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Highlighting JAPAN

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特集一人一人が一人一人を幸せにする国際協力

イトゥリ地方へ再び平和を(仮訳)

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内戦・紛争で疲弊したコンゴ民主共和国イトゥリ地方に安全・治安を再び取り戻すために、国際連合の4つの関係機関が協力してプロジェクトにあたっている。以下は、国際連合開発計画のJean-François DUBUISSON氏によるコンゴ・イトゥリからの現地報告だ。

コンゴ民主共和国の北東部に位置するイトゥリ地方は、1999年から2007年まで続いたレンドゥ族とヘマ族の間の民族対立により大打撃を受けた。この民族間の武力衝突により5万人を超える人命が失われ、また数十万の人々が強制退去を強いられた。イトゥリ地方に安全と治安を再び取り戻すために、今日、国際連合の4機関が協力し合っている。

「イトゥリ地方におけるコミュニティ強化と平和構築支援」(CEPI)は、コンゴ共和国で国際連合が展開している最初のジョイント・プロジェクトだ。国際連合人間の安全保障基金(UNTFHS)から資金援助(5,022,817ドル)を受けたこのプロジェクトの目的は、持続的平和を根付かせること、そして、敵対関係にあるコミュニティ間の和解を図ることである。

CEPIプロジェクトを通じて、人間の安全保障という観点から様々な活動――経済開発、基本的な社会サービスへのアクセス、コミュニティ間における平和的な共存共栄の促進など――が行われる。同時並行的に展開される補完的な措置は、コミュニティに社会経済的、物質的そして法的な安定性を取り戻すことを目的としている。

とりわけ重視されているのは、若年世代における社会的統合だ。資格や就業機会がないと、若年層が武装集団に身を投じる可能性が高くなり、これは結果的にコミュニティの安定・治安にとって脅威になる。

こうした点を踏まえ、国連は、現地当局と密接に連携しながら、これまでにトレーニング・センターを建設・設置してきた。こうしたトレーニング・センターは2011年中には完全にスタートする予定だ。センターが完全に稼働した暁には、毎年780人の若者が配管、木工、農耕そしてエンジニアリングに関する技能研修を受けることが可能になる。

また、コンゴ国家警察(PNC)も、CEPIプロジェクトの恩恵に与っている。ブニア、マハギそしてジュグの各都市には、ソーラーパネルを装備した新たな警察署が設置された。 このおかげで移動手段であるオートバイやその他の車両を良いコンディションに保つことができ、迅速な介入の機会が担保されるようになった。

CEPIは数多くの様々な成果をあげてきたが、中でも特筆すべきは、国内市場の復興の実効性を高めるために、3つの戦略的区域(異なる民族が交差する十字路のような場所)の再活性化を図ったことだ。また、生産農作物の多様化ならびにその収穫高の増加は、コミュニティ間の経済交流を強化し、飢餓人口の減少に繋がった。

CEPIプロジェクトのおかげで、イトゥリ地方の人々は再び希望を抱くことができるようになった。例えば、ブニアに暮らすAlphonsine Omoyさんは、警察官が毎日通りを巡回してくれることに深く感謝している。「治安が徐々に回復しています」彼女はこう語る。「確かに、状況はまだ完璧とは言えませんが、行動の自由度は格段に向上しました。」

コンゴ国家警察のJuvenal Bideko少佐は、職場環境について、新たな警察署が設置されて以来格段に改善したと述べている。「以前は、掘っ立て小屋のような場所で働いていました。しかし、今は、全てのオフィサーが独自の執務室を持っています。また、性的暴力犯罪に専門的に対処する特別部局も設けられました。性的暴力事犯では、匿名性の保護が何より求められます。」

また、ジュグ地区のCharles Nobirabo・PNC長官は、警察署が機能している地域では犯罪が減少傾向にある、と語っていう。

新しいコマンダ青空市場で青果物を販売しているEugenie Angeango さんは、次のように語っている。「今は、悪天候から商品を守ることができる陳列台があります。間違いなく、新しい市場のおかげでお客さんは増えると思っています。お客さんが増えて利益が上がれば、こども達の学費の支払いも可能になります。さらに、国の中央に位置するという市場の地理的ロケーションを考えれば、北キブ地方やイトゥリ地方の異なる民族グループとの繋がりもできるでしょう。」

CEPIは、国際連合開発計画(UNDP)、国際連合児童基金(UNICEF)、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)そして国際連合食糧農業機関(FAO)が共同で実施しているプロジェクトで、UNDPが機関間の調整を行うコーディネーター役を務めている。

各機関は、その専門知識を動員してプロジェクトにあたっており、様々な組織――国際連合コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)、インターナショナル/ナショナルNGO、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)、国際移住機関(IOM) からコンゴ当局に至るまで――と連携して活動を展開している。コミュニティ・レベルにおいては、恩恵に与る当事者自身によるプランニング、フォローアップそして計画順守を担保するために、現地に平和および開発委員会が設置されている。

人間の安全保障基金

1998年12月にベトナム・ハノイで行った政策演説の中で、小渕恵三故首相は、国際連合に「人間の安全保障基金」を設立することを発表した。これを受けて1999年3月に日本政府は約5億円を拠出し、「人間の安全保障基金」が設立されました。その後日本は本基金に対し、2009年度までに累計約390億円を拠出しており、国際連合に設置された信託基金の中では最大規模のものになっている。

本基金の目的は、現在の国際社会が直面する貧困、環境破壊、紛争、地雷、難民問題、違法薬物、そしてHIV/エイズを含む感染症など、多様な脅威に取り組む国際連合関係国際機関の活動の中に人間の安全保障の考え方を反映させ、実際に人間の生存、生活、尊厳を確保していくことにある。

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