- 黛さん、まず「NIPPON防災資産」とはどういったものか教えていただけますか?
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黛
- はい。「NIPPON防災資産」は、過去の災害の経験や教訓を、今を生きる私たちの災害に対する備えや主体的な避難行動、地域の防災力の更なる向上につなげるための認定制度です。例えば、災害の記録を展示する施設や、災害の記憶を語り継ぐお祭り、地域で防災を学ぶ活動、教訓を伝える語り部などの活動を「資産」として認定しています。
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杉浦
- 2024年5月に創設されたばかりの新しい認定制度なんですよね。
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松井
- 防災対策というと、ハザードマップの作成や備蓄などに関する取組を思い浮かべるんですけど、今回、あえて認定制度という取組にしたのは、どんな狙いがあったんでしょうか?
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黛
- この制度を通じて、防災資産のある地域の方々の災害リスクの「自分事化」が進むことをはじめ、災害伝承に取り組む方々の工夫や努力が国内外に伝わり、波及効果を生み出すことや、社会全体の災害に対する意識が高まることを期待しています。
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松井
- 「伝承」を通じて、災害リスクの「自分事化」を図っていくということなんですよね。
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黛
- はい。過去の災害を経験した方々の言葉や、地域に伝わる教訓などには、単なる知識以上に「自分にも起こり得ることなんだ」と実感させる力があります。伝承を通じて災害を身近な問題として捉えてもらうことで、防災を自分事として考え、行動につなげてもらえるのではないかと考えたんです。そこで、地域で大切に受け継がれてきた伝承をしっかり評価し、多くのかたに知っていただく仕組みとして、認定制度を作りました。
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杉浦
- この認定制度には「優良認定」と「認定」がありまして、すでにそれらの認定を受けた施設や活動が32件あるそうですね。
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松井
- 32件あるんですね。評価のポイントはどういったところなんですか?
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黛
- まず大切なのは、災害の事実や教訓が正しく伝えられていることです。そのうえで、「自分だったらどうするだろう」と考えるきっかけになるか、実際の備えや行動につながる学びがあるかを評価しています。さらに、普段の暮らしの中で自然と防災を意識できるような工夫や仕掛けがあるかも、大きなポイントになっています。
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松井
- ちなみに、こうしたネーミングには、「○○遺産」という言葉が使われることが多いと思うんですけど、こちらは「遺産」ではなく「資産」なんですね。
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黛
- はい。この名称を「資産」としているのは、「それぞれの活動が過去のものではなく、現在、そして未来において、価値を発揮し続けるものであってほしい」という願いからで、取組の継続、発展によって、「資産」の価値が更に高まることを期待して名付けました。
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松井
- そうなんですね。「遺産」というと残して守るイメージがありますけど、「資産」だと、「これからもいかして育てていくもの」という意味合いが強くなりますもんね。実際、どのような施設や活動が認定されているんですか?
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杉浦
- そう、それが気になるよね。認定されているものの中には、ギネスブック認定の「大蛇」もあります! ここからは、すでに認定されている「NIPPON防災資産」をピックアップしてご紹介していきましょう! まずはこちら、「えちごせきかわ 大したもん蛇まつり」。
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松井
- 「たいしたもんじゃ」の「たい」が「大きい」という漢字、「じゃ」が「蛇」という漢字で「たいしたもんじゃまつり」。お祭りのネーミングがダジャレなんですね。
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杉浦
- 名称はダジャレでも、すごいんだよね。写真が手元にあるんですけど、この大蛇がね、本当に「たいしたもんじゃ」なんですよ!
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松井
- そうなんですよ! とっても長い蛇のお神輿みたいなものを、すごくたくさんの人が担いでいるんです。この蛇が何でできているのかは、写真からは分からないんですけども。
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杉浦
- こちらは、新潟県の関川村で開催されているお祭りですね。村に古くから伝わる大蛇伝説と、1967年に発生した羽越水害(うえつすいがい)を伝承するお祭りで、この大蛇は竹と藁でできております。
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松井
- 竹と藁だけで!? すごい!
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杉浦
- そして、この長さね。羽越水害が発生した8月28日にちなんでですね、82.8m! 長いよね。これは、ギネス世界記録に認定されております。しかも、今年(2026年)の大蛇パレートは今日(8月30日)だって!
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松井
- じゃあ、今日、新潟県の関川村では、この蛇がいるんですね! いいですね。人生で一回は見てみたいですね。きっと大迫力でしょうね! 黛さん、このお祭りはどのような点が評価されて認定されたんですか?
