Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2011年9月号 > 日本酒を世界へ(仮訳)
東北では数多くの日本酒が造られている。日本国内だけではなく、海外でも高い評価を受けている山形県の酒造メーカー、出羽桜酒造を河崎美穂が紹介する。
日本酒の輸出は、近年、右肩上がりで増加してきた。2000年には年間約7400klの輸出量であったが、2010年には、これまでで最高の約13000klに達した。輸出先では米国が最も多く(約3700kl)、次いで韓国(約2500kl)となっている。
山形県天童市にある酒造メーカー出羽桜酒造(創業1892年)は日本酒の輸出に力を入れている酒造メーカーの一つだ。輸出先は、米国、イギリス、韓国、中国、ブラジル、インドなど。昨年は、世界20カ国に年間約90klの日本酒を輸出した。
しかし、輸出量が順調に伸びていた矢先の3月11日、東日本大震災が発生した。
「幸い、出羽桜酒造は設備や従業員が直接的な被害を受けることはありませんでした」と出羽桜酒造社長の仲野益美氏は話す。「ただ、ガソリン不足による物流の停滞、祭りやイベントの中止といった原因により、酒の売り上げは減少しました。また、原子力発電所事故の風評で、ヨーロッパや中国向けの酒の輸出も大きく落ち込みました」
ただ、震災から半年が経ち、国内の売り上げは徐々に回復している。また、アメリカ向けの日本酒の輸出は非常に好調だ。そのため、今年度の輸出量は昨年度と比較して、数%の増加になる見込みである。
みんなの笑顔のために
出羽桜酒造は、東日本大震災後、大震災復興プロジェクト「みんなの笑顔のために」を立ち上げ、売上金の一部を震災復興への義援金として寄付をしている。
出羽桜酒造は天童市内に、韓国の陶磁器、工芸品を主に展示した出羽桜美術館をメセナ活動の一環として所有している。山形県は宮城県や岩手県からの被災者を受け入れていることもあり、この美術館にも被災者が見学に訪れた。
「美術品を見て、心が安らいだという言葉を被災者の方から聞き、被災者に貢献できて良かったと思いました」と仲野氏は言う。「被災地に隣接する県として、長いスパンで被災地の復興を支援してくつもりです」
7月、震災復興への支援を続ける仲野氏の下にイギリスから嬉しいニュースが届けられた。イギリスで開催されている世界最大級のワインコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」の「サケ部門」(460銘柄以上が出品)の中の「純米吟醸・純米大吟醸」の部門(163銘柄出品)で、出羽桜の「雄町」が1位のトロフィー賞を受賞したのだ。
「東日本大震災で被災した宮城県のお酒も出品されていたので、そのお酒が受賞すれば良いかなという気持ちも正直ありました」と仲野氏は言う。「東日本の酒造メーカーとして、これからさらに良いお酒造りのために頑張らなければという気持ちになっています」
今後出羽桜酒造では、特にアメリカでのさらなる市場拡大を積極的に行っていくという。アメリカでの販売先は日本料理店が主だったが、最近ではそれ以外の店に置かれるケースも増えてきた。また現在、アメリカの一般の酒屋でも出羽桜酒造の日本酒を販売できるように準備を進めている。
「アメリカの一般家庭にも、日本酒を広めたいです」と仲野氏は言う。「海外の方々には、東北の復興のためにも、是非、日本酒をもっと楽しんで欲しいです」
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