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Highlighting JAPAN

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特集復興する日本で出会った人々

外国人ジャーナリストが見た震災後の日本(仮訳)

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日本に在住する二人の第一線で活躍する外国人ジャーナリストが、3月11日に発生した東日本大震災への政府、メディア、一般国民の対応について語り合った。

──メディアはこの災害をどのように扱ったと思われますか?

ジュリアン・ライオール(JR):最初の数日間、海外報道の大半は、予想通りの型にはまった反応でした。第一面を飾る写真は恐ろしいばかりでしたが、見出しや本文には全く根拠がないものもありました。それはある意味、日本のニュースソースに落ち度があったということです。というのも、(原発事故のケースで)東京電力は関係省庁に有益な情報を何も提供しなかったため、外国メディアは噂や誇張された話を頼りにすることになったからです。日本政府は、メッセージの発信をもっとうまくやらなければなりません。そうでないと、政府に代わって別のルートから情報が発信されるリスクを招くことになってしまいます。

ギャビン・ブレア(GB):私は違う見解ですね。報道された記事の一部は、新聞を売るために意図された全く露骨なセンセーショナリズムでした。もっとも、当初は情報が不足しており、その後になって曖昧な情報が関係省庁から大量に出てきたのは事実です。

──現在、被災地の雰囲気はどのようなものでしょうか?

JR:被災者の方々は、これが自分たちの運命だとあきらめている感じがします。もちろん、政府にもっと対応してほしいとは思っているでしょう。例えば、学校の体育館から自分たちだけの場所に身を移すためにも政府の尽力は必要なのです。政府は、5月末までに3万戸の仮設住宅を提供する目標を立てていましたが、2,500戸が不足する状況となっています。これは、あらゆる問題が山積する状況を考えれば上出来です。震災発生から3ヵ月が経過した今、東北はまだ復興の初期段階にあります。現地に行くと、神戸の消防隊や秋田から派遣された警察チームが活動している姿が見受けられますが、これは素晴らしいことですね。日本でこの震災のことを忘れられることはないでしょう。

GB:日本のメディアも、震災の報道を継続していますね。

──東北地方の伝統産業は大きな損害を被りました。これから被災地はどのように対応していくのでしょうか?

JR:私が話をしたあるコメンテーターは、原発周辺の汚染された広大な土地区域を巨大な風力発電ファームや大規模の太陽光プラントへ転換させてはどうかと提言していました。計画を立てる上で問題は何もないでしょう。その方向で真剣に取り組むべきだと思います。風力と太陽光の大規模な発電所で、東北にエネルギーを供給するのです。代替エネルギーに目を向けることしか選択肢はありません。

GB:日本がこのような危機に直面したのは、1970年代初期のオイルショック以来です。その結果、日本の産業は効率性が高まることになりましたが、また同じことが起こるのではないでしょうか。日本は、再生可能エネルギーの利用増進を視野に入れていくと思われます。

JR:論理的には、そうですね。日本企業は、先進技術のエキスパートなのですから。 3月11日の大震災が、日本企業の得意分野をさらに拡大し推進していくきっかけになればいいですね。日本では新技術の導入をためらうことが過去にありましたが、それは時としてすでにある物よりも幾分高くつくというのが理由でした。それでも、従来のエネルギー源に関してこのように問題が露呈した今となっては、より高くつくとしても代替エネルギー源の利用を高めていくべきなのです。

姿勢としては、「国民すべての利益のために、とにかくやってみようではないか!」ということでなければなりません。

──菅首相は、2020年までに1,000万世帯の住宅の屋根にソーラーパネルを取り付けるという日本の目標を先頃発表しました。

GB:大壮な計画ではありますが、強力な後押しになることは確かでしょう。

JR:私としては、実現することを望みたいですね。日本は、経済を再生させる新産業を必要としているのですから。

──現時点で日本の将来的な展望をどのように評価されますか?

GB:日本がすでに現状への満足から脱しているとすれば、長期的な予測も意味があるでしょう。日本の若者はここ数年さまざまな批判を浴びていますが、多くのコメンテーターが言っているように、今回の震災は彼らの物事の見方を明確に定める時機になるのかもしれません。日本人は、驚くほど粘り強い国民です。一国の人々の真の姿が見えるのは、苦境に立たされている時なのです。実際、今回の大震災後に日本の国民には本当に感銘を受けました。それでも、日本には多くの難題が立ちはだかっています。具体的には、少子高齢化、膨大な国債、政治プロセスの問題、景気後退、そして今回の3.11大震災です。そうした難題に立ち向かう中で日本はしっかりとした民主国家になれるというのが私の希望ですが、日本のいいところもすべて維持してもらいたいのです。

JR:私は非常に楽観的です。今回のことで教訓を学び、企業がそれぞれの対応をきちんと整理するのであれば、なおさらのことです。日本では島国根性ということが言われますが、人々は皆一心同体なのです。そうした連帯感は必ずや日本のためになることでしょう。震災後は、誰もがともに協力し、懸命に援助する姿が見受けられました。避難所の人々は何も無いも同然でしたが、クラッカーや水を受け取るのを辛抱強く待ち、列で押し合うこともなかったのです。

GB:実際に、自分たちの食料を我々報道陣に提供しようとする人々もいました。ある避難所を後にする際、誰かが私たちの靴をドアの横できちんと揃えていてくれたのを覚えています。大変な境遇なのに他人のことを気遣うとは… 避難所の被災者は、「東京からはるばるいらっしゃって、ご苦労様でした。お気をつけて」と言ってくれたのです。本当に、本当に何とも謙虚なことではありませんか。


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