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Highlighting JAPAN

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特集震災から1年:被災地で活躍する外国人

建設と旅行で被災地を支える(仮訳)

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山形県最上町で観光会社を営んでいる山口スティーブ氏は、3月11日の東日本大震災後、隣接する宮城県で多くの仲間達と共に復興活動に取り組んでいる。山田真記がレポートする。

2012年1月中旬、宮城県南三陸町の凪いだ海を望む小さな空き地で、大小の木材を組み合わせた仮設建物の建設作業が行われていた。おがくずが冷たい北風に舞う中で、電気ノコギリが回る音と釘を金槌で叩く音が鳴り響いている。

「この板は屋根に上げるよ。注意して持ち上げてね」

「次は窓のサッシをはめ込もう。準備はいいかい?」

ここで、13名のボランティアたちに、てきぱきと指示を出しているのがアメリカ・オクラホマ州出身の山口スティーブ氏だ。

山口氏は1986年に東京の大学院で日本の政治を学ぶために来日、卒業後も日本に滞在し、商社で働いていた時に、山形県最上町にある建設会社社長の一人娘と出会い結婚、家業を義父から受け継いだ。2007年には最上町で観光会社を立ち上げ、東北の文化や自然を楽しめる様々なツアーを企画し、成功させていた。そうした最中、東日本大震災が発生したのだ。山形県は被害を受けなかったが、山口氏は直ぐに宮城県の被災地に直接赴き、瓦礫の除去や、漁師が直ぐに仕事へ復帰するための支援を開始した。

震災からほぼ1年が経った現在、山口氏が建設会社を経営していた経験を活かし取り組んでいるのが、「プレハブ・ビレッジ・プロジェクト」と呼ぶ、被災地での仮設建物建設だ。このプロジェクトは、UBC(Universal Building Cube)を使って、プレハブの集合住宅を「プレハブ・ビレッジ」へと変え、そこでの生活の質を改善することを目的としている。UBCとは、山口氏がこのプロジェクトのためにデザインしたものだ。高さ2.3m×幅2m×奥行き4mの頑丈な木製箱のことである。UBCは左右あるいは前後にも連結可能なので、建築スペースがあれば、用途に応じて必要な空間を容易に確保することができる。ほとんどの建物は概ね2〜3日間の作業で作ることができるという。現場の作業自体は、地元住民、ボランティア、プロジェクトスタッフで行われるが、建設費用は復興を支援する企業やNPOからの出資だ。

「現在UBCを使って仮設住宅の中に商店や集会施設、あるいは酒を酌み交わす場や喫茶ルームなど、人々のコミュニティスペースを作っています。UBCプロジェクトで私たちが目指しているのは、被災者が孤立せず、自由に交流できる “仮設村”の実現にあるのです」

山口氏のもとには、新聞やテレビ、口コミを通して仮設建物を知った被災地の自治体や自治会から、コミュニティー・センター、漁師の休憩所、仮設レストランなどの用途で使いたいとすでに50棟以上の依頼が来ているという。

さらに山口氏は、自身が経営する観光会社の企画として、被災地でのボランティアツアーも行っている。2011年6月から現在までに、東京や大阪をはじめ、全国各地からのべ800人以上がツアーに参加した。参加者の多くは「長期滞在は難しいが、週末だけなら」という会社員だ。山口氏のツアーの多くは、景勝地である宮城県松島の近くの、東松島市の宮戸島の海苔養殖の再建の支援に焦点を当てている。参加者は、がれきの撤去や、海苔の養殖に必要な網といかだの製造といった作業に取り組んだ。

「宮島の人達はもちろん、参加したボランティアの皆さんも非常に喜んでくれたのが印象的でした。被災地においてお互いの心が通じ合い、長く続く絆が生まれたことが喜びに繋がったのだと思います」と山口氏は言う。「今年は、プレハブ・ビレッジ・プロジェクトもボランティアツアーもさらに充実させたいです。やるべきことはたくさんありますし、助けを必要としている人もいます。貴重なボランティアの時間を有効に活かし、ボランティアと支援を受ける人々の両方の人生を豊かにすることが、私の仕事だと思っています」

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