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Highlighting JAPAN

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特集震災復興

日中韓サミットに寄せて 日中韓座談会(仮訳)

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5月20日、21日にわたって、東京で開催される第4回日中韓サミットを前に、駐日中国大使館の文徳盛政治部参事官、駐日韓国大使館の朴容民政務課参事官、外務省地域政策課の藤山美典課長、モデレーターとして、四方敬之内閣副広報官が出席して、首相官邸で座談会が行われた。

四方副広報官: 3月19日に京都で行われた日中韓外相会議に続き、日中韓サミットで中韓両首脳を日本にお迎えできることを大変うれしく思っています。本日は、東日本大震災で中韓両国からいただいたご支援、また今後の三国の関係の進展について、両国大使館の方々にお話しいただければと考えています。

東日本大震災では、世界各国より多大なご支援をいただきました。中韓両国からも救援隊の派遣、救援物資の提供等、ご支援をいただいたことを感謝申し上げるとともに日中韓の絆はさらに深まったと感じています。

まず、中国と韓国の政府や民間レベルでの支援についてお話し頂けますでしょうか。

文参事官:中国政府は、3月13日に救助隊員15名を派遣、14日から20日まで、岩手県大船渡市で救援活動を行いました。また、14日には、毛布、テントなどの物資も提供しています。東日本大震災の前日、3月10日に中国の雲南省でも大きな地震があり、救助隊員が救助活動を行っておりましたが、雲南の被災地からも、救助隊員の一部を日本に派遣しました。16日、中国政府はガソリン一万トンとディーゼル油一万トンを援助すると発表しました。

民間においても様々な支援を行っています。例えば、三一重工という建機会社は、長さ62メートルというアームを持つポンプ車を寄贈、福島第一原子力発電所で、原子炉を冷やす注水作業で大きな力を発揮しています。また、市民からも多くの義援金が寄せられています。北京、上海、長春の大学では、たくさんの大学生ボランティアが300もの募金箱を持って町で義援金の募集をしました。

2008年の四川大地震で中国は深刻な被害を受けました。多くの中国国民は日本の大震災を人事とは思わず、日本人に対する暖かい気持ち即ち「暖流」が非常に強く湧きました。

朴参事官:韓国政府は、地震発生翌日に緊急派遣された5名を含めた107名の救援隊、救助犬2匹を派遣、3月14日から23日まで、宮城県仙台市、多賀城市、塩釜市で救援活動を行いました。また、水、食料などの支援物資を軍用機、民間機、船舶を利用し、5回にわたって、岩手県、宮城県、福島県に送りました。

民間企業からの支援としては、例えば、現代重工業は千葉県にある東京電力の火力発電所に移動式発電機4台を提供し、4月末から首都圏に電力を供給しています。また、韓国国内でも、市民による自発的な日本支援の気運が非常に高まりました。私は東日本大震災で三つのことに驚いています。一つは、地震の強さ、二つめが震災後の日本人の秩序意識、そして、三つめが、韓国国内で若者を中心に広がった日本支援の熱気です。

藤山課長:今回の震災に当たっては、国際社会から多くの支援を頂きましたが、真っ先に手をさしのべてくれたのは隣人である韓国と中国でした。両参事官からご説明あったとおり多大な支援を頂いており、日本政府としては言葉ではうまく表現できないくらい感謝しています。日中関係、日韓関係にはさまざまな懸案もありますが、三国のうち一つの国が苦しんでいるときには心を一つにして助け合うという関係が、本来の三国間関係の姿であるということがはっきりしたと思います。中国と韓国の手厚い支援については日本国民にも広く知ってもらいたいと考え、外務省はホームページ等を通じて、両国の活動を伝えています。さきほど四方室長から言及のあった日中韓外相会議ですが、大切な隣国である両国に支援に対する感謝の気持ちを伝えるとともに、我が国の震災対応に関する状況説明をする重要な機会となりました。結果的に、中韓は日本とともにあるという思いにあふれた、非常に良い会議となりました。

四方副広報官:日本に住む、中国や韓国の方々が支援活動を行われた例をお話頂けますでしょうか。

文参事官:日本には約70万人の中国人が暮らしています。東北の岩手県、宮城県、福島県には約3.3万人が住んでいます。被災地に住む中国人は日本人とともに、復興に取り組んでいます。

また、東日本大震災の直後から、日本にある様々な華僑の団体が、被災地の復興のために多額の寄付を行っています。さらに、日本に住む中国人の学者で組織される日本華人教授会議は「日本社会と共に手を携えてこの自然災害に打ち勝とう!――在日華人・華僑および留学生へのアピール文」を発表しました。

朴参事官:韓国人も日本全国で約60万人、東北には約4万人が住んでいます。韓国人にとっても、東日本大震災は人ごとではないのです。

震災直後から、在日韓国人の団体や企業が募金活動や、水や食料などの物資を被災地に届けています。また、在日韓国人や韓国からの留学生によって、被災地を支援するボランティア組織が結成されました。ボランティアは、被災地での炊き出しや医療支援活動を行っています。

