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Highlighting JAPAN

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連載|やまとなでしこ

ハサミと紙から生まれる奇跡(仮訳)

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蒼山日菜氏は、フランスやスイスで開催の国際的なコンクールで数々の賞を受賞している切り絵アーティストだ。花、蝶、妖精、文字など、そのファンタジックな作品の数々は、ハサミだけで切り抜かれているとは信じられないほど精緻だ。ジャパンジャーナルの澤地治が蒼山氏に聞く。

──子どもの頃から芸術に興味があったのでしょうか。

蒼山日菜氏:子どもの頃、漫画を描くのが大好きで、小学校5年生の時にはクラスメートと漫画の「同人誌」を作ったこともありました。しかし、中学生以降、まったく絵を描かなくなりました。再び絵を始めたのは29歳の時、息子のために絵本を作りたいと思い、動物や男の子を主人公にした絵本を描き始めたことがきっかけでした。

──では、蒼山さんと切り絵との出会いについて教えてください。

2000年頃、私はスイスのジュネーブに近い町に暮らしていました。当時、ジュネーブの日本人駐在員の御夫人方の間で、スイスの伝統である切り絵がはやっていたのですが、私も日本人の友人に誘われて始めてみたところ、そこで「はまって」しまいました。作画を描く楽しみ、それを切る楽しみ、そして、切り絵が完成した時の達成感。非常に楽しくて、止められませんでした。

作画を描く時、私はだいたい、坂本龍一さんの曲を聴きながら、下書きなしで作業を行います。作画から、切り抜きを終えるまで、一つの作品を完成させるのに、通常は5時間ぐらいでかかります。

──蒼山さんの作品に対して、日本国外からどのような反応があるでしょうか。

国内外問わず、非常に女性的でありながらも、たくましいということを言われます。これまで日本とは全く異なる文化の中で、様々な経験をし、私は強くなっていきました。そうしたことが、自然と作品に表れているのかもしれません。また、海外の人からは、妖精や動物といった作品が、ヨーロッパ人の作品とは全く違い、日本的、漫画的と言われます。

──これまでの数多くの作品の中で、特に思い出深い作品は何でしょうか。

現在暮らしているフランスのフェルネ・ヴォルテール市から依頼され、2005年に初めて開催した個展のために作ったヴォルテールの文章の切り絵です。私はこの作品を、市に縁の深いヴォルテールに敬意を表して作りました。そして、これが私にとって初めて売れた作品となったのです。この作品を購入してくださったのは、国連機関に勤めている女性でした。彼女は当時、精神的に非常につらい時を送っていたのですが、私の作品にとても励まされたようです。彼女は私に、「毎日、この作品を見ていたい」と涙ながらに話してくれました。私は非常に感激して、それ以来、人の為になる作品を造り続けたいと思うようになったのです。

──今後、チャレンジしたいことをお聞かせ下さい。

色々考えていますが、日本には、非常に才能があるのにもかかわらず、なかなか成功できずに苦労しているアーティストがたくさんいます。そういったアーティストをプロデュースすることによって、彼らのデビューのきっかけづくりを支援していきたいと思います。

また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に勤める友人がいることもあり、難民問題に関心を持っています。例えば、開発途上国で難民の女性に私の作品のレプリカを作って頂き、それを日本で販売して、彼女たちの生計を助けるといったことも考えています。

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