Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2012年3月号 > 人々とともにまちを作る(仮訳)

Highlighting JAPAN

前へ次へ

やまとなでしこ

人々とともにまちを作る(仮訳)

English

株式会社まちづくりカンパニー・シープネットワーク代表の西郷真理子氏は日本を代表する都市計画家だ。住民参加型のまちづくりを、日本各地の商店街で実施し、中心市街地の活性化を成功させてきた。2011年には、こうした地方都市再生プロジェクトが、国際不動産投資・都市マーケット会議(MIPIM)において、MIPIM Awardsの未来プロジェクト部門最優秀賞を受賞している。また、東日本大震災復興構想会議の専門委員会委員も務め、震災復興の活動も行っている。西郷氏にジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

──まちづくりに興味を持つようになったきっかけをお教え下さい。

西郷真理子氏:大学では社会学的視点から建築や町を研究する「建築社会学」という学問を学びました。埼玉県の川越、そして京都、金沢など古い街並みが残る町を訪れ、町家やその住民の調査をしました。すると、美しく調和が保たれている町では、住民が自分たちのまちに誇りを持っている,愛している、そのために常に清掃をしているとか、住民がお互いに助け合って生活していることが分かってきました。こうした調査を行っているうちに、美しく居心地の良い町を作ることに興味を持つようになったのです。

──本格的にまちづくりに関わるようになったのは、どこの町だったのでしょうか。

1970年代末に川越市で蔵造りの商店街の保存に関わったことが私の仕事の原点です。当時、古くに作られた蔵造りの店はどんどん壊され、商店街も廃れていました。私は商店街の人々、大学教授、自治体の職員と一緒になって、伝統的な蔵造りの街並みを残しながら商店街を活性化させるために、設立された川越町並み委員会で67の項目で構成された「町づくり規範」を作りました。この規範では、建物の高さの制限、中庭の位置、緑地の確保などを定めています。この規範をもとに、町並み委員会では、住民と行政が一体となって、美しい街並みを保存した結果、今川越は年間500万人を集める観光地となっています。

  ──西郷さんは、どのようにしてまちづくりを行っているのでしょうか。

まちづくりにおいて重要なのは住民の主体形成です。そのためにはワークショップが大切です。ワークショップでは、例えば、どのような町にしたいかを、話し合いをします。それを付箋に書いて、皆の前でボードに貼っていきます。そして、ボードの上で、テーマ毎に付箋をグループにまとめていきます。私は何か選んだり、判断したりはしません。しかし、このように、目に見えるように意見をまとめる作業を続けていくと、次第にみなさんの考え方が共有化されてくるのです。

まちづくりのイメージが共有されることでまちづくりの事業は進みます。そしてまちづくり会社設立につながっていきます。これらを進めるにはコミュニケーションが大切で女性は向いているといえます。

──東日本大震災復興構想会議の専門委員も務めていらっしゃいますが、現在、どの町の復興に携わっているのでしょうか。

津波で深刻な被害を受けた宮城県石巻市で、まちづくりを進めるコンパクトシティいしのまき・街なか創生協議会のメンバーになっています。今回、石巻で津波によって大きな被害を受けたのは、第二次世界大戦後の人口増加にともない宅地化された沿岸地域でした。歴史的町並みが残る中心市街地は津波被害が少なかったのです。復興住宅は、中心市街地を再開発しながら、建設することが重要です。そうすることで、住宅や商店が中心市街地に集積した、賑わいのある、暮らしやすいコンパクトシティになるのです。市街地に2000戸の住宅を造ろうとする計画がスタートしました。スウェーデンのストックホルムに、ハンマルビーショースタッドという非常に美しいウォーターフロントのエコシティがあるのですが、そうした町なども参考になればと思っています。

さらに、石巻の海産物、水産加工品、あるいは大漁旗など、石巻ならではの文化やライフスタイルをブランド化し産業とすることも目指します。例えば、去年11月、フランスのカンヌで開催された国際リテール不動産見本市(MAPIC)に、私たちは大漁旗を使った帽子や洋服を出展しましたが、来場者からは大好評でした。こうした商品を扱う店を、フランス政府とパリ市が計画を進める文化施設に出さないかという誘いもあります。今、石巻の人たちは元気です。ピンチをチャンスにしようと頑張っています。

また、私は石巻だけではなく、他の被災地を支援するために、東日本大震災復興構想会議のメンバーとともに、プロジェクトチームを立ち上げました。このチームは、石巻で行っているように、復興への住民の主体的な参加を支援します。私は、住民の復興への挑戦を応援したいのです。

前へ次へ