四方副広報官:被災地は、中国、韓国をはじめ各国の支援も得て、復興への道を歩み始めています。そうした中、復興の進む被災地では観光客の受け入れも再開しています。もちろん、被災地以外での日本の各所でも、変らず海外からの観光客を歓迎しています。今まで日本で訪問されたところで印象に残っている場所、また、今後訪れてみたい場所はどこでしょうか。

文参事官:私は日本とは約20年のつきあいがありますので、南から北まで、日本の各地を訪れました。どこも地域ごとの特徴があり、印象に残ったところはたくさんあります。

ここ数年、中国人の観光客の間では、自然の美しい北海道の人気が高いです。また、中国人は日本の海沿いの地域の景観が好きです。私が毎年のように訪れる広島と長崎も、平和の町として中国ではよく知られています。震災の被害を受けた宮城県仙台市も、中国人の文豪の魯迅が暮らしていましたので、観光地として有名です。震災後、私は救援活動のため、大船渡市に行きました。将来チャンスがあれば ぜひ復興した被災地を訪れたいです。

朴参事官:私はまだ着任して日が浅いので、東京以外では、静岡県の伊豆半島にある、伊東温泉しか訪れたことがありませんが、温泉近くの城ヶ崎海岸を歩いているとき、日本の自然風景には、日本人の性格がよく表れていると思いました。それは、その清潔さと節度です。

実は、3月20日から10日ほど休暇をとって、京都や奈良などを車で巡る予定でしたが、震災のため中止をせざるを得ず、とても残念でした。その他では、川端康成の小説「雪国」の舞台になった越後湯沢にも訪れたいです。

四方副広報官:さて、今回の日中韓サミットの主要テーマは何でしょうか。

藤山課長:東日本大震災に関連しては、菅直人総理が世界の主要紙に意見広告を出し、各国の支援に対するお礼と、復興に向けた強い決意表明が行われました。サミットでの発言はもっぱら総理のご判断に基づくものですが、同様の趣旨の発言をなされる可能性はあります。また、先般の日中韓外相会議では原子力安全及び防災協力に関する3カ国の協力についてサミットに向けて具体的な成果を出していこうと合意していますので、その方向で努力が行われているところです。原子力安全では、福島第一原子力発電の事故に関して、徹底的な検証と、そこから導き出される教訓を共有していくことが大きなテーマになるものと期待されます。

さらに、現在、日中韓では投資協定の交渉や、日中韓FTAの共同研究が進んでおり、これらに関しても議論されることが予想されます。

四方副広報官:最後に、中国と韓国から見た、今後の日本経済の展望はいかがでしょうか。

文参事官:私は、東日本大震災後の日本の経済については、楽観的です。その理由として日本国内と中国に二つの大きな需要があります。震災は悲劇的な出来事ですが、これから復興に向けた需要は非常に大きくなるでしょう。電力不足、生活スタイルの変化などによって経済が活性化につながる新しい発展パターンが出てくるではないかと考えられます。

また、中国では今、省エネルギーと環境保護を重視した、持続可能な経済発展に力を入れており、この分野での需要が非常に高まっています。日本は1970年代の石油ショック以来、省エネルギーと環境保護において、ノウハウを蓄積しています。多くの中国人が、福岡県北九州市にあるリサイクル産業の集積地に視察で訪れています。今はまさしく、省エネルギーと環境保護に関する日本のノウハウを中国で活かす絶好のタイミングであると思います。そうした分野では、韓国も高い技術を持っていますので、3カ国が協力すれば、明るい未来が拓けると確信しています。

朴参事官:東日本大震災によって、日本が経済的な影響を受けることは避けられません。しかし、既に起きてしまったことを考えるよりも、これから何ができるかを考えることが大切です。困難があれば、同時に必ず、チャンスもあると思います。

また、震災は、様々な面で韓国と日本が、「遠い隣国」ではなく「近い隣国」であることを教えてくれました。日本の危機は、日本だけのものではありません。だからこそ、両国の協力が極めて重要なのです。日本の震災の影響は韓国の産業にも及んでいます。ただ、逆に、震災で被害を受けた日本の産業を、韓国が補完することも出来るのです。

さらに、韓国、日本、中国の人口を足せば、世界の人口の4分の1、3カ国のGDPの合計は世界のGDPの6分の1に達します。これほどの規模があるということは、3カ国の協力によって、様々な可能性を生むことが出来ると言えます。

藤山課長:今回の日中韓サミットは、被災地の復興に向けた重要なステップになる可能性があると思います。経済連携、観光、人的・文化交流など様々な分野における協力が、被災地の復興を後押しすると期待しています。

四方副広報官:本日はお忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございました。今回の日中韓サミットの開催により、環境、エネルギーなど、3カ国の共通の課題において、合意がなされ、三国間関係がさらに発展していけばと強く希望しています。


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