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黛
- はい。お祭りのシンボルとなる大蛇の長さを羽越水害の発生日にちなんで設定し、その大蛇を54の集落の村民が分担して作るだけでなく、村の中学生全員が参加して事前学習でお祭りの開催意義を学んでいることが高く評価されています。これにより2022年8月に発生した大雨では、住民自らが避難を開始する行動につながり、人的被害を防いだんです。
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松井
- まさに、教訓が行動につながったんですね。お祭りに参加することで「過去の水害の教訓と備えの意識が、地域に深く浸透している」ということですね。
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杉浦
- そうだね。では、続いての「NIPPON防災資産」はこちら、「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」。関西や東海地方にお住まいのかたにはおなじみの施設かもしれません。兵庫県神戸市にある施設で、1995年に発生した阪神・淡路大震災の経験や教訓を伝えるとともに、防災の大切さを学び、災害による被害を少しでも減らすための知識や技術を広く発信している施設です。
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松井
- こちらは、どのような点が評価されているんですか?
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黛
- 阪神・淡路大震災の体験談を交えた展示や、体験コーナーが充実していること。また、語り部ボランティアによる被災体験談やワークショップ、小中学生などを対象にした防災セミナーが多く実施されている点が特に優れているんです。
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杉浦
- 360°に広がるVR映像で、地震と津波・風水害の現場をリアルに体感できるギャラリーがあったりとか。手元に写真がありますけども、「震災直後のまち」という空間で、等身大のジオラマ空間なんだって。
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松井
- 私も今、写真を見ているんですけど、本当に建物も車も、怪獣に押し潰されたように破壊されていたりして、これが実際にあった状況にかなり近いということなんですよね。それをリアルに想像することによって、防災意識が高まったり、どうするべきなのかという考えになっていきそうですね。
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杉浦
- リアルさが伝わるよね。さあ、次にいきましょう。続いての「NIPPON防災資産」はこちら、「気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館」。こちらは、2011年に発生した東日本大震災の記憶と教訓を「目に見える証」として伝えている、宮城県気仙沼市にある施設です。先ほどの施設ではジオラマで被災地の様子を再現していましたが、こちらは被災した気仙沼向洋高校の旧校舎を「ありのままの姿」で保存して公開しているんですね。
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松井
- こちらも今、手元に写真があるんですけども、教室だったと思われる場所に、津波で流されてきたであろう車が入り込んでいますよね。「こどもたちが勉強する教室」っていう日常が、一瞬で失われてしまったことが、分かりますね。地震や津波の恐ろしさがとてもリアルに伝わってきますし、写真からこれほどの衝撃が伝わってくるので、実際にここに立ったら言葉を失ってしまいそうですね…。
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黛
- そうですよね…。また、こちらの施設では、地域の語り部メンバーと協力しながら、地元の子どもたちを語り部ガイドとして育成し、若い世代への継承にも取り組んでいるんです。実際、地元の小中高生がボランティアとして語り部活動を行っていて、タイミングが合えば一緒に施設内を見学することもできます。
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杉浦
- さあ、そして最後にピックアップする「NIPPON防災資産」は、黛さんにとって特別な場所なんですよね?
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黛
- はい。新潟県燕市にある「信濃川大河津資料館を拠点とした地域活性化の取組」です。1896年に発生した信濃川の堤防決壊による大水害を乗り越え、川との共生を模索してきた新潟の地域防災の原点とも言える場所で、近代から現在に至るまで、新潟で起きた災害の事実や教訓を伝え続けています。
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松井
- 黛さんとはどのようなご縁があるんですか?
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黛
- 実は大学1年の時に訪ね、国土交通省に入省するきっかけになった施設なんです。まだ防災資産に認定される前でしたが、当時の洪水の写真や資料、そして「大河津分水(おおこうづぶんすい)」という、信濃川の水を日本海へ逃がして洪水を防ぐために造られた、大規模な放水路の展示を見て、地域の人たちが何度も挫折や失敗を乗り越えながら、水害から命を守ってきたことを知りました。当時の私は建築家を目指していたのですが、この施設を訪れたことで河川行政に興味を持つようになり、深刻になる一方の水害から一人でも多くの命を守る仕事がしたいと思うようになったんです。
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松井
- それで今、河川計画課でお仕事をされているんですね。まさに防災資産に込められた先人たちの思いが、次の世代につながっているということですね。
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黛
- そうですね。災害はニュースや映像で見るだけだと、どうしても遠い所の出来事として感じてしまうことがあるかと思います。でも、実際にその場所を訪れて遺構を見たり、語り部のかたのお話を聞いたりすると、「もし自分だったらどう行動するだろう」と具体的に考えるきっかけになります。旅行などで「NIPPON防災資産」のある地域を訪れる機会があれば、是非足を運んでみてください。そこで得た気付きや学びは、いつか自分自身や大切な人の命を守ることにつながると思います。
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松井
- 私が今日の話の中で注目したのは、「自分だったらを考えるきっかけ「NIPPON防災資産」」です。
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杉浦
- いいですね! 僕は「「NIPPON防災資産」を訪れて気づきや学びを得ましょう」です。
