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淡路島の香り(仮訳)

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兵庫県淡路島の香の人気が海外で高まりつつある。ギャビン・ブレアが淡路島を訪ね、15社の有力メーカーからなる共同組合に属する慶賀堂の社長に話を聞いた。

日本の香の生産高の7割を占める淡路島産の香にまつわる物語は、ふたつのエピソードからなる。ひとつは160年前、もうひとつは1,600年近く前の出来事である。

日本の歴史の最も古い文章による記録の一つによると、6世紀に沈香の巨大な丸太が淡路島の海辺に打ち上げられた。その丸太の一部を薪として用いたところ、芳香が島中に漂ったため、村人達は驚いた。そこで、その丸太が聖徳太子(574-622)に献上された。太子は、その木から像を作らせた後、残りの木片を祀るように村人に命じた。そこで建立されたのが、絵のように美しい枯木神社であり、現在でも江井港近くの海岸沿いに立っている。

1850年には、江井の一商人が、大阪で発展していた香製造技術の可能性を見いだした。

「島のこちら側で吹く強い西風はお香の乾燥に理想的です」と、200年以上の歴史を有する企業である慶賀堂の宮脇繁昭社長は説明する。

原料を運び入れたり、最終製品を出荷したりする港があることにより、町はこの産業で栄えた。何年か経つと、事業者団体が結成され、香の職人である香司の認定制度が確立された。

2005年に地元の線香メーカー16社が共同で、日本国外を中心に製品をプロモーションし、売り込むことになった。各社共、香司が組織の代表である。「あわじ島の香司」達によって伝統的な香がヨーロッパやアメリカへもたらされた。自身も香司である宮脇氏によると、その過程は試行錯誤だったと言う。

宮脇氏は当時をこう回想する。「フランスで販売するために最初に持っていた香は、ヨーロッパのお客様をターゲットにしたデザインを箱に施していました。フランス語をちょっと入れたりしていたのです。しかし、ヨーロッパでは日本の伝統的なデザインのほうが、訴求力があると多くの方から言われました。」

「お香は突然ブームになるようなタイプの商品ではありません。親しみがわき、そして、好きになるのには時間がかかるものです。」

香りは、伝統的な天然香木系の香りや緑茶やコーヒーといった意外な種類までが揃っている。様々な香が多くの国々で人気を得ていると宮脇氏は語る。

最新のコレクションは、15人の香司が四季をテーマに、一人1種類ずつ選んだ15種の香りのバリエーションで構成されている(1社は組合を離れている)。通常、香司という職業は、父から息子へと受け継がれる。香司は香の製作を最初から最後まで監督し、各段階そして最後に出来上がる香りに対して責任を有する。

宮脇氏はこう説明する。「お香の香りは、使われる天然成分に応じて異なり、同じ成分でもその年の天候その他の条件によって変わります。成分とそのバランスを調整して各社独自の特徴ある香の香りを維持することが、香司の仕事で最も難しく、やりがいのあるところです。」

合計すると、それぞれの香司が作ることができる香は100種類程になるが、一度に作れる数は限られる。日本の伝統的な香もまた、香道を通じて仏教の精神的側面と深いつながりがあり、その点で他の国で作られる香とは異なるということが宮脇氏の話から伺える。

最近では、香司達によって煙の少ない香が開発されている。共同住宅や小規模住宅でも快適に使えるようにするためである。昨年、独特の香りを出すために燃やす必要のない香のシリーズが発売された。京都の着物地で作られた小袋の形態で、車の中に吊るしたり、PCや携帯電話につけたりすることができる。まさに21世紀の香だ。

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