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Highlighting JAPAN

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特集日本のお酒で乾杯!

日本のお酒を世界で味わう(仮訳)

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日本では全国各地で日本酒や焼酎などの酒類が生産されているが、原料や気候の違いから、それぞれの地域によってお酒の種類や味も様々だ。お米の生産量が多い地域を中心に、本州、北海道、四国では日本酒が、九州では焼酎、沖縄では泡盛の生産が盛んだ。近年、こうした日本のお酒の輸出が伸びており、海外の人々も手軽に楽しめるようになっている。1800を超える日本の蔵元の中から、海外でも入手可能な商品を生産している代表的な蔵元を紹介する。

万年雪の恵み:男山(北海道)

1887年に創業した北海道旭川市の男山株式会社は、北海道を代表する日本酒「男山」の蔵元だ。男山は、同社からも望むことが出来る、北海道の中央部にそびえる大雪山の万年雪を源にする伏流水と、時には氷点下20度にもなる気候の中で、造られる。その淡麗な辛口味わいは、「ドライ」な日本酒の代表として海外でも高く評価され、1977年以来、36年連続で、「世界酒類コンクール」などの海外の酒類コンクールで受賞をしている。

同社は現在、日本酒全生産量の13%を海外に輸出している。輸出先の約70%がアメリカで、残りはアジアだ。日本食レストランで飲めるだけではなく、日系スーパーでも販売されている。

併設された酒造り資料館には、酒造りに関する資料や道具が展示され、無料で日本酒の試飲も可能である。資料館には国内外から毎年12万人が来館、そのうち、5万人はアジアを中心とする海外からの観光客だ。毎年2月の第2日曜日に開催されるイベント「男山酒蔵開放」では、新酒が無料で振る舞われる他、酒造りの見学やお酒やお菓子の販売も行われ、氷点下の気温の中、市民だけではなく、国内外から多くの観光客が訪れる。


青い水から生まれる酒:南部美人(岩手県)

岩手県北部の内陸部に位置する二戸市は、北上山地と奥羽山脈の丘陵地からなる、自然豊かな地域だ。「南部美人」の蔵元である株式会社南部美人は、その二戸市の中心部で1902年に創業された。

南部美人の酒造りのこだわりは、原料の米にある。岩手県で日本酒のために開発された米を中心に使っている。さらに、水は、同社敷地の中から湧き出る井戸水を使用している。この水には、カリウム、リン、マグネシウムといったミネラルが豊富で、やや青みがかった色をしている。このミネラルが酵母と麹の増殖や発酵を促進し、しっかりとした味とこくのある日本酒に仕上げる。

南部美人は、アメリカ、イギリス、ブラジル、シンガポールなど世界21カ国へ輸出され、主に現地の和食レストランで供されている。「なぜ米で作っているのにこれ程フレッシュでフルーティーなのか。今まで飲んだ日本酒とは違う味わいだ」と海外での評価は高い。南部美人の大吟醸酒は、2010年にハワイのホノルルで開催された「全米日本酒歓評会」の大吟醸の部で、金賞を獲得している。


300年の歴史が造る酒:大七酒造(福島県)

安達太良山麓の豊かな自然に囲まれた福島県二本松市で、1752年に創業した大七酒造株式会社は、「生もと造り」と「超扁平精米法」を使った日本酒で知られる蔵元だ。生もと造りとは、300年ほど前に開発された醸造法で、自然の乳酸菌をゆっくりと成長させ、日本酒を仕込む方法だ。そして、超扁平精米法は同社が1995年に初めて実用化した精米方法で、日本酒の味を落とす原因となる米の表層部分のタンパク質や脂肪を最大限取り除く。これらは、通常の酒造りと比較し、時間と手間がかかるが、その結果、豊潤な味わいを持った日本酒を生み出す。国内の日本酒の人気ランキングでは常に上位を占める。

 2010年12月にはオランダ王室の晩餐会では大吟醸の「箕輪門」が供される栄誉を受けた。著名なソムリエの田崎真也氏は箕輪門を「味わいは優しくなめらかな第一印象から広がりも上品で、余韻に心地よいほろ苦みを残している」と評した。同社は、2011年6月には、フランスのボルドーで開催された世界最大の国際アルコール飲料見本市「VINEXPO 2011」に日本酒業界では初めて単独ブースを出展している。時間が経つほどに熟成し、味がさらに良くなるという同社の日本酒は、海外のシェフやソムリエからも高い評価を得ている。


家庭円満になるお酒:宮坂醸造(長野県)

山々に囲まれた諏訪湖のほとり、長野県諏訪市にある宮坂醸造株式会社は1662年創業という老舗蔵元だ。同社の「真澄」は、長野産を主体にした米を、自社で丁寧に精米して生産される。同社の酒造りのモットーは、美味しく、楽しく飲める日本酒を造って、家庭円満に役立つこと。味は、上品な甘口で、お酒に弱い女性でもすいすいすいと飲める。それゆえ、日本料理だけではなく、西洋料理、中華料理、チーズなどにも合う。同社内のショップ「セラ真澄」では、真澄の試飲も可能だ。

現在、アメリカ、香港、マカオ、カナダなどの国・地域へ真澄を輸出している。各国の日本食レストランで飲める他、フランスではフレンチレストラン、香港では中華料理店でも、真澄を採用する店も現れ始めている。

その海外販売の担い手となっているのが、アメリカ人とフランス人のスタッフ2名だ。彼らが世界中を回り、営業だけではなく、真澄を提供しているレストランの経営者、スタッフ、ソムリエに、飲み方や保存の仕方などを教えている。海外から訪れるレストランのオーナーやスタッフも数多い。


