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Highlighting JAPAN

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特集「伝統」と「現代」の融合~Cool!Japanを担う人々

横浜トリエンナーレ参加アーティストに聞く(仮訳)

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8月6日から11月6日まで、神奈川県横浜市で、横浜トリエンナーレが開催される。横浜美術館を中心に、国内外で活躍する現代美術家の作品が集まる。今回作品を展示する作家の一人、画家の池田学氏にジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

──池田様は絵のテーマ、内容はどのようなことからインスピレーションを得られているのでしょうか。

池田学:絵のテーマや内容は、殆どが自分の実体験から発想して描いていますが、最近はテレビや本、写真からもアイデアを取り入れ、それらを頭の中で再構成しています。作品にもよりますが、最初にテーマを決めて描くものもあれば、成り行き任せでアイデアが増殖するままに描いたものも多く、大きな作品はどちらかというと後者の方です。

ただ、成り行きで描くとはいっても、自分の関心がある事を絵の中に込めて行きたいので、現代社会における人間と自然の関わり方、日本人としての美意 識などをあまりシリアスになりすぎないように入れています。

──現在、文化庁の芸術家海外研修制度で、カナダに滞在されていますが、滞在先にカナダを選ばれた理由をお教え下さい。

「自然と人間の関わり」というのが私の絵のテーマで、バンクーバーは都市と自然がうまく共生している場所というイメージがありました。両者の融合点や、人々の自然との向き合い方などを実際に見て、それが作品に生かせたらという思いでこの地を選びました。

──ニューヨークのジャパン・ソサエティーで3月に開催された「Bye Bye Kitty!!!」 展の池田様の作品は「New York Times」にも大きく取り上げられましたが、海外で池田様の作品はどのように受け止められているでしょうか。

海外の人からみるとモチーフの選び方や技法などが「日本的」もしくは「アジア的」なのかもしれません。日本に比べて、海外の方は絵の内容やモチーフに隠された意味について聞いてくる人が多いような気がします。ただ絵を見ている姿はどこも一緒。顔を近づけて所々指をさしながら楽しそうに見ている姿を眺めていると、人間根本的な所はみな同じなんだなと思います。

──東日本大震災の発生のニュースを知り、どのようにお感じになったでしょうか。この震災の後、アーティストとして、絵を描く意味について、どのように考えられているでしょうか。

カナダにいたので、友人からのメールで知りました。テレビで映像を見たときはアジアの何処かの国かと思っていて、JAPANという文字を見た時にはその衝撃のあまり動けませんでした。先進国の我が国では津波が来てもこうはならないとどこかで思っていました。海外にいる自分からは震源地は東北ではなく「日本」で、日本全体が沈むのだと本気で思ったほどでした。

日本語の看板や田んぼ、瓦屋根の家や車、といった自分の見慣れた祖国の風景が津波に呑まれていく様は胸が轢き潰される思いがしました。

また、自分だけ安全な海外にいて申し訳ないという気持ちでいっぱいだったのを覚えています。

人間と自然の関わりを描いてきた自分にとって、この震災は大きな命題となりました。環境、原発、放射能...これから自分達はどうしていくべきなのかという問題提起をしつつも、何か力づけられる様な、そんな絵を描いていきたいと思います。

──横浜トリエンナーレで は、どのような作品を出品されるご予定でしょうか。

横浜トリエンナーレでは、これまでのスタイルとは少し違い、ペンで忠実に再現した動物画と、同じ様に描かれながらも実在しない生物画を合わせて約30点展示します。それらが標本の様に並べられる事で、虚と実の境界があやふやになり、まるで不思議な図鑑の中を行ったり来たりするような感覚を楽しんでいただけると思います。


横浜トリエンナーレ2011 (8月6日-11月6日)

横浜トリエンナーレは2001年に始まり、2005年、2008年と開催し、今までのべ100万人以上の人々を動員した国際現代アート展。“OUR MAGIC HOUR”をテーマに、横浜トリエンナーレ2011は、横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫をメイン会場に、世界の日常の不思議、魔法のような力、さらには神話等に言及した作品に注目している。

アクセス
横浜美術館:横浜市西区みなとみらい3-4-1 みなとみらい駅と桜木町駅近く。東京駅からJR線で30分。
日本郵船海岸通倉庫:横浜市中区海岸通3-9 馬車道駅近く。東京駅からJR線とみなとみらい線で30分。

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