大統領に贈られた日本酒:加藤吉平商店(福井県)

1860年に日本酒製造を始めた加藤吉平商店は、職人の勘や経験が主だった酒造りに、温度や湿度をはじめ、あらゆる製造部門に管理センサーを導入して、データを蓄積しながら、高品質の日本酒製造の再現性を極限まで達成している。「梵」は、原料に米、米麹、水だけを使って造る純米吟醸酒のみで、約1年〜10年の期間、摂氏0度以下で長期熟成され、素晴らしくなめらかで豊かな味わいが特徴だ。

同社は1990年代前半から海外展開を始め、「梵」は、海外で開催された国際的酒類品評会で数多く最高賞を受賞しながら、アメリカ、アジアをはじめとする、約40の国・地域に向けて輸出されている。現在では、「梵」の商標は100ヶ国以上で正式商標登録されていて、パリやニューヨークの高級レストランや、アメリカの日本酒専門店など、海外の主要都市の様々な場所で飲んだり、購入することが可能だ。

また、「梵」は、2002年に開催されたサッカーの日韓ワールドカップの歓迎晩餐会のような、国際的な式典でも数多く採用されていて、2009年にはバラク・オバマ大統領就任の折りに、当時の首相がお祝いに「梵」を贈ったことが有名だ。


泡立つ日本酒:増田德兵衞商店(京都府)

京都府の伏見は江戸時代(1603-1867)以前から日本酒造りの地として有名であった。その伏見の中で最も長い歴史を持つ蔵元が、1675年創業の増田德兵衞商店だ。同社は日本初の「にごり酒」で有名な「月の桂」を造った蔵元として知られている。にごり酒は白濁した日本酒で、スパークリングワインのように、発泡性と、フルーティーな香り、さわやかな酸味を楽しめる。

現在では、約20カ国・地域に輸出され、アメリカ、ドイツ、スイスの日本酒専門店での購入やフランスの高級ホテル、バーで飲める。また、ニューヨークの高級レストランでも提供されている。

今年1月には、海外向け商品「稼ぎ頭」を発売した。稼ぎ頭は、従来の日本酒の概念を超えた軽やかなフルーティーな味わいをもった日本酒で、アルコール度数も8%と低く抑えられている。

京都市中心から電車で30分ほどの距離に酒蔵があるので、国内外から数多くの観光客が、蔵の見学や試飲に訪れる。


蛍の里の酒:天山酒造(佐賀県)

九州は焼酎の生産が盛んな地域であるが、その中で、米と水に恵まれた佐賀県は、日本酒作りの盛んな県である。1875年に創業した、佐賀県小城市の天山酒造株式会社は、そうした佐賀県を代表する蔵元の一つだ。小城市は、名水の地として知られる。5月から6月にかけて、天山を源流とし、市内を流れる祇園川では、清流にしか生息しない蛍が数十万匹以上乱舞することで有名だ。同社の日本酒は、天山の中腹から湧き水を引き、使用し、カルシウムやマグネシウムといったミネラル分を含んだ硬水が、切れ味の良い辛口の日本酒に仕上げる。

同社の日本酒は10数カ国・地域に輸出しており、日本食レストランを中心に、供給されている。「地酒天山」は、アルコール度数が18%と通常の日本酒よりもやや高く、アメリカでは、その味が「男性的(masculine)」と評されている。今年7月、ハワイのホノルルで開催された「全米日本酒歓評会」では、地酒天山を含む4点の酒が金賞を受賞した。


麦焼酎発祥の地:壱岐の蔵(長崎県)

九州地方で焼酎の生産が盛んな理由の一つは、焼酎に使う麹菌が気温の高い気候に適していたことである。麦を原料とする焼酎が16世紀初めに日本で初めて造られたのが、九州の北、約20kmの沖合に浮かぶ壱岐島だ。その壱岐島を代表する蔵元の一つが、壱岐の蔵である。同社は1984年、壱岐に古くからある6つの蔵元が集まり設立された。壱岐麦焼酎の特徴は麹に米を使うことにあり、同社の代表作である「壱岐の島」は米麹の旨み、麦の風味が絶妙にブレンドされている。撫子の花から分離した花酵母を使った麦焼酎の「なでしこ」は、華やかな香りと優雅な味わいを楽しめる。これらは、2011年に、ベルギーのブリュッセルに本部を置く国際的な品評機関「モンドセレクション」の「壱岐の島」は最高金賞、「なでしこ」は金賞を受賞している。

琉球の香り:瑞泉酒造(沖縄県)

沖縄を代表するお酒といえば泡盛である。

沖縄では現在、47の泡盛の蔵元があるが、那覇市の瑞泉酒造は1887年創業の沖縄を代表する琉球泡盛の老舗蔵元だ。世界遺産に登録されている首里城に隣接する同社には、毎日、数多くの観光客が訪れる。

同社が特に力を入れているのが古酒(クース)造りだ。琉球泡盛の古酒は、琉球王国の宮廷で、遠来の客をもてなすために用いられたというエピソードがあるほど、貴重な泡盛であった。同社の生産する古酒は3年から20年にわたって素焼きの甕の中で熟成された泡盛で、まろやかなうま味、甘い香りを堪能できる。アルコール度数は30〜43%と通常の焼酎よりもやや高め。水、お湯、氷で割る他、泡盛をベースにコーラ、リキュール、果汁などと割るカクテルもお薦めだ。

同社は2002年から海外への輸出を始め、現在、輸出先はアメリカなど約10カ国・地域に上る。香港、中国、シンガポールでは、沖縄の郷土料理屋で飲むことが出来る。

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